「幹ちゃん・・・頼みがあるんだけど」

「頼み、ですか?・・・私に出来ることなら」


運転して、ホテルに着く前に幹ちゃんに頼み事をした。まず、私もなまえAも頭に傷を負っている。これを尽八や荒北に見られたら大変。誰がやったかと問われ、叱られる。それはいいけど、今は混乱しているから後で自分達で話す。まずは、なまえAのあの能力のこと。二人で話してから、皆に話したい。でないと混乱してしまう。そこで、幹ちゃんに尽八達の気をそらしてもらうように頼んだ。


「じゃあ、よろしくね」

「任せてください!」


幹ちゃんと尽八達が話している隙を狙って私となまえAは、荷物から消毒液とガーゼとテープを引っ張り出して二階に上がった。部屋の扉を締めて、ベッドになまえAを座らせてタオルを濡らして血を拭き取り消毒液を少量かけてガーゼを貼った。自分のもやり終わったところでなまえAの隣に座る。


「で、あれはなに?」

「・・・私にも、分からない。けど、気づいたら出来てて・・・。多分、ウイルスのせいだと思うんだけど」

「でも、私には出来ないよ?」

「多分、私の戦闘能力はそんなに上がってない。代わりにこの能力が出来るようになったんだと思う」

「いい能力だと思うけど、身体に負担がかかる・・・」

「けど、これを上手く使えるようになったら・・・もしもの時に助かる」

「それはダメだろォ」

「っ!」
「!靖友・・・」


後ろから荒北の声がして振り向けば、いつの間にか部屋に入っていたのか、荒北と尽八が壁に寄りかかって立っていた。


「その傷はどうした?」

「あー・・・殴られた。でも平気。もう手当したから」

「頭を殴られてるんだ、真波に診てもらえ」

「・・・分かった」


傷のことはあまり怒ってないみたいで、良かった。ただ、真波に診てもらわないと色々面倒くさそうだ。


「で?どういう経緯でそうなったンだヨ?」


これまた説明しないと面倒くさそうなので、いちから荒北と尽八に説明した。


「まァ・・・残りの奴らは後でオレ達で殺しに行くとして・・・なまえA、その能力使うなヨ」

「靖友、これが上手く使える様になったら、アンデッドを楽に始末する事だって・・・」

「オメーの身体に負担がかかるのにやらせるわけねーだろォ」

「・・・っ」


悔しそうな顔をするなまえAだが、私も荒北の意見には賛成。もしもなまえAの身に何かあったら・・・


「なまえ@、真波の所に行くぞ」

「・・・うん」


私は尽八と一緒に部屋を出て、真波がいる一階に向かった。


「尽八、怒ってる?」

「怒ってないぞ?理由はもう聞いてあるからな」

「良かった」

「けど、無茶はするな」


コツンと額を軽く殴られ、返事をすれば満足そうに笑う尽八。・・・なまえA、荒北と喧嘩してないといいけど。






なまえA side


なまえ@と東堂が部屋を出て行って、靖友と暫く無言が続いた。靖友が私にあれを使わせない理由は良く分かる。けど、私だって役に立ちたい。戦闘場面やアンデッドを始末するのに、いつも私が足手まといになっているのは自分でも分かっている。私は運動神経を買われて部隊に入ったわけではない。あくまで頭の回転を買われて入った身。だから、毎回そういう場では皆の足手まといになっている。だからこそ、いまのこの力を使えば・・・


「靖友、お願い」

「ダメだヨ」

「私だって役に立ちたい」

「十分役に立ってんだろォ」

「これが上手く使えれば皆の怪我だって少なく・・・」

「オイ、それ以上聞くンじゃねェ・・・オメーの頼みでもこれは聞けねーヨ」


靖友はいままで私に見せたことないような怖い顔をして、部屋から出て行ってしまった。



to be continude


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