「薄暗いってのも気味が悪りぃなァ、フクチャン」
校舎の中は少しだけ暗かった。人間がいないってだけでこれだけ寂しく見えるものなのか。自分が何年かまえに見ていた様な光景とはまるで違った。一階は職員室と準備室、保健室を確認したが特にアンデッドはいない。私達は階段を上がって二階へ移動した。
「このまま出てくれなくて良かったのに」
二階には廊下だけでも十はいる。
「俺にやらせてくンねーか、フクチャン」
「やれるか、荒北」
「ハッ、何いってんのォ?」
そう言うと、靖友はニヤリと笑って身体を転化させる。
「俺ァもう腹ペコなんだよ!!」
靖友がアンデッドに近づけば、アンデッドも靖友に集ろうとする。しかし、靖友は両手でアンデッド二体の顔面を掴んでそのまま壁に投げ飛ばす。壁にめり込んだアンデッドはそのままピクリとも動かなくなった。
「あんまりトバすなよ、荒北」
「わーってるヨ!」
鋭い歯をみせて嬉しそうにアンデッドを始末する靖友。転化した狼の姿は、皆恐ろしいというが私はそうは思わない。靖友が一番生き生きしているあの姿、私は好きだ。しかし、東堂の言う様に頑張りすぎるとその分体力を使ってしまう。
「廊下は荒北に任せて、教室を見るぞ」
教室にもアンデッドがいるのか、靖友が始末しても教室からアンデッドが出てくる。
「!!新開!!」
「新開さん!!」
「っ!!」
ザァンッ
一瞬だった。新開が気付かない内にアンデッドが新開に噛みつこうとした。気付いた福富と泉田が声をかけたが新開の反応が遅れる。しかし、あと少しというところで東堂がアンデッドの開いた口から上半分を刀で切断した。
「あ・・・ありがとな、尽八」
「・・・隼人、本当に大丈夫なのか?お前らしくないぞ」
「・・・俺らしくない、か。悪いな、尽八」
おめさんたちに迷惑はかけない、そう言って教室へ入った新開は何体か中にいたアンデッドを撃った。
「・・・行こう、なまえA」
暫く新開を見つめていた私に、なまえ@は声をかけて背中を押した。七人で手分けしてアンデッドを始末して、上に上がろうとした時だった。
「うわあァアアアアア」
「っ!!!」
「この声・・・小野田チャン!?」
「金城班に何かあったのか・・・?」
ザザッ
『聞こえるか、福富』
「!金城、何かあったのか?」
突然、いままで使っていなかったトランシーバーが鳴って金城から連絡がきた。
『厄介な事が起きてな・・・ーー小野田がやられた。応援を頼みたい』
「ああ、いま行く」
私達は急いで階段を登って、金城班のいる場所へ向かった。
「小野田くん!!」
「ハッ、俺ァやらねーからァ」
「私もやりたくないよ」
金城班の目の前にいたのは・・・アンデッドと化した五匹の犬。噛みちぎられたのか、小野田には右膝から下の脚が無かった。
「真波、容態はどうだ」
「ショック状態です。早く血を止めないと・・・」
ビリッ
「しっかりしろ!!小野田!!」
巻島が自身の服を破って小野田の脚を服で結んで締め付ける。・・・しかし、もし仮に助けられたとしても小野田はもう・・・感染している。
「くるぞ!!!」
こちらに向かって走ってくる犬のアンデッド。
「行くぞ荒北!」
「俺ァやらねーヨ!!!」
「これはもう化け物これはもう化け物これはもう化け物これはもう化け物これはもう化け物これはもう化け物」
「なまえ@うるさい」
動物好きな靖友となまえ@にはこの化け物に銃を向けるのでさえ厳しいらしく二人は動こうとしない。私だって嫌だ。しかしいまはそんな事を言ってられない。
「一匹は俺がやる!!」
田所が一匹のアンデッドに体当たりをするとアンデッドはそのまま廊下の窓ガラスを割って下に落ちていった。
「応援いらなかったンじゃなァイ?」
「ベテランは俺達しかいねーんだよ!」
パァン パァンッ
金城がもう一匹の脚を狙って、動きが鈍った瞬間頭を撃ち抜いた。
「残り頼めるか!金城!」
「僕が行きます金城さん!!」
泉田はアンデッドに向かって走っていくと、そのままの勢いで一匹のアンデッドの頭を回し蹴りで蹴り飛ばし、もう一匹のアンデッドは肘打ちして壁に突き飛ばす。回し蹴りしたアンデッドは頭が潰れて動かなくなったが肘打ちした方は動こうと体制を立て直した。しかしそれもすぐに泉田の手によって動かなくなった。
「なまえA!!」
「大丈夫」
靖友に名前を呼ばれて気がついたが、目の前に残り一匹のアンデッドが迫っていた。大きく口を開いて私を食べようとするアンデッド。私はその口の中を斜め上に銃を向けて・・・撃った。
「田所は小野田を運んでくれ。行くぞ」
to be continude
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