「バスも見つかったみたいだし、一旦休憩しようか」


ある程度食料も集まって、尽八達もバスを見つけたので休憩することにした。福富達は、アンデッドに襲われても大丈夫な様に車を頑丈に細工しているが、先に休憩させてもらおう。


「幹ちゃんって、何であんなに頼られてるの?年下なのに。男がもっとしっかりすればいいと思うけど」

「え・・・頼られてますか?」

「頼られてると思うよ」


その質問に、幹ちゃんは少しだけ考え込んで苦笑いをして私達を見た。


「私、お兄ちゃんを亡くしてるんです。・・・アンデッドに襲われて」

「!・・・ごめん、別に無理に話さなくても・・・」

「大丈夫です。・・・兄は、私を庇ってアンデッドに噛まれてしまいました。けど、二人で逃げたんです。そしたらアンデッドに囲まれて・・・兄は囮になるから逃げろって、私を逃がせました。・・・兄は立派な警察官だったんです。その兄の意思を受け継いで・・・私も強くならなきゃって」

「幹ちゃん・・・」

「周りの人を助けたくて、あそこに隠れていたんですけど。結局助けられちゃって・・・だめですね」

「・・・そんな事無いよ。それに、あの人達はあなたに感謝してるんじゃない?」

「うんうん」


少しだけ驚いた顔をしたあとに、笑ってお礼を言う幹ちゃん。辛かったんだろうな、色々と。


「休憩終わったら服探しに行かない?」

「いいですね!」


若いんだから、まだ無邪気に笑っていればいいのに。







「・・・はぁ・・・最悪。どうする?」

「アンデッドの仕業ではなさそうね。・・・人間の手でやられてる」

「・・・っ」


近場の服屋に来て服をもらおうとしたところ、店に入ったすぐの入り口には大量の死体があった。アンデッドに喰われたものではなくて、撲殺、刺殺などと言った人間の手でやったであろう殺し方の死体。


「幹ちゃんいるし、ここはやめておこうか」

「すみません・・・っ」


幹ちゃんは口を押さえて目を伏せながら謝った。


「・・・待って」

「なまえA・・・?」

「動かない方がいい」


真剣な顔をしたなまえA。その視線の先を見て見れば・・・私達に向かって銃を構えた男や、刃物を構えた男が10人くらいいた。・・・マズイ。今の私となまえAなら簡単に倒せるが、今は幹ちゃんがいる。幹ちゃんを庇いながらなんて、戦えない。


「大人しくしてろよ、お嬢ちゃん達」

「おっ 巨乳いるじゃん!!まっつぁん大好物だろ、巨乳」

「いいねぇ・・・おい、そこの女来いよ」


彼が言っているのは幹ちゃんの事だろう。ビクリと震えてどうすればいいか分からずに固まってしまう幹ちゃん。男たちは私達に近付いて、私となまえAのこめかみに銃口を当てた。


「早く来い!!!」

「・・・ダメだよ、幹ちゃん」

「で、でもっ!!」

「私達なら大丈夫だから」


幹ちゃんが目の前で触られるくらいなら、暴力された方が100倍マシだ。


「なぁにが大丈夫だよ!?」

「きゃっ」


男が目で合図した瞬間、私となまえAの隣にいた男たちは銃で頭を殴って来た。衝撃で一瞬意識失うかと思った。


「なまえA、大丈夫?血出てるよ」

「あんたも出てるけどね」

「大丈夫ですか!?」


幹ちゃんが心配そうに私達を見て、意を決したように男の方へ歩いていってしまった。


「幹ちゃん!ダメだって!!!」

「私なら大丈夫です」

「大丈夫とかそういう問題じゃない」


私達が止めても、幹ちゃんは足を止めることなく男の方へ向かった。男は鼻の下を伸ばして幹ちゃんに触れた。


「へへ・・・」

「幹ちゃん!!」


身体を撫で回し、気持ち悪い目で幹ちゃんを見る男。一瞬の隙を狙って、あいつと周りの男を撃てば・・・しかし、今だに隙はない。


「やめなさい」

「あ?」

「・・・なまえA?」

「やめろって言ってるの」


いつもより低いなまえAの声。様子を見ようと顔を見るが下を向いていて分からない。しかし、なまえAが顔を上げた瞬間・・・身体に寒気が走る。


「う、あああ!!!」


幹ちゃんの周りにいた男達が、突然苦しみ出した。目、鼻、口、耳から血を流して苦しそうに声をあげている。私達の隣にいた男たちは悲鳴をあげて逃げて行った。


「な、何・・・?」

「っはぁ、はぁ・・・」

「!なまえA!?」

「大丈夫・・・」


男達が死んだのが分かった途端、なまえAがその場から崩れ落ちた。呼吸が乱れているが、意識ははっきりしている。


「幹ちゃん、早くこっちに来て」

「は、はい!!」

「服選びはまた今度。今日はもう休もう」


いまのは何なのか、いつからあんなことが出来ることに気付いたのか、なんて聞きたかったけど、いまこの状況で聞くほど私だって鬼じゃない。今ははやく帰ってなまえAを休ませないと。





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