「今日は11月11日だな!」
学校に来てすぐに、隣の席の東堂がそんなことを言い出した。私も荒北も新開も、それが何か?状態である。
「お前達今日が何の日か分からないのか?」
「お前らの記念日ィ?」
「ううん、違う」
「分かったぞ尽八!ポッキーの日だ!」
新開の言葉に東堂の表情が一気に明るくなった。そして鞄からポッキーを取り出す。
「そう、今日はポッキーの日だ!そしてそんな日は何をやるか知ってるか!?知らないだろうな!教えてやろう!ポッキーゲ」
キーンコーンカーンコーン
「おい、授業始まっぞォ」
「また後で聞くよ、尽八」
予鈴が鳴って、荒北と新開は自分の席へと戻って行った。結局、東堂が何を言いたかったのかは分からない。ひとつ言えるのは・・・東堂、お菓子食べたっけ?
「で、どうしたの東堂」
先程の東堂の話が気になっていた私は、授業が終わってからさっそく東堂にその話をふった。
「聞いてくれるのか!?」
「なんでそんな嬉しそうなの?」
「名前!俺はこれがしてみたいぞ!」
そう言って、私に自慢気に見せたのは雑誌の一部。
「カップルで・・・ポッキー、ゲーム?」
「そうだ!俺はこれがやりたいんだ、どうだ?やらな」
「え、やりたくない」
「えっ」
「恥ずかしいもん、やりたくない」
途端、東堂のテンションは一気に落ちた。泣かないだろうけど、いまにも泣きそうな顔をしている。
「オイオイ、その位やってあげてもいいんじゃなァい?」
「そうだぞ苗字。尽八が可哀想だ」
「・・・・・・」
東堂のフォローをしているのか、二人がやってやれと言って来る。一方、東堂は相当ショックだったのか顔を机に突っ伏したまま動かない。
「東堂ー」
「・・・」
「ごめんね東堂」
「・・・」
意地でも顔を上げない東堂。荒北と新開が「やっちまったなァ?」とか「尽八可哀想に」とか言って私を煽って来る。・・・仕方ない。
「東堂・・・やってあげるよ」
「っ!ほ、本当か!?」
その一言で東堂は飛び起きた。なんなの、計算なの?
「・・・うん、でも二人が相当見たいらしいから人前では絶対やらないからね」
「ああ!」
「つまンねーのォ」
「仕方ない、靖友俺とやろうか」
「やらねーヨ!!!」
放課後、部活が始まる前に私達は屋上に来ていた。寮に帰ってからでも良かったけど、東堂が早くやりたくて仕方なかったらしい。
「本当に良いのか?」
「別に初めてのちゅーじゃないんだから、いいよ」
「わ、分かった!」
「早くしてよ、恥ずかしいから・・・」
そう言えば、東堂は持っていたポッキーの袋を開けて、一本取り出して口に咥えた。勿論、東堂はチョコがない方から。
「い、いい?」
「ん」
東堂が嬉しそうに待っているので、私は東堂の頬を両手で包んでから東堂の反対側のポッキーを咥えた。そして、一口、二口とお互い食べ始める。
「・・・っ」
「・・・」
あと少し、そう思うと何故だか恥ずかしくなって、私はそれ以上食べることが出来なくなった。
「・・・っん」
少しだけ口角を上げた東堂は、いきなり私の後頭部に手を回して固定し、最後の一口を食べた。私と東堂の距離が無くなり、ポッキーも無くなってしまったのに東堂は唇を離そうとはしない。そしてーー・・・
「っん、・・・っは」
いきなり私の口内に舌をねじ込んで、私の舌を絡めとった。
「ゃ、・・・ふぁっ」
さんざん口内を堪能した後に、ゆっくりと唇を離した東堂は嬉しそうに、そして少しだけ色っぽく笑った。
「はぁ・・・っ」
「ご馳走様」
「いきなり、しないでよ」
息を整え、そう言って睨めば嬉しそうな顔をする東堂。こいつはSなのかMなのか分からない。
「来年もまたやろうな!」
「嫌だ」
「即答!?!?」
とか言いつつ、結局東堂に頼まれたらやってしまうんだろうな。これが惚れた弱みと言うやつなんだろう。
そのあと散々、荒北と新開に弄られた。東堂は嬉しそうだったけど。
end
東堂くんとポッキーゲーム
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