「まずいな・・・」


次の日、さっそく朝からホテルを出て高速道路を走っていた。・・・といっても走っている車は私達くらいだけど。二時間くらい進んだ時、目の前には100メートルくらい乗り捨ててある車が渋滞していた。間を通ればなんとかなりそうだけど、慎重に行かないと通れないくらいの狭さ。そして、問題はどこかにアンデッドが潜んでいるかもしれないということ。一旦渋滞から離れて車から降りる。


「困ったな、寿一」

「ああ」

「どーすンのォ?福チャン」

「あの中にアンデッドがいないとは考えられないぞ」


あんな周りがよく見えない所でアンデッドに襲われたら私達は逃げられても幹ちゃん達は逃げる事は不可能だろう。


「進めるだけ進んで、通れない所はオレと泉田で車を退かせばいいんじゃないか?」

「はい!僕も新開さんの意見に賛成です」


進めるだけ進んでから後は新開と泉田に任せる事になった。新開の乗る車には、福富に代わって泉田が同乗して先頭を走る。慎重に徐行して行けばスレスレだが車が通れた。バスが小型で良かった。


「どこまで進めるかな?」

「出来れば最後まで降りずに済めばいいのだが・・・そこまで上手くはいかないみたいだな」


さっそく車が止まって、泉田と新開が降りて行くのが見える。それを合図になまえAは銃、私は刀を持って車の上に乗って周りを警戒する。


「・・・うわ、ちょっと待ってこれマズイよ」

「新開!泉田!一旦車に戻って!」


後ろからアンデッドの大群が迫ってきていた。大群、といっても十体、それ以上いるかいないか。最後尾は幹ちゃん達が乗っているバス。福富は車から降りてバスに乗り込んだ。アンデッドはまだ私達の存在には気付いていない。車に乗って奴らが通り過ぎるのを待つか、車に集まってきて後ろが空いた瞬間バックしてここを抜けて一気に叩くか。私としては通り過ぎてくれるのを待つしか無いけど、そんな事、奴らがする訳ない。車に乗って、念の為どの車にも取り付けてある車内カーテンを閉めて座席を倒して静かにその場で待つ。


「心配なのはバスの方だな」

「確かに・・・大丈夫かな、幹ちゃん」

「・・・来るぞ」


足を引きずる様な音がする。アンデッドが近づいてきているのが分かる。車のドアにもカーテン越しにアンデッドの影が見えている。順調に行って、このままならバレずにアンデッドが過ぎて行く、そう思った時だった。


「キャァ!!」

「うわぁああっ!!!」

「おい!!開けるな!!!」


バスの方で叫び声が聞こえて、福富の制止の声と扉を開ける音が聞こえた。今の、幹ちゃんの叫び声?カーテンを開けて後ろを見れば、動揺して出てきた生存者がいた。アンデッドも物音に気付いて一斉にバスに向かっていく。もう少し我慢すればアンデッドに見つからずに済んだのに何故?


パァンッ


何故かバスの中から銃声が響いた。アンデッドがバスに近づいて行くので、私達も車から出てアンデッドを始末する。


「チッ、ンだヨあいつら!ざけんな!!」

「バスの中で何かあったのかもしれない!!なまえ@と東堂は生存者をお願い!」

「分かった!!」


走って生存者の元に向かうが、四人ともアンデッドに襲われていた。喰らいついているところを生存者ごと斬った。きちんと頭を刺す事も忘れずに。後は後ろの皆に任せてバスの中に入れば、銃を構えている福富と、その構えた先にいたのは・・・幹ちゃんだった。


「福富?何して・・・」

「噛まれたのか?」

「ああ」


腕を抑えている幹ちゃん。腕からは出血が見られる。アンデッドに噛まれた痕だ。


「生存者の内の一人が感染していたらしく、そいつに襲われた奴を庇って噛まれた」

「幹ちゃん・・・何で・・・っ」

「・・・すみません」


後ろを片付けたなまえA達もバスに集まる。


「幹ちゃん・・・?」

「福富、撃たないでよ」

「残念だが、それは聞けない頼みだ」

「・・・最期は私がやる。それでいいでしょ?」

「なまえA・・・」


そういうの、嫌いななまえAから頼み出るなんて思いもしなかった。福富も顔色さえ変わらないが、驚いているのが分かる。


「やれるのか?」

「やれる」

「・・・分かった」


福富からのオーケーが出て、すぐに幹ちゃんに駆け寄り手当をした。何故、気付けなかったんだろう。私達には感染している人は見れば分かる。自分と同じだから。なのに、何故今回は気付けなかった?

近くに転がっているアンデッドの死体を見てみれば、確かこの人は数日前から体調を崩したらしくホテルの部屋に篭っていた人。・・・会わなかったから、気づかなかったのか。それにしても、良くすぐにアンデッドに化けなかったな。もっと早くに気付けたら、幹ちゃんは・・・


「ありがとうございます」

「幹ちゃん・・・ごめんね」

「私の方こそ、すみませんでした」


幹ちゃんは下を向いて悲しそうな顔をする。何故、幹ちゃんが謝るのか・・・私にはわからない。


「福富さん!!向こう側からアンデッドの大群が迫って来ています!!」

「!?」

「何体だ」

「数え切れないくらい来てる」


外へ出てみれば、車の向こう側からアンデッドが来ていた。ここから戻って高速を出るのには時間がかかるし、北海道まで行くにはこの道が最短。


「どうする?寿一。ここで始末するにしても、あっちで武器が無くなってたら意味が無くなる」

「・・・」

「あの・・・私にやらせてくれませんか?」



幹ちゃんの発言に、皆一斉に固まった。


「え・・・?幹ちゃん、何言って・・・」

「確か、後ろにダイナマイトが置いてありますよね?私がこの車であそこに行ってダイナマイトに火をつけて爆破させます。その瞬間に、きっと道ができるはずです。そしたら一気に進んでください」

「何言ってるの幹ちゃん」

「それって自爆だろォ」

「・・・私、人の役に立ちたいんです。だから今回庇ったことで一瞬でも人を救えて凄く嬉しい。私は、私達を救ってくれたあなた達の役に立ちたい!!だから、最期にやらせてください」


小型バスの後ろにはダイナマイトや手榴弾が積んである。幹ちゃんはダイナマイトを持って、アンデッドと車に突っ込んで自爆するつもりだ。


「・・・いいだろう」

「福富!?」

「諦めろみょーじ@。オレらも進む為にはそうするしか無ェだろォ」

「・・・幹ちゃん、本当にいいの?」

「はい」

「・・・分かった」


小型バスの中にある荷物や他の武器を急いで自分たちの車に運んで、車に乗って距離をとる。


「皆さん、ありがとうございました!!」


離れている私達に向けて大きな声でお礼を言って頭を下げる幹ちゃん。幹ちゃんは車に乗って、そのまま猛スピードでアンデッドとその周りの車に突っ込んでいく。


「なまえ@、見ているのだぞ。彼女の最期を・・・」

「・・・うん」


車が止まった所で、すぐに大きな爆発音と共に周りの車とアンデッドが吹っ飛ぶ。火が弱まった瞬間、私達はアクセル全開でそこへ突っ込む。ダイナマイトの威力で吹き飛ばされた為に車は無く一気にそこを通過することが出来た。近くには、幹ちゃんが腕につけていたアクセサリーが落ちていた。


「ばいばい・・・幹ちゃん」




to be continude

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