なまえA side
ガシャァンッ
「・・・ー!!!」
朝、物音で起きた私は驚愕した。どこから入ってきたのか・・・きっとリビングの網戸だろう。フラフラした男が部屋の至るところに身体をぶつけながら此方へとゆっくり近づいて来る。最初は酔っ払いの不法侵入だと思っていたが、違った。明らかに彼の様子がおかしい。口からは涎を垂らし、よく見れば傷だらけで明らかに本人のでは無いだろう血が、身体の至るところについていた。
「うぅ・・・」
「・・・大丈夫ですか?」
私はゆっくりと、警戒しながら彼に近付いた。しかしー・・・
「!!!!」
彼はいきなり私に噛みつこうとしてきた。瞬時にそれを避けることができたが、寝起きの私はバランスをとることが出来ずそのまま転倒。彼は私の上に多い被さり、またも鋭い歯で噛みつこうとしてきた。
「なんなの!!」
必死に抵抗するが、力が強い。部隊に入っているが、私はあの中でも一番弱い。近づいて来る彼・・・いや、化け物の口。もうダメだ、そう思った。
ダァンッ
「!」
「大丈夫?なまえA」
「・・・靖友?」
銃声と同時に化け物は倒れて動かなくなった。私を心配する声が聞こえて見ればそこには銃を持った靖友がいた。
「どういう事?何なのコレは」
「知らねーヨ。上が早く社に来いだとよォ」
「・・・分かった」
私は急いで支度をして会社に向かった。・・・街は滅茶苦茶だった。火事になっている家があれば、そこら中に突っ込んで燃えている、壊れている車。先程の化け物に食べられてしまったのか、原型の無い人間だったであろう肉片。化け物は彷徨いていて、此方に向かって来るが走れば振り切れるくらいに足が遅い。しかし、人は見当たらなかった。
「なまえA!!良かった、無事だったんだ!」
会社の外は私達より下の部隊が護っていて近づいて来る化け物はいなかった。部屋に入れば抱きついて来るなまえ@。
「皆無事だったのね・・・」
「私は尽八に起こされて外見たらこんな状態になってて・・・」
「私は靖友に助けられた。・・・上からの命令は?」
「まだ無い。あの化け物はアンデッドと言うという事しか情報は得ていない」
「そう・・・」
窓から外を見れば、昨日と同じ景色はそこには無かった。荒れ果てた街。一晩でこうなってしまうのか。
「アンデッドについての説明は?」
「ああ、アンデッドは何らかのウイルスで人間があの姿になってしまうらしい。噛まれると確実に感染する。奴らはもう死んでいる。殺すには心臓だと意味が無い、頭を狙えということだ」
「死んでる、ね・・・」
「こんな時でも新開はお菓子食べてられるんだね」
「お前らも食えよ。今しか食えねぇかもしれないだろ?」
「・・・確かに。」
単純ななまえ@はお菓子を食べ始めた。靖友もベプシをがぶ飲みしている。
『福富第一班、金城第二斑は至急〜〜に来るように』
放送で呼び出された私達は急いで身なりを整えてから向かった。
命令はこういうことだ。
ショッピングモールや施設、学校などに避難している一般市民の救出。及びアンデッドの処理。簡単だ、と思った。しかしそう簡単にはいかなかった。
感染の怖さとは恐ろしいものだった。
「動き辛ェ!!」
「隼人の方が大変そうだぞ」
武装をして、背中に武器を積む。自分の体重くらいの重さの物を持つのはとても大変だったが、普段鍛錬をしている私達はそこまで苦ではない。車に乗って後ろにバスを引き連れ、金城斑と共に近場のショッピングモールへ向かった。
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