「っつ・・・」

「なまえ@!!」


腹部の痛みを感じながらも目を覚ますとそこは車の中で、外はもう明るかった。心配そうに私の顔を見る尽八に大丈夫だと声をかける。私より、尽八の方が大丈夫なんだけどね。ここに巻ちゃんがいないってことは・・・そういう事でしょ。


「私、どのくらい寝てた?」

「半日は寝てたかもしれない。どう?怪我は」

「痛いけど・・・ウイルスに助けられたみたいだね」

「・・・すまん、なまえ@」

「なんて顔してるの、大丈夫だから」


尽八は精神的に弱いから、巻ちゃんを失って相当ショックを受けたのだろう。それに増して自分の判断の誤りで私を怪我させてしまったことに責任を感じている。けど、ここで慰めても素直にはならないだろう。


「お腹すいた」

「飯ならあンヨ」


助手席にいる荒北が袋に入っている食べ物を渡してきた。しばらくは持つ様にどこかで沢山とってきたのかな。


「どこ向かってるの?」

「千葉。お墓をたてにね」

「・・・そっか。最終的には何処に向かうの?」

「アンブレア社本部だ。そこに向かうまでにできるだけ多くの各県のアンブレア社を潰す」

「成る程ね、りょーかい」


いま、どのくらいの人間が生き残っているんだろう。必ずどこかに生き残っている人がいるはず。


「あ、真波。ありがとうね」

「お礼なんて・・・なまえ@さんが庇ってくれなかったら俺がやられてたよ。ありがとうございます」

「真波がいなくなったら、怪我したとき大変だからね」


真波は納得しないような顔で頷いた。


「人間を見つけたら、どう対処すればいいの?」

「・・・その場は助ける。あとは状況次第だ」

「了解」


それからしばらく進んで、ガス欠の為に他の車に二手に別れて乗って千葉へ向かった。

福富の運転で、新開、泉田、真波
荒北の運転で、なまえA、私、尽八

軽の方が燃費がいいということで軽に乗って二手に別れた。

千葉に向かうまでに転倒している車や、道端に散らばった死体をみた。千葉もひどい状況かもしれない。


「ついたわよ」

「ここが前にあいつらが働いてた場所か」


目の前にあるのは、総北警察署。
私達は警察学校から警察、部隊、特殊部隊に昇格していった。巻ちゃん等の家は知らないので、前職で墓を作ろうということか。


「ここには武器もあるはずだ。弾と食料、衣類の補充をするぞ。今夜はこの中で過ごす」

「じゃあ先に中のアンデッド調べないとね」

「ああ」


車を入り口の階段の下にぴったりつけて、重い硝子戸を開ける。


「・・・静かだな」

「ったりめーだろォ、どうせ人間は皆逃げてるか食われてる」


先頭に荒北と新開、後ろを泉田と福富で銃を構えて進む。一階、二階、三階、四階と念入りにチェックしたが、アンデッドはいなかった。


「久しぶりにトレーニングができますね!」

「やりてーのオメーだけだからァ」

「泉田さんは筋肉バカですから」


警察署には勿論トレーニングルームがある。泉田は早速トレーニングルームに行ってしまった。私達は仮眠室で一休みする。


「真波と俺は食料、荒北は見張り、新開とみょーじAは武器の補充を頼む。あるだけ持ってきてくれ。東堂は・・・みょーじ@と休んでいろ」

「!フク、俺は・・・」

「今のお前は足手まといだ」

「っ!・・・分かった」


福富の一声で皆は部屋から出て行ってしまった。


「・・・尽八、泣きたいなら泣きなよ」

「彼女にそんな姿見せられんよ」

「別に幻滅したりしないから、ほら」

「・・・っ」


ベッドに座ったままの尽八を抱きしめる。この状況なら、尽八の頭まで包み込める。尽八は少しだけビクッと肩を揺らして、そのあと少しだけ震えた。


「情けないな、俺は・・・っ」

「仕方ないよ。尽八にとっては大切なライバルでしょ?でも、それは福富や新開だって同じだよ。金城と田所は良いライバルだった。・・・切り替えなきゃ、皆の足引っ張るだけだよ」

「・・・そう、だな」


尽八も私の背中に腕を回して、力を入れる。


「巻ちゃんの事は、もう切り替える。皆に迷惑かけられないからな」

「うん」

「怪我は・・・」

「ウィルスと真波のお陰で大丈夫だって言ったでしょ、心配しすぎ」

「それでも、大事なものを傷つけてしまったことに変わりはないからな」

「・・・責任とってくれればいいよ」


そう言えば、尽八はびっくりした顔で私を見た。・・・目、真っ赤だし。


「それって・・・」

「うん、そういう意味」

「・・・責任とるに決まってる。寧ろ他の男には譲れんよ」

「もうちょっとカッコイイ顔のときに言ってほしかったけどね」

「俺はいつでも美形だ!!」

「目も鼻も真っ赤だよ」

「なにィ!?」


咄嗟に顔を隠す尽八。・・・少し、元気にさせられたかな。


「尽八、こっちむいて」

「む?なん・・・!?」


尽八が私に顔を向けた瞬間にキスをしてあげた。少し驚いているけど、それより嬉しそう。


「なまえ@、今のもういっか」

「むり」


眠いけど、皆が戻ってくるまで暫く待つかな。





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