04月07日(木)14時06分 の追記


俺の父親はホモらしい。

先週の月曜日、同じ四年二組の財前光が、男を好きな男はホモだ、と言っていたから間違いない。
試しに、「雅くん(父親の癖に、父さんって呼ぶと怒る)ってホモなの?」って聞いてみたら、「そうじゃな」って言っていた。
雅くんは日常的にくだらない嘘をつくから、俺は反対に本当のことを言っている時が分かるようになっていた。
あの時は、絶対に嘘をついていなかった。

つまり、俺の父親はホモである。
それなのに、俺が産まれている。
世の中は不思議だ。

うちに母親はいない。
どうしていないのかは知らない。
雅くんに何度か聞いたりしたけど、その話になると、雅くんはありえない話の逸らし方をするから、十回くらい聞いたところで、面倒になってやめた。

その代わり、うちには、柳蓮二さんという風変わりな同居人がいる。(風変わり、は昨日、保健室の白石先生が教えてくれた言葉だ)
蓮二さんは、優しくて綺麗で、あと、とにかく良い匂いがする。

俺は雅くんより蓮二さんに懐いていて、良く抱きついたり甘えたり、またはその両方ともをする。
蓮二さんも俺のことを結構甘やかしていると思う。
「甘やかしてるよね?」って聞いたら、「そうだな」って言ってたし。
蓮二さんの声は、澄んだ水みたいに心地よく響く。
そう言ったら、「赤也は詩人になれる」と嬉しそうに笑っていた。

そういう時、雅くんは必ず邪魔しにくる。
それは、俺が父親よりも同居人に懐いているからではなくて、蓮二さんを取られて悔しいからだ。
雅くんは普段は飄々としているし、近所のお母さんたちの間でも格好良いって有名だ。
でも、蓮二さんの前だと全然違う。
なんか、デレデレとしていてだらしない。
顔がいつも緩んでいるし、大人の癖に甘えたりする。
それで、蓮二さんに、雅治、って窘められたりする。
良い気味だ。
でも、それすら嬉しそうにしている時もあるから、雅くんは手に負えないくらい蓮二さんのことが好きなんだと思う。
これは、わざわざ聞かなくても分かる。

でも、俺も蓮二さんのことが好きだから、雅くんとはライバルだ。
雅くんにそう言ったら、「親子やから、好みのタイプも似とるんかのう」と言って笑っていた。
なんか、余裕そうだったから、ムカついて股間を蹴ってやった。
泣いてた。
そのすぐ後で、蓮二さんに慰めてもらっていたから、蹴ったりしなきゃ良かったと後悔した。

「俺も蓮二さん好きだから、ホモだよ!」って自信満々に叫んだら、蓮二さんに「そういうことは、外では余り言わないように」って注意された。
なんでだろ、全然分かんない。
でも、蓮二さんの言うことだからその通りにしようと思う俺も、結構手に負えないくらい蓮二さんが好きだと思う。

前は、寝る場所も争奪戦だった。
雅くんは自分のベッドがあるくせに、蓮二さんのベッドに入ろうとする。
俺も入ろうとするから、とにかく狭くて大変で、蓮二さんが、どっちか一人にしてくれ、って言うから寝る前はいつもジャンケンをしていた。
俺はもう四年生で、一人で寝なきゃ格好悪いからもうジャンケンはやめたけど、時々、格好悪くても蓮二さんと一緒のベッドで寝れる雅くんが羨ましくなる。







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