なまえA side
「ん・・・」
目が覚めると、窓から見える景色は真っ暗だった。まぁ、もういつもみたいに街灯や他のビルの電気なんてついていないんだけど。
「起きたァ?」
隣のベッドで眠っていた靖友もいま目を覚ましたのか、欠伸をしている。時計を見れば結構眠っていたことが分かる。
「福富と新開は?」
「戻ったンじゃなァイ?」
真波と泉田は二班のメンバーと寝ていると聞いた。そういえばなまえ@達、どうなったんだろう。その話を靖友にすれば、見に行こうなんて言い出すから隣の部屋を覗きに行くことになった。・・・まぁ、私も興味あったんだけど。
「・・・ッゼ」
「・・・幸せそうね」
部屋のドアの隙間から覗けば、東堂の腕枕で眠っているなまえ@が見えた。ああ、くっついたのね。お互い幸せそうな顔しちゃって。靖友もウザいとか言っておきながら嬉しそうだ。
「・・・あのさァ」
「どうしたの?」
いきなり真剣な顔をして私を見る靖友。こんな真剣な顔、あまり見ないから新鮮だな。
「俺達もああなっちゃう?」
「・・・それってつまり?」
「・・・・・・」
「私、言葉で言ってくれないと分からない」
嘘。本当は分かってる。靖友が何を言いたいのか。
「黙ってるなら皆のところ戻ろうかな」
「だーもうめんどくせえ!!・・・好きなんだヨ」
「知ってる、私も好き」
「・・・知ってるヨ」
そのあと靖友は、いつもの荒っぽさからは想像できないくらい優しいキスをした。外はあんなだけど、こんな幸せがいつまでも続けばいいのに。
「・・・どういうこと?」
「上からの命令で、一般市民との対面が禁止された」
何故だか知らないけど、いきなり避難所にいる一般市民との対面が禁止された。救助きてきたのは私達で、どんな様子なのか気にならないわけではない、のに、いきなり対面を禁止されるのは意味が分からない。
「上は何を考えているのだ」
「何を考えているのか分からないのが奴らでしょ。福富、次に呼び出されるのはいつ?」
「いまのところ、明日の朝と言われている」
「今夜は休んで、明日に備えないとね。また、救助命令かもしれないし」
「俺は巻ちゃんのところに行ってくる。メガネくんの死で、精神的にきている様だからな」
「俺も金城のところに行く」
「僕は・・・坂道くんに挨拶してきますね」
真波は、少しだけ辛そうな顔をして笑った。大学にいるときは、そんな顔なんて見せなかったけど、帰ってからは辛そうな顔をしている。真波にとって、小野田は唯一の友達だったから。・・・浮かない顔をしているのは真波だけではない。数日前に恋人を失った新開もだ。靖友は真波について行って、泉田はトレーニングルームへ行った。部屋に残ったのは私となまえ@と新開。
「なまえA、わたしお腹空いたからご飯食べてくるけどどうする?」
「・・・先、行ってて」
「分かった!」
なまえ@が出て行って、部屋には私と新開だけになった。新開はいつもみたいにお菓子を食べないで、ぼーっと外を見つめていた。この時点で、おかしい。紅茶を淹れて、新開の横に腰掛けた。新開にも少し甘めの紅茶を渡す。
「・・・ありがとな」
「・・・新開、落ち着くまで班から外してもらった方がいいと思うよ」
「何言ってんだ。落ち着いてるぜ、俺は」
「それのどこが落ち着いてるっていうの。誰がどう見てもいつもの新開じゃないわ」
そう言うと、新開は苦笑いをする。
「皆、気付いてるか・・・」
「当たり前でしょ」
「・・・葵とは、来月結婚するつもりだったんだ」
「!・・・そう」
「まさか・・・こんな事になるなんてな」
新開は片手で頭を押さえて、悔しそうに笑った。さっきから、笑って誤魔化してばかり。
「私達も守り切れたはずだったんだけど」
「俺はおめさん達のせいだとは思ってない。・・・俺のせいだ」
「私達のせいじゃないなら、新開のせいでもない。・・・アンデッドのせいだよ」
私も、どこの人間もみんなそう思っているはず。アンデッドのせいで、最愛の人を無くした人はたくさんいるはざだ。もちろんそれは、ニ斑の小野田だってそう。
「恨むならアンデッドを恨むしかない・・・それと、きっと何処かにこのウイルスを広めた人間がいるはず」
「ーー!!」
「だって、おかしいと思わない?今まで平凡な日常がどこから来たかも分からないウイルスでこんな風になるなんて」
「・・・なまえAの勘は当たるからな」
「私が一番怪しいと思ってるのは・・・ーーー」
ガチャッ
「あれ?まだみんな戻ってないんだ。新開の分のご飯持って来たんだけど」
「・・・ありがとう」
私が話し終える前に、部屋に戻って来たなまえ@は大量のお菓子やおにぎりを持ちながら部屋に入って来た。
「ほら、新開!ご飯食べなよ」
「ありがとな」
新開は、少し楽になったのかいつも通りご飯を食べ始めた。よかった。
呼び出しは明日・・・何か動きがあるのか。
「私が一番怪しいと思ってるのは・・・ここ、アンブレア社」
to be continude
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