・青春2087号に乗ってこうよ! 「あ」 「愛してる」 「い」 「愛しい」 「う」 「う…うち来て」 「それは有りか?」 「有りじゃ。十分愛の言葉じゃろ」 「そうか?」 「そうじゃよ。広い意味ではそうじゃ」 自信満々の仁王に押され、柳は納得がいかないものの頷いた。 「なら次、え、だ」 「えっちしよ」 「………お」 「お…お…お〜!?お!?」 「お、だ」 「お…お〜…」 「じゅう、きゅう」 「ちょ…!焦らせるんは無しじゃ!」 「ろーく、ごー」 「待て…!あ〜…」 「にー、いち。はい残念、時間切れだ」 「…も、もう一回!次はかきくけこじゃ!」 と仁王が泣きの一回をお願いするが、柳は肩をすくめただけだった。 「もう一回は無しだ。さっさと帰るぞ」 と立ち上がると、鞄とラケットバッグを持って、さっさと出口まで歩いて行ってしまう。 さすがに置いてきぼりは嫌だったので、仁王も渋々腰を上げる。 「仁王、早く」 「わあーてるって」 「早くしないと。七時には母さんが帰って来るんだから。色々出来なくなるぞ」 「へ?」 上げかけた腰が落ち、仁王はストンと尻餅をついた。 「何をしているんだ。早くしろ」 眉間にシワを寄せる柳の元へと慌てて駆け寄る。 「なあ、今のどういう意味じゃ」 「広い意味で愛の言葉?」 「まじで」 「まじ、だ」 「あ!お、はオーケーえっちしよの、お?」 「阿呆か」 柳が呆れたように呟いても、仁王はご機嫌なままだった。 [←] | [→] |