06月10日(金)19時39分 の追記


「あ」
「愛してる」
「い」
「愛しい」
「う」
「う…うち来て」
「それは有りか?」
「有りじゃ。十分愛の言葉じゃろ」
「そうか?」
「そうじゃよ。広い意味ではそうじゃ」
自信満々の仁王に押され、柳は納得がいかないものの頷いた。
「なら次、え、だ」
「えっちしよ」
「………お」
「お…お…お〜!?お!?」
「お、だ」
「お…お〜…」
「じゅう、きゅう」
「ちょ…!焦らせるんは無しじゃ!」
「ろーく、ごー」
「待て…!あ〜…」
「にー、いち。はい残念、時間切れだ」
「…も、もう一回!次はかきくけこじゃ!」
と仁王が泣きの一回をお願いするが、柳は肩をすくめただけだった。
「もう一回は無しだ。さっさと帰るぞ」
と立ち上がると、鞄とラケットバッグを持って、さっさと出口まで歩いて行ってしまう。
さすがに置いてきぼりは嫌だったので、仁王も渋々腰を上げる。
「仁王、早く」
「わあーてるって」
「早くしないと。七時には母さんが帰って来るんだから。色々出来なくなるぞ」
「へ?」
上げかけた腰が落ち、仁王はストンと尻餅をついた。
「何をしているんだ。早くしろ」
眉間にシワを寄せる柳の元へと慌てて駆け寄る。
「なあ、今のどういう意味じゃ」
「広い意味で愛の言葉?」
「まじで」
「まじ、だ」
「あ!お、はオーケーえっちしよの、お?」
「阿呆か」
柳が呆れたように呟いても、仁王はご機嫌なままだった。
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