バイバイ、黄色いチューリップ | ナノ

10 リンドウ




「…柳」
俺は、抱きしめている腕を解き、柳の肩をゆっくりと押し倒す。
毛布が、二人分の体重にぼふんと音を立てた。


リンドウ
(悲しみにくれているあなたを愛する)


元々毛布の中に入っていた柳の身体から毛布を剥ぎ取り、ぴったりと自分の身体を合わせる。

「…っい…やだ…」
俺が何をしようとしているのか気づいたのか、柳が小さな声で抵抗した。
かぶりを振って、肩を掴んだままの俺の腕を弱々しく押し返した。

「大丈夫…大丈夫だから…」
何が大丈夫なのか、そんなの、俺にも分からなかった。

これからやろうとしていることが、正しいのか、それとも間違っているのか、俺には分からない。
でも…。
でも…なんだろう…。


俺は、柳が着ているパジャマのズボンと下着を脱がせる。
あらわになったまったく反応していないそれに、ゆっくりと舌を這わすと、柳の身体がわずかに震えた。
「ふ…うっ、まる…い、いやだ…っこわい…」
丁寧に舌で舐めている間、柳はうわ言のように、嫌だと怖いを繰り返した。

びちゃびちゃという音が、異様なくらい耳に響いていた。
昔の傷を話して、泣いて、混乱した柳を犯すような行為、こんなの、やっぱり間違っているのかもしれない。

散々舐め回されて完全に勃起した柳の陰茎は、先走りと俺の唾液とで濡れていた。
上からは、しきりに柳のしゃくりあげる声が聞こえていた。
涙でぐちゃぐちゃになったその顔を見て、俺は場違いにも、綺麗だと思った。

「柳…」
「いやだ…もう…っやめて…もう…」
「柳、見て」
と、俺は着ているものを全て取っ払って、言う。
俺のものも、柳と同じくらい大きくなっていた。

「柳のこと見て、欲情して、こうなったんだよ」
そう言って、柳の細い腕を掴み、俺のそこへ触れさせる。
触れた途端、柳はびくりと震えたが、手を払おうとはしなかった。
「どうしてだと思う?」
俺の言葉に、柳はふるふると首を横に振った。

「柳のことが好きだから」

「…そ、れは…っ」
「うん。勘違いかもしれない、一時の気の迷いかもしれない。でも、今、俺は本当に心から、柳のことが好きなんだ」
柳の目から、収まったと思っていた涙が、またハラハラと落ちた。

「…挿れないから」
そう言って、柳の手を添えたまま、自分の陰茎を柳のそれにくっつける。
柳の手に自分の手を重ねて、二つの陰茎を擦り合わせるようにして上下に扱く。

「は…っあ、ま、るい…っ」
「…っうん」
「まるい……っあ、はあ、」
「うん…」
「…あ、まる…っい…まる…い…っ」
柳は、何度も俺の名前を呼んだ。
そのたびに、俺はそれに答えたけど、柳の口からそれ以上の言葉が発せられることは無かった。

小さく息を詰まらせて、俺も柳も、白濁を散らした。
相変わらず泣いている柳を、俺は、今度はそっと抱きしめた。

生きているうちに、誰にだって、治らない傷は出来る。
大きかったり小さかったり様々だが、そういう傷は、生きていれば誰にでもある。
柳の傷が、十八歳の俺たちにとって、大きすぎるのか、それとも妥当なのかは分からないし、俺にはきっとその傷は治せない。

でも…。
でもその傷口に触れて、痛かっただろうと、その背を撫でてやることは出来る。
痛い痛いと泣く柳を、抱きしめてやることは出来る。

「…信じて…柳…俺のこと…信じて…」
呟いた言葉が、柳の心に届いていたかどうかは分からない。
ただ、届いていてほしいと、ひたすらに祈った。



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