メモログ | ナノ

・深海の底まで




いつか蓮二に、俺のどこが好きなのか聞いた。
蓮二は、全部だと答えた。

いつか蓮二に、俺のことをどれくらい好きなのか聞いた。
蓮二は、死んでしまいそうなほどと答えた。

いつからだろう。
俺はどの答えにも満足出来なくなっていた。


「蓮二…」
「なんだ?精市」
ふいにその細い腰に抱き着いた俺に向かって、蓮二は優しい笑みを返してくれた。

「…今日の精市は甘えん坊だ」
蓮二の問い掛けに何も答えずにいたら、そう言って頭を撫でられた。
繊細な指が、俺の髪をゆるゆると梳く。

「よしよし」
「…ふふっ」
「あ、笑った」
子どもをあやすような言動に思わず笑みを漏らすと、蓮二が嬉しそうに言った。

「うん…蓮二…好き」
「俺も好きだ、精市」
「好き…大好き…」
「うん、俺も大好きだ」
そう言って笑う蓮二は、きっと俺の愛の重さを知らない。

俺は、とっくに気づいている。
気づいてしまっている。
どんなに想っても、想い足りないくらい、大きく膨れ上がってしまった愛の重さに。

蓮二は?
蓮二はどのくらい、俺のこと好き?

蓮二の愛と俺の愛は、きっと同じではないんだろう。

蓮二は知らない。
蓮二への愛で、俺が今にも溺れてしまいそうなことを。

重すぎる愛に溺れて、深海へと沈んでいくのだとしたら。
蓮二も一緒に沈んでくれるだろうか。
息さえ届かぬ、深海の底の底まで。


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