なまえA side


「良かったな、目が覚めて」

「ありがと。心配かけてごめん」

「もう無茶はするな」

「ごめん福富」


新開、福富、泉田、真波、東堂、なまえ@が揃って座っている私の周りに集まって心配そうな顔をしていた。心配されても仕方ない。聞けば、丸一日寝ていたのだから。靖友は一人で車の中にいるらしい。きっと、勝手にあんな事をしたこと、怒っているんだろう。


「オレはアンデッドに噛まれた人間の始末をしてくる」

「オレも手伝うよ、寿一」


福富と新開がその場から離れて、気を遣ったのかなまえ@達四人も何処かに行ってしまった。折角気を遣ってもらったんだ、私も靖友のところに行こう。


ガチャッ


「・・・」

「・・・入っていい?」

「オレとオメーの車だろォ」

「そうだね」


助手席に座って暫く沈黙が続いた。私自身も何を話せばいいか分からない。でも、ひとつだけ言わなきゃいけないことがある。


「靖友、ごめ・・・!っ」

「心配しただろーが」


謝ろうと靖友の方に身体を向けた瞬間だった。思い切り靖友に抱きしめられる。きつく抱きしめているのか、少しだけ苦しい。


「・・・ごめんね」

「オレが護りきれなかったからあーなったんだヨ」

「靖友のせいじゃないよ。私の我儘」

「ちげぇよ・・・このまま目ェ覚まさなかったら、って滅茶苦茶考えた」

「靖友・・・」

「無茶、させちまったな」

「ううん・・・」


暫く靖友は腕を離そうとしなかった。十分くらい経ったところで、真波が呼びにきて今日は夕方まで進んでどこか泊まれる場所を確保して一晩を過ごすことになった。そう簡単には見つからないだろうけど。


「フク、頼みがあるのだが・・・」

「何だ」

「宮城の美術館へ行ってくれないか?丁度この時期展示されていた日本刀を手に入れたいのだ。なまえ@もナイフばかり使っていては、今日みたいな危険な目に合ってしまうからな。刀を持たせたい」

「いいだろう。だが、あまり時間はかけるな」

「ありがとう」







あれから夕方まで進んで、宮城県についた。インターを降りれば、すぐにあるホテル。その近くにはガソリンスタンドもあって、ガソリンの補給をした。


「東京に比べると、アンデッドの数が少ないな」

「ここらへんにはまだあまりウイルスが蔓延していないのか?」

「それとも、騒ぎを聞きつけて逃げたとか?」

「それもあり得るな」


ホテルの中にも外にも数体のアンデッドしかいない。始末し終えたアンデッドを片付けてホテルに入った。


「なまえA、今日は荒北と同じ部屋にしなよ。荒北もその方がいいでしょ?」

「・・・チッ。ああ、そうだなァ」


ニヤケながら聞いてくるなまえ@にウザそうな顔をしながらも私を見てなまえ@の意見に同意する靖友。


「決まりね」

「みょーじ@さん、お腹すきました〜」

「まじか。夕飯の支度しよ、なまえA」

「うん」

「幹ちゃーん、手伝って!」

「分かりました!」


夕飯の支度と言っても、食材は少ない。大半がレトルト物だったり、缶詰めだったり。まだ暑いから、生ものも野菜もすぐにだめになってしまう。


「あーあ、だめになってる」

「このままだと、栄養偏っちゃいますね・・・あの、近くに農家とかがあったら野菜がとれるかも・・・」

「・・・いいね、それ!」

「このまま本社に行っても、体力が無きゃ意味が無いからね。海も近くにあれば泉田にでも潜ってもらって魚とってもらいたいんだけど」

「泉田が潜って魚とってるとか想像するだけで笑えるね」


私となまえ@は笑っているが、幹ちゃんは苦笑い・・・というより無理に笑っているように見えた。そういえば、仲間が五人アンデッドに噛まれてしまったのか。


「幹ちゃん、責任感じてるでしょう」

「え・・・」

「あの人達が噛まれたのは自分せい、自分が弱いから・・・って思ってるでしょう」

「・・・」

「幹ちゃん、なまえAは観察力凄いからね。隠し事出来ないよ」


なまえ@が笑いながら言えば、観念したように頷く幹ちゃん。


「私・・・弱いから。だから皆を護れなかったんです」

「何故そこで幹ちゃんが責任を感じるのか、私には分からない。本来なら、強い立場の私達が護るべき対象なの。どちらかといえば、責任は私達にあると思うけど」

「っ、でも、集めたのは私だから・・・」

「だからって、あの中で一番若い幹ちゃんが責任を感じる事は無い。だいたい、私達が居なかったら本当は護らなきゃいけないのはあの人達の方。大人や男達が盾にならないで怯えて護られてるのは可笑しいと思う」

「なまえAさん・・・」

「だから幹ちゃん、あの人達が噛まれたのは貴女の所為じゃない」


幹ちゃんは堰を切ったように泣き始めた。幹ちゃんの肩を支えるなまえ@。私も背中を撫でてあげる。暫く泣いて、落ち着いた幹ちゃんはお礼を言ってから、いつもの可愛らしい笑顔で「ご飯の支度しちゃいましょう!」と言ったので私達も作業を再開した。





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