「言いたくないと思うが、説明してくれ」
少し経った頃に福富が現れて真剣な眼差しで質問してきた。なまえ@は治療中、外から怒鳴り声が聞こえてくるので、東堂と靖友は未だに落ち着いていないのだろう。けど、このままではアンデッドを誘き寄せるばかりだ。
「別に嫌なことをされたわけじゃないから言えるけど、先にあの二人をどうにかしないと」
「俺達では手につかん」
「・・・私が行くよ」
外にいけば、物に、人に当たって怒鳴っている靖友と東堂。靖友がああなるのは知っていたけど、東堂、人が変わりすぎ。
「靖友」
「!・・・ンだよ?大丈夫なのォ?」
「大丈夫。心配させてごめん」
靖友は、私の前ではあまり怒りを露わにしない。きっと理由を聞いて起こるだろうけど。東堂は、少しだけ此方を見て近くにあった物を蹴ると水泳場の中に入っていった。
「東堂、ヤバイっショ」
「ああ、やべーな」
「なんとかするでしょ、なまえ@が。・・・・・・多分」
真波 side
「痣残っちゃうけど、一ヶ月くらいしたら消えると思います・・・けど、鳩尾の横の肋骨一本折れてますね。呼吸、苦しくないですか?」
「んー・・・ちょっと」
「本当は固定しなきゃいけないんですけど、そんな道具ないので湿布貼って包帯でキツく巻いておきますね。シャワー、どうしますか?」
「浴びたいからあとでいい?」
「分かりました」
あの騒動に駆け付けた俺は驚いた。何より、怒りに狂った東堂さんに。普段の東堂さんからは考えられないくらい。誰が見ても、東堂さんがなまえ@さんを大切に思っているのが分かる。なまえ@さんもきっと気付いているはず。それなのに、いつも無茶ばかりする。なまえ@さんの傷は、本人からしたら気にしていないだろうけど、痛々しい。口角が切れて赤く腫れていて鳩尾が痛むんだろう、庇いながら歩いていた。なんだか東堂さん、可哀想だなあ。荒北さんも騒動キレていたけど。ていうかこの人達自分の気持ちおもてに出しすぎ、付き合えばいいのに。
なまえA side
「ありがとうね、靖友」
「で?どうしてああなった訳ェ?」
水泳場で話すわけにもいかず、男子更衣室で早速説明を求められた。なまえ@も話すといっていたが、椅子も何もないここに怪我人を立たせたまま話すなんてダメだと言って説得した。男子更衣室には福富・靖友・新開・東堂・金城・巻島・田所がいる。後輩メンバーには警備を任せた。女のコに頼まれた事から最後まで丁寧に話した。皆は何も言わずに最後まで聞いてくれたが、かなり怒られた、というより注意をうけた。
「ったくよォ、何も相談しねーで勝手に話し進めてンじゃねーヨ」
「まぁ、無事だったのは良かったけどな」
「無事ではないだろ」
東堂は未だに頭にきているのだろう、ずっと真顔で不機嫌オーラが全開だった。真面目な性格の東堂には許せない事なのだろう。目を話せば今も項垂れている男達を殺しに行きそうだ。勿論、それは靖友もだけど。
「奴らの処分はどうするかだが・・・」
「殺す」「殺さねばならんな」
靖友と東堂の返答は即答だった。普段気が合わない二人だがこういう時だけぴったり。
「・・・俺の手で殺したい。そんなこと出来ない事は百も承知で頼んでいる」
「ンな事できるわけねーだろバカチンがァ・・・ま、俺もそうしたいけどネ」
「俺と金城で話し合った結果・・・ここに置いていくことになった」
ここに置いていく、つまり、見殺しにするということ。あんな状態ではアンデッドにすぐに食べられてしまうだろう。それでも東堂と靖友に殺させたくないのはきっと手を汚して欲しくないから。私も同じ意見だ。
「フクチャンがそういうなら」
結局、腑に落ちない様子でも福富の言うことは聞いた靖友と東堂。
・・・私がいなくても、絶対この二人どうにかできたでしょう。
あんな事があったおかげで、気付けば外は明るかった。結局一睡も出来ずに、二班は車に小野田を丁寧に運んで私達は昨日救出した人達を誘導して、本部にも応援を頼んでバスが迎えに来た頃に大学を後にした。
to be continude
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