「東堂様ァ!!!」
「東堂くぅーん!!!」
「受け取って〜!!」

覚悟はしていたけど、朝から昼まで東堂はずっと呼び出されていた。去年もそうだったんだけどさ、バレンタインくらい時間とってくれても・・・って、東堂は私が作ってきたこと知らないか。

「と、東堂くん・・・ちょっといい?」

うわあ、これはマジなやつだ。ファンクラブと違って恋心。私と付き合っていると知っていても、告白は絶えない。喧嘩をすればチャンスとばかりに皆告白をしにいったりする。頬を染めて見つめる女の子に、ファンクラブの子達に向かった笑顔では無く優しく笑いかける。東堂も分かっている。あの子は自分を好きなんだと。だから優しく笑う。・・・けど、私はそれを見るのがあまり好きではない。私以外の女の子に優しく笑うのは、見たくない。東堂自身も、大好きな女の子からの告白を断るのは苦手だ。だからいつも何故か自分が傷ついた顔をして帰って来る。今だってそう、断って帰って来た東堂は空元気だ。一番傷ついているのは女の子なのかもしれないけど、それでも私は東堂を手放す気なんてない。

「気をつけて帰れよー」

いつの間にかHRも終わって皆は席を立っていた。そんな気になれないけど、渡すなら今かな。

「東堂」
「・・・名前」
「ちょっといい?」

移動したのは裏庭で、ここは生徒がたまに溜まり場として使ったりしているが、放課後には誰も来ない。

「はい、これ」
「・・・こ、これ・・・手作りか?」
「うん」
「わざわざ、作ってくれたのか?」
「手作りじゃないと受け取らないって我儘言ったの東堂でしょ。いらないなら返し」
「いる!!!」

手作りと分かった瞬間の東堂はみるみる笑顔になって、いつものキメた笑顔では無くて緩み切った顔、私しか見れない顔をしていた。

「・・・昨日はすまんっ!!あんな事、言うつもりは無かったのだが・・・」
「いいよ。東堂の事だから、ずっと楽しみにしててくれたんだよね?私もごめんね?不器用だからってあんな事・・・」
「名前・・・抱き締めてもいいか?」
「なにそれ。・・・いいよ」

いつもはそんなこと聞かずにすぐに抱き付いてくるのに、改まってどうしちゃったんだか。東堂は優しく私を抱きしめる。

「ずっと抱き締めたくて仕方なかった」
「私も、ずっとくっつきたかった」
「本当か!?」
「嘘だけど」
「何ィ!?」

私も東堂の背中に腕を回して抱き締めれば、東堂は抱き締める力を強くした。

「これ、部屋に飾る」
「え?食べてよ」
「ならんね!勿体無くて食べられる気がしないな」
「腐ったらもう一生なにも作ってあげないから」
「食う!!!食うからそれは勘弁してくれ!!!」

今年はちょっと歪だけど、来年はもっと上手く作れる様になって、再来年はもっともっと上手くなるから。

楽しみにしててね、東堂。



end.



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