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12 君の部屋でもう一度




柳の家に着いた。
インターホンを押す手が震える。
しかし、仁王が人差し指を前に出すより早く、目の前のドアがガチャリと開いた。

「あれ、えーっと…仁王くんだ!」
出てきたのは、柳の姉だった。
彼女は、こちらを見ると、妙に納得した顔をして手を叩いた。
「遊びに来たんでしょう?ちょっと待ってね、今呼ぶから」
と言って、返事も待たずに、彼女はドアの向こう側に向かって大声で叫んだ。
「蓮二ー!お友達よー!」
そして、仁王へと向き直る。
「じゃあね!仁王くん!ごゆっくりー」
柳とよく似た穏やかな笑顔を浮かべて、彼女は仁王の来た道を歩いて行った。

「…姉さん、友達とは一体…え、にお…?」
「参謀…」
「な、んで…」
柳の顔が、泣きそうに歪んだ。
そんな顔、させたいんじゃないんに…。
「話があるんじゃ。…ええかの?」
「…え、いや…」
「大事な話なんじゃ」
そう強く言えば、柳は渋々ながら頷いた。
「中で…聞こう…」


二度目の柳の部屋は、冷たく冷えているように感じた。
それが、実際の温度のせいなのか、醸し出される雰囲気のせいなのかは、仁王には分からなかった。

「…話とはなんだ」
唇を噛み締めた柳が言う。
目線は下に下がっていて、その目は今にも泣きそうに潤んでいる。
自分のせいで、そう思うと、仁王は心がキリキリと痛かった。

「…さっき…保健室で言うたことじゃけど」
「…っそ、それならもう聞いた…!なんだ?念を押しにきたのか!?だったら安心しろ…ちゃんと聞いていたし、理解もしているから…!」
「違う…!」
普段、声を荒げることのない柳が、大声で言うのを遮るように、仁王は更に大きな声で叫んだ。

「あんなん、嘘じゃ…!売り言葉に買い言葉で…!本当は、嫌いなんかじゃなか!」
すると、柳は、途端にほっとしたような表情になる。
「…本当に…?嫌い、じゃないのか…?」
「本当じゃ。…本当は…好き、なんじゃ」
「そ、そうか…!良かった…」

「良くないぜよ」
「…仁王?」
ちゃんと、伝えなければ。
仁王は、柳の瞳を真っすぐに見つめる。
心臓の音だけが、大きく聞こえる。
身体全体が、心臓になってしまったような気分だった。

「好きなんじゃ。好きなんじゃよ、参謀」
「それはさっきも聞いたぞ…?」
「参謀、好きの意味、分かってないじゃろ。…俺の好きは、こういう好きなんじゃよ」
と、仁王は、柳に近づく。
そして、後頭部を掴み、一瞬のうちに口づけた。

「…意味、分かったじゃろ」
唇を離しても、柳は状況を理解出来ていないようで、ぽかんと口を開けたまま、仁王を見ていた。
「俺の好きは、こういうこと、とか、その先もしたいような好きなんじゃ」
「そ…っ」
「別にええよ。ただ言いたかっただけじゃから。…それに、参謀も好きなやつおんじゃろ?」

自分で言っていて、苦しくなる。
参謀に、好きなやつがおる。
それは、変えようも無い事実で。
ただ、本当言うと、参謀にも好きって言うて欲しかった。
一回でもいいから、好きだって…。

「…じゃ、俺もう帰っ…」
「違う」
「え…?」

「…違うんだ。嘘、なんだ…。好きな人なんかいない…」
小さく、だけどはっきりとした口調で、柳は言った。
「何で、嘘なんか…」
「わ、分からない…!だって…!お前が…っ仁王が、好きな人がいるなんて言うから…っ!」

仁王は、驚きに目を見開く。
自分に都合の良い考えばかりが、頭の中を駆け巡る。
参謀…それって…もしかして…。
なあ、俺、期待してもええん?

「参謀…」
と、仁王は柳に手を伸ばす。
頬に触れる瞬間、柳は身体を震わせたが、手を払われることは無かった。

「…俺は…人を好きになるとか、よく、分からないんだ。そういう感情が…今まで…誰も好きになったこともないし…」
「うん…」
「でも…っに、仁王に好きな人がいるって聞いた時は、嫌だと、思った…。嫌いだと言われた時は、泣く程悲しかったし…っ好きだと言われたら…嬉しかった…。その…キ、キス、も…嫌じゃ、無かった…っ」
ああ、もう…!

「さんぼ…っ」
たまらなくなった仁王は、柳の身体を抱きしめる。

「…それだけでは…だめか…?好きだと、いうことに…」
「じゅーぶんじゃよ。じゅーぶんじゃ…」
と、仁王は言った。
「そうか…」
と、柳は言った。
「そうか。じゅーぶんか」
そして、仁王のシャツの裾をきゅっと握りしめた。


しばらくして、口を開いたのは仁王だった。
「…のぅ」
「なんだ…?」
「キス、してもええ?」
抱きしめていた腕を緩め、柳の顎に手をかける。
すると、柳は、今にも泣きそうな顔をして笑った。
「当たり前だ。…だって、俺は、お前のことが好きなんだから」





-----キ---リ---ト---リ-----
やっと両思い!

でもまだ少し続きます
よろしければ、もうちょっとお付き合いください!



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