「明日はバレンタインだな!」

「うん、そうだね」

「苗字は誰かにバレンタインをやるのか?」

「んー・・・友達とか」


同じクラスで隣の席の東堂は、人気者でいつも女子が周りにいてトークも切れて格好良くて・・・私の好きな人。


「オレにもくれないか?」

「えっ?でも東堂、女の子に沢山貰えるじゃん」

「で、できるだけ多く貰った方が嬉しいではないか!」

「そうかな?いいけどさ、他の子から貰ったやつの方が美味しいかもよ?」

「オレは苗字から貰いたいのだよ!」


一瞬だけ固まってしまったが、好きな人からそんなことを言われて嬉しくないわけがない。首を縦に振れば、東堂は嬉しそうに笑った。


「では明日、楽しみにしているぞ!」


そう言って東堂は部活へ向かってしまった。






「・・・三種類も作ってしまった・・・」


本当はクッキーと生チョコだけの予定だったのが、東堂に渡すなんて考えただけで家にあるものでマドレーヌを作ってしまった。


「東堂、あの・・・」

「すまん苗字!放課後に時間を空けるからそこでくれないか?」

「え?いいけど・・・」


渡すだけだし、今でもいいと思うけど・・・やっぱり、ファンの子から貰うのが忙しかったりするのかな?


「放課後、屋上に来てくれ」

「屋上?私ここでもいいけど・・・」
「オレがならんのだよ」

「?まぁいいけど」


よくわからないまま、昼が過ぎてあっという間に放課後になった。東堂が自分で持ってきたのか机の横にある大きめのバッグには女の子達から貰ったお菓子が沢山入っていた。東堂、こんなに食べれるんだろうか。東堂が出て行ってから暫くして、私も屋上へ向かった。


ガチャッ


「東ど・・・あれ、いない?」

「こっちだ、苗字」


屋上に入ると、見渡す限り東堂はいなくて後ろから声がして振り返れば先に行った筈の東堂が何故か後ろにいた。


「どうしたの?」

「実は、苗字に言いたいことがあってな」

「言いたいこと?」


少しだけ胸がドキッとした。私もそこまでバカじゃないから、バレンタインに言いたいことなんて・・・


「好きだ、苗字」

「・・・っ!」


後ろに隠していたのか、バッと目の前に出された綺麗な花束。そして、東堂からの告白。


「フラワーバレンタインといってな、男から女性に花束を渡すのだ」

「・・・ありがとう!綺麗・・・」

「ところで苗字、返事は?」


そうだ、返事・・・ーーー。
私は途端に恥ずかしくなって、顔に熱が集まるのがわかる。


「私も・・・好きっ!」

「本当か!?」

「うんっ、ずっと、好きだった」


私がそう言えば、東堂は大袈裟に喜んだ。・・・あ、そうだ。


「はい、これ」

「チョコレートか!?」

「うん、美味しいかどうか分からないけど・・・」

「嬉しいぞ!ありがとう・・・名前。これからよろしくな」

「っ!!・・・うん、よろしくね尽八」




end

フラワーバレンタイン
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