なまえA side
「・・・分かった。ギリギリまで手は出すのは我慢する」
「ありがとう」
更衣室へ移動した私達はさっそく男達をなんとかするための作戦をたてた。
大まかに説明すると、こうだ。
警備も緩まり皆が寝静まった頃に、奴等にも聞こえるようにシャワーに行こうと私がなまえ@を誘う。私の感がただしければ奴らは食いついてくるはず。シャワー室で暫く待って、足音が聞こえてきたくらいから気が緩んでいる素振りを見せる。しかし、奴らが入ってきて捕まえるのは現行犯にはならない。奴らが私達の服を一枚でも脱がした時が勝負だ。私は体術は苦手で危険だけど、なまえ@は強い。少なくとも成人男性よりは。
「私が触れられたからってキレないでね」
「・・・・・・・・・がんばる」
相手は3人。私が一人を片付けて、なまえ@が残りを片付ける。・・・うまく、いけばいいけど。
夜、皆が寝静まって警備も緩まった。ちょうどタイミングがいい。一班も二班も気が緩んでいる今が狙い時。二人で目で合図を送ってから少し大きめの声で言う。
「なまえ@、シャワー浴びにいかない?」
「いいね、私も汗と血が気持ち悪くて」
少しだけ奴等を見れば・・・やる気満々だね。餓えた獣の目をしている。どれだけ欲望に忠実なの、気持ち悪い。警戒を解くためにも、銃は一つだけ隠して持ってシャワー室に向かった。シャワー室の扉は開けたまま、更衣室に入れば奴等の足音はすぐに聞こえた。
「・・・いくよ」
「うん」
小声でそう言って、他愛ない会話をしているフリをした。瞬間、すぐだった。奴らは私達の口をほぼ同時に塞いで腕を固定する。わざと驚いたふりをしてみれば、嬉しそうな顔をして言った。
「痛くされたくなかったら抵抗しないでね?」
私に一人、なまえ@に二人ついている。私に二人ついていてくれれば良かったんだけど、まあいい。丁寧に扉まできちんと閉めてある。大人しくしてれば、「いい子だ」なんて言いながら服に手をかけた。明らかに年下の男にいい子だなんて言われたくない。上のシャツを脱がされ、二人共上半身がキャミソール一枚になったところでなまえ@に目で合図をした。・・・ーー瞬間だった。
ドスッ
「、はっ」
「!!」
想定外だった。奴等の内の一人がなまえ@の鳩尾を膝で蹴り上げた。軽い呼吸困難になったなまえ@は力なく膝から崩れ落ちた。今だに口を塞ぐ男のせいで、余計息がし辛そうだ。私が男の拘束を解こうとすれば、なまえ@の鳩尾を蹴った男が私を抑えつけてキャミソールを上に上げた。
「っ!!」
「!!」
「おっと、大人しくしてろよ?」
暴れて抵抗する私の首に身体を押さえつけていた男がナイフを突きつける。
「ぐあっ!」
「てめ、大人しくしてろって言ってんだろ!!」
息も整わないままに自分を押さえつけていた男の股間を蹴ったなまえ@が、私にナイフを突きつけている男に掴みかかろうとするが、すぐに私の服を脱がした男に殴られ、別の男がなまえ@のキャミソールを脱がしてこうふんしている。気色悪い。・・・最悪だ、この状況。この男達の蹴り技を見てただの一般人でないことは分かった。型を見る限り、空手か何かをやっている。
「あらかじめ聞いておいてよかったぜ。用心できたもんな」
「あの女達よりはめんどくせえけど、こいつらの方が満足できそうだ」
男はニヤリと笑って私の下着をずらそうとした・・・ーーしかし
「が・・・っ」
「!」
ガッシャーンッ
「な・・・!?」
「あー、最悪。口切れたし鳩尾もこれ暫く痕残っちゃうだろうし・・・なまえAの首に傷ついてるし。どう責任とってくれるの」
自分を拘束していた男の気が緩んでいる間に、男を蹴って更衣室の窓から落ちるか落ちないかのところまで男を押さえつけているなまえ@。相当怒っているのが、誰にでも分かる。
「退いて」
なまえ@にビビっているタイミングを見計らって、私の腕を拘束している男を突き飛ばして得意ではないが回し蹴りを食らわせた。男がロッカーに叩きつけられている隙に私もなまえ@方へ行く。男がナイフを持っているので、どう近づこうか悩んでいる時にシャワー室のドアを蹴り開ける音が聞こえた。・・・やばい、最悪だ、このタイミングで。
「おい、大丈・・・!!!」
「アンデッドか!?・・・っ!!!」
目が合った瞬間に固まる靖友と東堂。最悪だ、よりによってこの二人が来るなんて。こんな格好で、この男達・・・殺られる。
「テメェ!!!」「何をしている!?」
二人は一気に此方に来て、ナイフを持って唯一立っている男に掴みかかろうとするが
「動くな!!!」
私達を人質にして来ないように靖友と東堂に支持する。けど、そんなの聞かないよ、この二人は。瞳孔開いてかなりキレている二人にはそんな声は届かない。二人が男に殴りかかる瞬間に私は男の腕から逃れた。瞬間、骨が折れるような音がして男が地に伏せた。それでもこの二人はまだ止まらない。ロッカーの下で震えながら一部始終を見ていた男も、なまえ@に血塗れにされた男もボコボコにされている。
「尽八、もういいから!!」
「いい訳あるか!!!何をしているんだお前は!この傷は何だ!?誰にやられた!!!」
いつもの東堂からは想像出来ないほど、自我を失ったかのように怒鳴り散らす東堂。これを着ろ、なんて言ってなまえ@に服をかけるのを見ると自我は失っていないんだろうけど。比べて靖友は怒鳴り散らさずに黙々と男を殴り続けていた。その手を止めても、一瞬だけ私を睨んで自分の着ている服を脱いで私にかけて再び殴り出す。逆に怖い。
「おいどうし・・・っなにやってんだ!?」
「おいやめろ!!荒北!!東堂!!」
私達と男達、そして靖友と東堂を見て一瞬で察したんだろう。騒ぎを聞きつけて上から降りてきた新開と福富、真波と二班の面々が数人がかりで靖友と東堂を止めた。
「おいやめるっショ東堂!!死ぬぞ!!」
「こいつが死ぬ?それは嬉しいな!!おい巻ちゃんその手を離せ!!」
「落ち着け東堂!!」
「オイ新開、手ェ退けろ!!」
「靖友!!やめろ!!」
「落ち着け荒北!!」
東堂は田所、靖友は福富が押さえつけてなんとか相手から二人を離す。二人は暴れるが、巻島、田所、金城、福富、新開、泉田がなんとか外に連れ出した。
「・・・やばいね、なまえA」
「まぁ仕方ないんじゃない。・・・でも、私達まで怒られる」
目の前にはボコボコにされた男達。生きているのか死んでいるのかさえ分からない状況だ。
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫、未遂。けど、追い出す理由できたから一件落着かな?」
「一件落着じゃないッスよ!」
「怪我してますよね?」
なまえ@の口が切れていることを気にした真波に傷を見ててもらうことにした。私は首に小さい傷ができただけなので、真波に絆創膏を貰いその場を後にした。
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