待ち合わせ場所から、既に心臓がうるさかった。それはきっと荒北も同じだろう。・・・好きな女が自分達と出かけるのにお洒落をしてきてくれた。それだけで嬉しい。普段は見れない姿に一瞬見惚れてしまった。そして今、目の前には泣いている苗字@。絶叫が嫌いとは言っていたが、まさかここまで苦手だなんて誰も思わなかっただろう。いつも元気な苗字@からは想像つかないからな。荒北と苗字Aに飲み物を頼んで、苗字@の隣に座った。
「大丈夫か?」
「もう大丈夫だよ。ありがとう」
「まさかあそこまで苦手だったとはな。気づいてやれなくて情けない」
「あはは、いいよ別に!私も克服したかったんだよね、絶叫」
いつもの様に笑う苗字@のまつげにつく涙を、何気無く指で拭いてやれば驚いた顔をしてオレを見る苗字@。・・・って何をしているんだオレは!!!
「す、すまん!!」
「え、あ、いや!!あ、ありがと!!」
今のオレは顔が赤いだろう、苗字@も顔が真っ赤だ。
「飲み物買ってきたヨ」
「お、おお、荒北か!!」
「あ?ンだよオメー顔が・・・」
「あああああ!!次はアレに入らないか!?」
話をそらす為に適当に指差した場所・・・それはお化け屋敷だった。
「オレは別にいーけどォ・・・」
「私も平気」
「私も」
「なら行こうではないか!!」
意外にも苗字@も#name4#もお化け屋敷は平気らしく、すぐに入ることが決まった。
「入ってみたかったんだよね、ここのお化け屋敷」
「怖いって有名だからね」
順番待ちをして、入り口へ入ればまずDVDを観させられ、記念撮影。
「よ、よし。行くぞ」
「なァにビビッてんだヨ東堂」
「ビビッているわけないだろう!お前も何だその強張った顔は!!まさか怖いのか?」
「ンなワケねーだろ!!!」
「「(怖いなら入らなきゃいいのに)」」
薄暗いなか、少しずつ進んで行けば突然出てくるおどかし役。流石に少し驚いたが・・・バレてはいないはずだ。
ぴとり
「む?」
「ンだヨ」
「いや、何でも」
ぴとり
「・・・荒北、さっきからしつこいぞ。わざわざ腕を掴まんでも・・・!!」
「?東ど・・・!!!!」
「あ?ンだヨおめーら・・・!!」
「・・・やばい」
オレ達は一斉に走り出した。オレの腕にしがみついていたのはお化け(偽物)で、それを振り払って必死に逃げた。咄嗟にオレは苗字@の手を掴んでしまって、荒北も#name4#の腕を掴んでいたのを焦りながらも見た。もうすぐ出口。
「・・・あービビッた」
「オレはずっと腕を掴まれていたのか」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「はぁ・・・二人とも、なんで、そんな体力あるの・・・っ」
走って息が上がっている苗字@と苗字Aに対してオレと荒北は全く息が上がっていなかった。高校の時部活やってたからな。今でも運動するし。
「東堂良かったね、あのおばけ役の人顔赤くしてたよ」
「何だと!?いくらおどかし役だとしても女子の腕を振り払ってしまうなんてな・・・」
「いいダロォ、仕事しねーで客にくっつくお化け役がいるかヨ」
「そろそろお昼にしない?お腹すいた」
「私もー」
ちょうど昼時だということで、昼飯にしようと近くのレストランに入った。昼飯を食べた後もまた別のアトラクションに乗って、夕方まで時間を忘れて遊んでいた。苗字@も、少しずつ絶叫マシンに乗れる様になったが、涙目にはなっていた。
「・・・東堂ォ」
「どうした荒北」
苗字@と苗字Aがクレープを買っている間、ベンチで待っていたオレと荒北。荒北は真剣な顔で苗字Aを見ながらオレの方を見ずに言った。
「オレ、今日すっから」
「するって・・・まさかお前・・・」
「おめーも頑張れヨ」
「・・・」
荒北は今日、苗字Aに告白するつもりだ。お前も頑張れって・・・オレは好きって確定したわけでもない。好き、なのか?分からない。
「まだ迷ってンのォ?」
「・・・ああ」
「好きなンダロォ?オレから見ても分かるヨ」
今日最初会った時も心臓がうるさかった。絶叫マシンに乗って泣いた苗字@を、誰よりも慰めたいと思ったのも、そばに居てあげたいと思ったのも、あれは好きだからなのか?
「オレも今日中にハッキリさせるよ」
to be continude
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