「・・・熱?!東堂くんが?」
HRが終わった放課後、学校を出ようしたところで校門に立っていた意外な人物に止められた。荒北くんと新開くんだ。話があると言って近くの公園に来てみれば、東堂くんが熱を出して休んでいると聞いた。絶対、昨日の雨の所為だ。
「で、オメーに頼みてぇ事があんだけど」
荒北くんの言う頼みたい事というのは、東堂くんのお見舞いに行って欲しいとの事だった。幸いバイトも無いし、なりより東堂くんが熱を出してしまったのは私の所為だし、その責任はある。けど・・・
「こ、これ着なきゃだめなの?」
「寮母がうっせーからなァ」
コンビニに寄って色々なものを勝ってから新開くんに連絡すると、ジャージを渡されてこれに着替えろと言われた。仕方なく一旦家に帰ってジャージを着ると、どこかで嗅いだ事のある匂い・・・胸元を見れば東堂と書かれていて、これが東堂くんのジャージだと言うことに気付いた。
「なんか・・・恥ずかしい」
余った裾や袖を折って外に出ると荒北くんと新開くんが待っていてくれて、私は寮へと足を踏み入れた。寮は思っていたよりも綺麗で、だけど物凄く緊張した。顔を見られないように俯いて両サイドには荒北くんと新開くん。新開くんが寮母さんと話して気を引きつけている間に荒北くんが東堂くんの部屋まで連れて行ってくれて。
「じゃ、オレ部活あっから。終わったら迎え行く」
「う、うん・・・」
荒北くんが行ってしまって、静かに扉をノックすると、中からはい、という声が聞こえて恐る恐る扉を開ける。
「と、東堂くん・・・?」
「・・・!苗字さん?!」
部屋を開けると想像通りに片付けられていて、部屋の角にあるベッドに寝転がっていた東堂くんは私の顔を見るなり驚いて起き上がった。ていうか、いつもみたいにカチューシャしてない。こっちの方が絶対いい。・・・じゃなくて。
「い、いきなりごめん。荒北くんと新開くんに東堂くんが寝込んでるからお見舞いに行ってあげてって言われて」
「あ、ああそうだったのか!・・・すまん苗字さん!周りにバレるとマズイから入ってくれ!」
「は、はい!」
ガチャッ
急いで部屋に入ると、東堂くんが熱を出しているからなのか部屋はどんよりしていて蒸し暑かった。
「大丈夫?」
「朝よりは大分良くなったぞ!」
「そっか・・・少しだけ窓開けていい?空気の入れ替えしないと」
「そのくらいオレが・・・」
「東堂くんは病人なんだから、寝てて」
「う、うむ・・・」
東堂くんのベッドの近くにある窓を少しだけ開けて、コンビニの袋からスポーツドリンクを出してストローをさして東堂くんに飲むように言えばお礼を言って飲み始めた。熱冷まシートも取り出して東堂くんの方へ向き直る。
「熱冷まシート貼っていい?」
「え?」
有無も言わさずに東堂くんの少し汗ばんだ前髪をあげて、熱冷まシートをおでこに貼ると、東堂くんはびくりと跳ねた。
「あははっ、冷たかった?」
「・・・っこ、これにはいつまで経っても慣れないな」
来た時からずっと顔が赤かったけど、その時よりも今の方が顔が赤くて。もしかしたら私が来たことで無理をさせて熱が上がってしまったのかもしれない。
「東堂くん大丈夫?熱上がってない?」
「あ、え、熱はもうほとんど無いな!ただ、身体が重いだけでそんなに辛くは無い」
「そっか、良かった」
それから暫く沈黙が続いて、どうすれば良いか分からなくなってしまった。いつも話題を作って話をしてくれる東堂くんがこんな状況で、受け身の私には何を話せばいいかわからない。そんな考え事をしていれば、ふと寝息が聞こえた。
「・・・寝てる」
ベッドを見ると、東堂くんが少しだけ辛そうに眠っていた。近付いてタオルで顔の汗を拭ってあげてから寝顔を見る。
「寝顔までかっこいい・・・」
いや、可愛いかもしれない。まつげ、私より長いもんぜったい。
「・・・眠くなってきちゃった」
少しだけならいいよね・・・そう思ってから移動する気にもなれずに、東堂くんのベッドに寄りかかって寝てしまった。
end
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