「オレ達はこのままアンブレアの本社がある北海道を目指すが・・・お前達はどうする」
翌朝、起きてから早速作戦会議が始まった。私達と生存者達の代表で幹ちゃんともう一人バスを運転してきた男を含めて。
「私達・・・行きたいところがあるんです」
「行きたいところ?」
「はい。まだ騒動が始まってすぐの時にラジオで聞いたんです。食糧もあって安全な場所が北海道にあるって」
「北海道・・・同じ場所ね」
「なんていうところなの?」
「・・・アルカディア」
アルカディア、聞いたことがない。どこかの施設か何か?幹ちゃんに聞けば、北海道にあるということしか分からないらしい。北海道に行ってみれば、きっとなにかしら分かるはず。北海道までの道のりはあと少し。
「荒北、次私見てるから朝食食べてへ少し寝なよ」
「おォ・・・」
結局夜通しでなまえAを見ていた荒北は一睡もしていない。このままではアンデッドが来た時に対応が出来なくなってしまう。私は荒北と変わってなまえAの隣に座った。
「今まで寝不足だったせいもあると思いますよ」
「・・・真波」
「みょーじAさん、眠れてなかったみたいなので」
確かになまえAは目を閉じているだけの様に感じた。気のせいだと思っていたけど、まさか本当にねていなかったなんて。気付いてあげられれば、こんなに溜め込まなくても済んだのに。
「あ。そういえば東堂さんが、後で朝食を持って行くって言ってました」
「ありがとう。真波も食べてきな。すぐ出るだろうし」
「はーい」
真波が出て行って、車の中が静かになる。白い顔をして今だに目を覚まさないなまえA。腰ベルトに付けてあった銃を外してシートの上に置き、ナイフを出す。頭蓋骨を刺したりするから、刃こぼれが酷いな。これじゃあ、いつ折れるか分からない。
「確かここらへんにもうひとつナイフが・・・」
「うわぁああああっ!!!!」
「っ!!」
「新開さん!アンデッドです!」
外から男の叫び声か聞こえた。他にも騒いでいる声と、泉田の声が聞こえて車を飛び出す。なまえAがアンデッドに襲われないように、扉も閉めた。
「あークッソ、めんどくせえ」
「荒北、無理はするなよ。ただでさえお前は寝不足で転化もろくにできないのだからな」
「・・・っるせーよ」
「転化はするなよ、倒れるぞ。刀を一本貸してやる。あまり雑に扱うなよ」
「ハイハイ」
「尽八!!荒北!!」
尽八と荒北の元に行ってみれば数体の始末されたアンデッドと、尽八の刀を持つ荒北が目に入った。
「あー、今転化したらぶっ倒れるもんね?」
「オメーあとで覚えとけヨ」
「くるぞ!!!」
また増えるアンデッド。群れになってやってきたのだろう。でも、始末できない数ではない。
「幹ちゃん、大丈夫?」
「なまえ@さんっ!・・・五人、アンデッドに襲われてしまって・・・でも、あとの人達はもう車に避難させました!車は泉田さんが護ってくれています!」
「そっか、よかった。幹ちゃんも車に行って?私が車まで護るから」
「でも、役に立ちたいんです」
「気持ちは嬉しい、ありがとう。でも、車にいて」
幹ちゃんは少し黙ったあとに、渋々了承して私は幹ちゃんを護りながら一番近くにある車に向かった。
「ここにいて。静かにしてればアンデッドにも気付かれない」
車のドアを閉めた途端に、六体のアンデッドが此方に向かってくる。銃は・・・車の中に忘れた。馬鹿か私は。ナイフもこの刃じゃ持たない。でも、ギリギリまでやるしかない。
一番近くにいたアンデッドの腕を引っ張ってその反動でナイフを頭に突き刺せば一体目の始末が終わった。二体目、三体目もなんとか折れずに始末することができた。四体目、額から刺そうとした時だった。
パキッ
「っ!!」
刃が折れる音・・・ーー。どうする、このままじゃあ喰われる。咄嗟に右手でアンデッドの頭を掴んで左手で左肩を掴み右手は私から見て右へ、左手は左へ流せば、アンデッドの首が簡単に折れる。・・・これで、四体目。あと二体!!
「うう・・・」
「!?え・・・」
すぐ真後ろに気配を感じる。唸り声が耳元でして、アンデッドが後ろで口を開けて私の首を噛もうとしているのが直ぐに分かった。けど、反応、しきれない。
「なまえ@っ!!!!」
東堂が此方に気付いて向かってくるが、これはもう間に合わない。無理だ、噛まれる・・・
グサッ
「!!」
私の真横を何かが凄いスピードで通りすぎて、後ろのアンデッドが倒れた。そして目の前にいたアンデッドの頭も撃ち抜かれる。
「・・・っ、」
「何やってるの。それ、アンタのでしょ」
「・・・なまえA・・・?」
車の前に立って、銃を構えているなまえA。後ろを見れば倒れているアンデッドの頭にナイフが突き刺さっていた。
「早く残りも片付けるよ」
「・・・うん!」
最後の一体のアンデッドを始末して、なまえAに駆け寄った。
「おはよう、なまえA」
「・・・おはよ」
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