なまえA side
生存者を保護して、ファッションセンターを離れて警察署に戻った時にはもう福富も新開も戻ってきていた。
「凄い収穫だな」
「これだけあっても人間が増えちゃ持たねーだろォ。また探してくんヨ」
「隼人とフクはどうだったのだ?」
「自販機数台壊してコンビニ行ったら結構あったぜ。車も二台見つかった」
警察署の前に停めてある二台のミニバン。バンを持ってきてくれたのはちょうど良かった。私達もバンを二台みつけてここまで来たが、荷物のことを考えるとやはり狭かった。軽が二台とバンが四代・・・他にも車を用意しなければ。
「戻って来たんですね」
「武器は運び終わりましたよ」
中から武器を持った泉田と真波が出て来て、入り口にある分の武器もそれぞれの車に乗せる。
「どうするフクチャン?もう一台くらい見つけとくかァ?」
「いや、これ以上増えてもアンデッドから逃げる時に困るだろう。通り道にバスがあればそれに乗り換えてもらうぞ」
「そだねェ」
納得して、車に乗ろうとした時だった。
「待ってください!」
「・・・あなたは・・・」
「あの、先程は助けてくれて感謝しています。ですが、私達の安全は保証されているんですか?!」
いきなりそう言ってきたのは、私達と歳が近いだろう可愛い女の子。周りの視線を見る限り、きっとこの子は頼られているのだろう。可哀想に、この子より歳上がいるのに頼られているのが若い子だなんて。
「俺達が守れる限りは守るが、保証は出来ない。自分の身は自分で守れ。念のためにこれを渡しておく」
「・・・分かりました」
福富が冷たく言って、トランシーバーを渡せば女の子は返事をして車に戻って行った。
「・・・」
「何?気になンのォ?」
「別に、若いなって」
「・・・ああいうお利口チャンは早死するヨ」
福富と新開、私と靖友、なまえ@と東堂、泉田と真波、先程の子と生存者、そして他の生存者に別れて車に乗った。
「ガソリンはどの車も十分あるし、高速乗れば障害物も少ないだろうけど生存者の事を考えると一般道路や国道の方が良さそうね」
『いや、それは時間のロスになる。ガソリンも確実に補給出来るとは思わない。まずは北海道により早く行ける道。生存者はその後だ』
「・・・分かった」
確かに、アンブレア社を止めなければアンデッドは増え続けるばかり。そして、なによりも怖いのは私達のような突然変異。
『フクについて行けばいいのか?』
『ああ』
「分かった」
福富が乗っている車が発車して、私達の車も後について車を発車させた。六台が一列になって福富達の後を追いかける。
「団体行動ってのはどーも好きじゃねーなァ」
「分からなくもない」
「・・・アンデッドも日に日に増えてやがる」
靖友の言う通り、アンデッドは数を増していた。そこら中にアンデッドがうじゃうじゃいて、今も福富達の車がアンデッドを轢いたり跳ね飛ばしたりしている。スピードを出さなければいつ車にへばりつかれるか分からない。高速道路に向かうために通った国道も一般道も、横転した車やアンデッドで混雑していた。避けながら進み、高速道路入り口についた。後ろの生存者が乗っている二台の車もなんとかついてきている様子。
『入るぞ』
トランシーバーから聞こえる福富の声を合図に、加速した。
「高速も事故してんネェ」
「スピードの出し過ぎとか不注意で事故・・・そんなんで死ぬのは阿呆らしいけど」
「そんな急いだって逃げ場無ェのになァ」
確かに、もう感染は日本中に広まっているはずだし、海外に逃げない限りは感染からは逃れられないだろう。海外がそんな状態の日本人を受け入れないだろうけど。
『徐行してくれ。何キロか先に障害物がある』
「了解」
『了解ー』
『分かりました!』
福富の支持でスピードを落として徐行して障害物の前で停止した。車が集団事故を起こして道が塞がれている。車から降りて事故を起こした車の前に集まった。
「どーするよォ、フクチャン」
「泉田、頼めるか」
「僕に任せてください、福富さん!」
そういうと、泉田は脱ぐ必要もないのにタンクトップを脱いで上半身裸になり車の前までいくと、車を掴んで動かした。
「ヒュウ!やるな泉田」
「真波、お前も泉田を見習ったらどうだ?」
「やだなあ、東堂さん。東堂さんだってできないくせに」
「うぐ・・・」
否定できないのだろう、東堂は悔しそうに唸っている。
「これくらいで通れると思います」
「ご苦労だった」
「お疲れさん」
身を翻して車に戻ろうとした時だった。
「うわァァァァァ」
「!」
一番後ろの車に乗っていた生存者の一人が、車から降りていてどこからか現れたアンデッドに襲われていた。すぐさま銃を放とうとするが、誰よりも早く新開が撃ってくれていた。襲われていた生存者も、アンデッドも。
「な、なにしてんだよ!?なんで殺すんだよ!?」
「チッ、車から降りてっからそういう目に合うんだヨ、バァーカ」
「行くぞ、時間の無駄だ」
一人の生存者が仲間が殺されたことに激怒したのか此方に向かって怒鳴る。が、私達はそんな事気にせずに車に戻った。
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