「ありがとうございます・・・」
老人の方が親切にお礼を言ってきた。他の人は助けてもらって当たり前みたいな顔をしている人が多いけど、やはり年配の方は常識人だ。
「一応保健室にあるだけの布団持って来たけど、年配の方も子供もいるとなるともう少し欲しいね」
「それくらいなら、少し車にあったと思う。ここにも探せばあるんじゃない?タオルとか」
「さすがなまえ@!取り行ってくる」
「私も行くよ」
「「俺も行く」」
「・・・」「・・・」
いきなり話に入ってきた尽八と荒北。いつから聞いていたんだろう、この二人。結局四人で車に行くことになった。
「途中にある倉庫でマットも欲しい」
「なにに使うんだヨ」
「年配の方、コンクリートの上で寝かすの可哀想でしょ」
「荒北は気配りが出来ん男だな!そんなんだから・・・」
「っせ!!!」
外に出れば、もう日が沈んできていた。正門の前には何体かアンデッドがいて必死に入ろうとしている。
「一応確認したけどこの敷地内にもまだいるかもしれないって考えると少し不安だね」
「大丈夫だろ、フクチャンが言うことは正しいから」
「お前はフクが絶対だな」
「フクチャン大好きだもんね、靖友」
車の中には結構ひざ掛けや毛布が積んであった。なまえAがいざという時の為に積んでいたらしい。流石。保健室にあった分も足せば、二組で使えばなんとか足りるかな。そのあと倉庫でマットも見つけてから戻った。
「・・・そういえばさ、なまえA」
「何?」
「様子、おかしいよね。あの二人」
私が視線を向けたのは、音楽室で怯えていた女の人二人。年齢は見た感じ未成年、18〜19歳といったところだろう。ここに来てからもずっと端で膝を抱えて俯いている。そしてあの手首についている痣。
「・・・率直に言うけど」
「うん?」
「あの二人、ここ二日三日で相当酷い目に合ったみたいね」
「それは皆そうじゃ・・・ーーああ、そういうこと」
アンデッドじゃなく、あの男三人に酷い目に合わされたということか。精神的にも肉体的にも。
「部屋の匂いですぐ分かった。靖友も酷い顔してたしね」
「まさかこんな時にそんな事する人いるんだね」
「こんな時だからこそ、なのかもね。ろくな死に方しないよ」
なまえAは鋭い目で音楽室にいた男達を睨んだ。
「まぁ、流石にもうやらないでしょ」
「・・・だといいけどね」
18時を回ったくらいに、一時期落ち着いていた小野田くんの容態が急変した。真波も尽くしたが・・・
「小野田・・・」
「冗談ッショ・・・」
「小野田くん、嘘やろ・・・」
最後に皆にお礼を言って、息を引き取ってしまった。泣き崩れる鳴子くんや今泉くん。そして涙を耐える金城と巻ちゃんと田所。ただ眺めることしかできない私達は静かに部屋を出て行った。
「俺の腕が悪かったせいで坂道くんは・・・」
「真波、自分を責めるな。お前は十分良くやった」
「・・・少し、一人になりたいです」
真波がそう言うなら、と私達は水泳場へ戻った。
「フクチャン、小野田チャン俺達がやった方がいいンじゃなァイ?あの様子じゃ、始末できなさそうだぜ」
「・・・金城は、そこまで弱い男じゃないからな・・・なんとかするだろう」
パァンッ
「・・・そーだネ」
虚しく響いた一発の銃声。きっとこれは、小野田君を始末する為の一発だ。金城は・・・金城班は強い。仲間がアンデッドになったからって殺さないなんてことはしない。それを言いたかったんだろう、福富は。
「・・・」
「・・・新開?どうしたの?」
「あ、いや・・・」
「・・・」
日が登るまで残り10時間。
to be continude
前 / 次