「早速来たんだ」
「今日バイト無いし暇だったんだもん」

チェキを片手に、真紀ちゃんが来店してきた。ていうか何故チェキなんだ。勿論目当ては新開くんと、東堂くんの写真(お金)だから私にはほとんど用は無いと思う。

「まだ来てないの?立ち読みしていい?」
「普通それ店員に聞く?あと五分か十分くらいしたら来るんじゃない」
「じゃあ立ち読みしてよ」

そう言うと、真紀ちゃんは迷う事なく雑誌コーナーに向かって、迷う事なくグラビア雑誌の前で止まった。

「この子の身体好みだなぁ」

お願いだからそういう事は声に出さないでほしい。隣の18禁エロ雑誌見てるおっさんがチラチラ見てるよ。
一旦真紀ちゃんから離れて、棚整理していると来店の音楽が鳴った。いらっしゃいませ、と言って振り返ればそこには噂の東堂くん達。真紀ちゃんも来たことに気付いたのか、急いで私の元へやってきた。

「む、苗字さんの友人かね?」
「うん、友達。粟島真紀ちゃん」
「どーもー」

真紀ちゃんが軽く挨拶をすると、驚いた表情をする東堂くん。荒北くんと新開くんは真紀ちゃんに挨拶を返した。

「東堂くん?どーしたの」
「ま、まきちゃん・・・?」
「・・・オメーまさか名前だけで総北の巻島思い出してんじゃねぇだろーなァ?」

そうほくのまきしま?なにそれ。思い出すってなんだろう、元カノとか?

「つかぬ事を聞くが、苗字さんの一番の友人はこの、粟島さんか?」
「え?そうだけど・・・なんで?」
「ふふん、オレの一番のライバルも巻ちゃんというのだよ!」
「名前は違うぜ、尽八。尽八くんの言う巻ちゃんの本当の名前は裕介くんだろ?」
「いいのだよ!!!」

ちょっと話についていけないけど、共通点があると言いたいんだろう。私は苦笑いしながら「そうだね」と言った。

「東堂様!写真撮らせて!」
「写真?うむ、良いぞ!」

チェキを構える真紀ちゃんに、東堂くんはカメラ目線で決めポーズをした。これが噂の「指差すやつやってー!」か。真紀ちゃんは東堂くんの写真を数枚撮った後に、新開くんにツーショットをお願いしていた。

「早く部活行かなくて大丈夫?」
「まだ大丈夫だろォ」
「そういえば、昨日走ってる所見かけたけど凄いね。あの自転車ってママチャリと違うんでしょ?」
「うむ!ロードバイクといってな、競技用の自転車だ!」
「ロードバイク・・・」

自転車のくせになかなかかっこいい名前なんだ。まぁ見た目もかっこよかった記憶がある。そのあと、いつも同様自分の好きなものを買ってから東堂くん達は帰っていった。

「んじゃ、私も帰るわ」
「うん、気をつけてね」



「・・・あれ?東堂くん?」
「お疲れ様、苗字さん」
「ありがとう・・・どうしたの?買い物?」

バイトを上がって更衣室で着替えてから外に出ると、駐車場に普段着姿の東堂くんが立っていた。片手にはコンビニ袋をぶら下げている。

「うむ!ちょうどいい、苗字さんも一緒に帰らんかね?」
「え?・・・うん」

そういえばご近所さんだったなと思い、東堂くんの隣を歩いていると袋を漁り中から飲み物を一本とると私に渡してきた。

「いいよ!悪いよ」
「気にするな!いつも世話になっているからな」
「レジ打ってるだけなんだけどね・・・ありがとう」
「うむ」

こんな会話をしているだけで、あっという間につくアパート。東堂くんに手を振って帰宅した。

それっから、バイト帰りに東堂くんに遭遇しては送ってもらうなんて事が続いた。最初は偶然だと思っていたけど・・・

「それって待ってくれてんじゃないの?帰り道危ないからって」

と言う真紀ちゃんの台詞で私も少しだけ意識し始めてしまった。東堂くんは待ってくれているのかと。

今日は土曜日で、いつも帰る19時30分より遅い22時上がり。帰りに外にいたら、それは確信に変わる。ちなみに、お昼に東堂くん達はご飯を買いに来店した。そして、22時。上がる時間だ。着替えた私は急いで外に出る。

「・・・いるわけないか」

外には誰もいなかった。少しだけ期待してしまっていたのか、いない事が分かった私は少しだけ寂しい気持ちになってしまった。ってなにこれ乙女か。恋する乙女か。

「苗字さん!!」

いきなり呼ばれた名前、そして声に驚いて振り向けばそこにいたのは東堂くんだった。

「な、なんで・・・?」
「心配で来てしまった。お疲れ様」

いつもみたいに、飲み物を渡してくる東堂くん。それを受け取ってお礼を言ってから一口頂いた。

「こんな時間までバイトして、今まで良く何もなく無事に帰れたものだな」
「何もないってわけじゃないんだけどね。生きてるからいいかなって」
「何かあったのか!?」

何かあったのか、なんて言われても。自分のものを自分で慰めている奴がいたとか、裸で突然目の前に現れた奴がいたとか・・・言えないでしょ。

「変な人に会ったりしただけだよ。何かされたわけじゃないし」
「ならんね、それはならん!!苗字さん!これからはバイトの帰りはオレが送る!」
「もう送ってくれてるじゃん・・・東堂くん部活で疲れてるでしょ?いいよ別に。面倒でしょ?」
「面倒などではないな!!苗字さんにもしもの事があったらどうする!?送る事で苗字さんが安全で、オレも落ち着けるならそれでいいのだよ!」
「は、はぁ・・・」

話していればすぐについてしまうアパート。少しだけ、もう少しだけ家が遠かったら良かったのに、だなんて思ってしまった。



end

まきちゃん
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