なまえA side


「昨日は・・・悪かったな」

「・・・ううん、私もごめん。でも、本当の気持ちだから」

「あァ、分かってンヨ」


なまえ@達が出て行ってから1分間、沈黙が続いていたが最初に口を開いたのは靖友だった。


「心配すンな。オメーはオレが守ってやるヨ」

「私も、靖友を守りたい」

「ハッ・・・行くかァ」


私が頷いて、靖友が扉を開けた。それと同時に銃を一発アンデッドに向けて撃って、靖友と一緒に裏口へ向かう。厨房より、自分たちの正面にある裏口から出た方が早い。きっと靖友も同じことを考えていたのだろう。私の手を握って走る。


「っざけんな!!いつから走れるようになったンだァ!?」

「っ、うそっ」


アンデッドが、走れる様になっていた。走っている、というより早歩き。私達が知っているアンデッドは動きが鈍いはずだったのに。出口まで残り数メートル。逃げきれる・・・ーそう思った。


ガチャッ


「あァ!?」

「開かない・・・!?」


扉が、開かなかった。鍵が閉まっているわけではない。見る限り、扉とわくが歪んでいて開かない。すぐそこにはアンデッド・・・このままでは二人まとめてやられてしまう。


「・・・靖友」

「なに・・・!」

「ごめんね・・・」


靖友に優しく触れるだけのキスをして、目を閉じて深呼吸をしてからアンデッド達と向き合う。靖友の制止の声が聞こえたが、今自分にあるだけの力を込めた。どうすればああなるだとか、自分ではよく分からない。けど、集中してこうすれば、あの力を使えるということだけは分かる。一気に力を放ったところで、何体ものアンデッドが吹き飛ばされる。身体の節々が痛い、今にも倒れそうだ。アンデッドが周りからいなくなったところで、私の意識は途絶えた。






なまえ@ side


「なに、いまの・・・」


私達が車に乗ってすぐに中から大きな音がした。何かが、吹き飛ばされる様な。嫌な予感しかしない。心配になって車から出ようとしたときだった。


「荒北!!!」


荒北が、出てきた。・・・なまえAを抱えて。


「なまえAっ!!!!」


力無く荒北に抱かれているなまえAに一瞬身動きがとれなくなった。しかしまだどこからかアンデッドがきて此方に向かってきている。


「乗れ!!!」


尽八が荒北を車に乗せて、すぐに車は動き出した。荒北も焦っている様子で、なまえAをすぐに真波が診る。


「真波、なまえA大丈夫なの!?」

「まだわからないです」

「なまえ@、落ち着け。真波が集中出来んだろう」


運転しながら尽八に注意されて、落ち着いてなんかいられないけどなまえAの為にも黙った。なまえAの顔は真っ青で、それを見つめる荒北の顔も青い。尽八が福富達にもトランシーバーで状況を伝える。


「・・・どうだ、真波」


車が三十分くらい進んだ所で、尽八が真波に聞いた。


「大丈夫です。過労と貧血ですね」

「良かった・・・」

「本当にそれだけか?」

「はい。荒北さんも、少し休んで下さい」


真波の言う通り、荒北も疲れ切っていた。昨日寝てないって、尽八言ってたもんなあ。


「今日はこのまま進んで、車で寝泊まりするぞ。荒北、お前の車は隼人が運転しているが体調が良く無いのならこのままここで寝ていけ」

「・・・」

「荒北、聞いているのか?」

「・・・あァ」


尽八が隣で溜息をつく。荒北の気持ちは分からなくも無い。恋人が倒れたんだ、気が気ではないはず。私だって、本当に心配だ。けど、尽八はきっと注意するんだろうな。


「荒北・・・しっかりしろ。お前の気持ちも分かるが、いつまでそうしているつもりだ。真波の腕は良い、安心しろ」

「・・・分かってンよ」

「分かっているなら返事くらいしろ馬鹿者」


少しだけ、荒北の表情が和らいだ。外は少しだけ暗くなってきていて、多分今はできるだけ広くてアンデッドが来ても逃げられるような場所を探している。福富だって鬼じゃ無い、荒北となまえAを休める為に今日は早く止まる筈。


「荒北、どうする?ここで寝る?それとも自分達の車で寝る?」


止まる場所が決まって、車を停車する。


「なまえAの事も考えて今日はここで寝かせてもらうヨ。悪ィな」

「じゃあ、オレは荒北さんの車で寝かせてもらおうかな。何かあったら呼んでね、荒北さん」


真波は私達の車から出て、新開が乗っている荒北の車へと移動した。


「なまえA、早く目を覚ますといいね」


この日は皆、疲れてすぐに眠りについた。



to be continude





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