バイバイ、黄色いチューリップ | ナノ

04 マリーゴールド




視聴覚室には、二度と行かない。
十八歳の俺が立てた誓い、その一。


マリーゴールド
(嫉妬)


「ったく、ちょっと寝てただけじゃねえかよい」
「お、丸井、今から視聴覚室か」
にやにやしながら、仁王が俺の持っている荷物に体重をかけてきた。
「重っ!くっそーなんで俺だけなんだよ!仁王だって寝てたくせに!」
「ピヨッ、なんのことかのう」
くっそ、詐欺師め!
イラつく俺を置いて、仁王はさっさとどこかに行ってしまった。
つーか、昼休みのたびにどこ行ってんだ、あいつは。


俺は、授業中に寝てたのを見つかって、先生に視聴覚室への荷物運びを命じられていた。
ちくしょう、俺の貴重な昼休み!

「えっと、鍵、鍵」
視聴覚室のドアの前で、ポケットを漁って、渡された鍵を探す。
…見つかんねえ。
しょうがなく、荷物を一旦下に降ろして、本格的に探すことにした。

「あ、あった」
見つかった鍵を、鍵穴に差し込む。
右に回して、ドアノブを回すが、開かない。
なんだ、開いてたんじゃねえかよ。
いらつきながらも、もう一度鍵を差し込み、今度こそドアを開けた。

…あれ…?誰か…いる?

教室には、人影があった。
誰だろうかと思い、逆光の中で、目を凝らしてみる。

そして、次の瞬間、俺はその場から全速力で逃げ出した。

あれは、柳だった。
柳と、そしてもう一人。
誰だかは分からなかった。
ただ、何をしていたかは分かる。

柳のシャツははだけていた。
どちらの息も上がっていた。

「は…っ、はあ、はっ…!」
息が切れて、これ以上走れないというところで、俺は下を向いて、大きく息を吸って吐く。
気持ち悪い。
吐き気がする。
走ったせいか、それとも。

苦しい、苦しい。
柳が、俺以外とそういうことをするなんて、すげえ嫌だ。
涙が出てくる。
俺って、こんな女々しいやつだったのかな。
柳が絡むと、俺は、俺じゃ無くなっちゃうみたいで。

苦しいよ。



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