メモログ | ナノ

・そんな馬鹿馬鹿しい話があるものか



世界の状況について考えよう。
真田弦一郎は鈍感な男でした。
幸村精市は彼のことが好きでした。
柳蓮二は幸村精市のことが好きでした。
俺、仁王雅治は柳蓮二のことが好きです。
誰も幸せになれない世界の現在地。


鹿鹿


幸村はくしゃみを派手に二回してから鼻を啜った。
「あー、風邪引いたかも。蓮二にうつされたんだ、きっと」
「ほうか」
「なんだよ、つまんない反応」
「無茶言わんで」
「冗談だよ」
ハハ、と漏らした彼の笑いは、天気とは反対にカラカラに乾いていた。
「ほんまに風邪なら、こんなとこおらん方がええんじゃなか?」
と仁王は言った。
今の時期の学校の屋上は、晴れていれば心地良いが、今みたいに雨が降っていると最悪だ。
こんな日にここに来ようなんて物好きは二人だけ。
一本の傘を半分こにしているから、幸村の右肩は濡れていた。
「教室に入りんしゃいよ」
「心配してくれてんの?」
「まさか。お前なんか死ねばええと思うちょるもん、俺」
「ひどい言われようだ」
と幸村が顔をしかめた。
それから、また鼻を、ず、と啜った。
「ひどいんはどいつじゃ」
と仁王も顔をしかめる。
「…あ?」
「真田に抱かれたくてしゃあないって顔しながら、柳を抱くんはやめんしゃい」
仁王は苦々しくそう吐くが、幸村は「はあ?」とすっとぼけた顔をしただけだった。

仁王は目線を上に上げて、傘をくるくると廻した。
貼りついていた雨粒がばらばらと落ちてくる。
そこに手を伸ばそうとしたところで、横からひどく愉快げな声がした。
「ひどいのはどいつだよ」
「…あ?」
「その可哀想な蓮二に言い寄って慰めるフリして甘い汁啜ってるのはお前だろ。お前こそ最低のクズ野郎だよ」
にっこりと笑って、幸村は仁王の手から傘を奪うと同じようにくるくると廻した。
雨粒がばらばらと仁王の頭の上に落ちてきた。
じゃあねえ、と言って、幸村はそのまま屋上のドアをくぐって行ってしまった。
生温い雨が降ってくる。
こんなことなら、ちゃんと自分の傘を持ってくるんだったな、と仁王は思った。
それから、ポツリと呟いた。
「どいつもこいつも最低野郎じゃ」





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たぶん全部柳生の妄想です。


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