「ちゃんと列になって、隣の人と手を繋いで歩いてねー!!」


名前@の声に元気良く返事をする園児たち。遠足を楽しみにしていたみんなの目はキラキラしている。鳴子くんなんて大きな声で歌を歌っているし。


「ったく、山登りなんてめんどくせェ」

「山登りっていっても、途中までバスで来たんだからすぐ着くよ」

「アイツらグズッたら俺達がおんぶしなきゃいけねーンだヨ」

「頑張って」


めんどくさいなんて文句をいいながらも、列が乱れるとだめだよとか言いに行く荒北。ヤンキーみたいな顔してるけど、荒北のことを怖がる生徒はいない。道端のオバちゃんが怯えるくらいなのに。


「おれ、いきてりゅ!!!」

「そこでかんだらあかんやろ!」

「大事な台詞が台無しではないか、真波」

「おれ、いきてる!!」


どすっ


「おいこら!胸を叩くな!」


山が好きな真波くんはいつも以上にテンションが高い。胸をドスドス殴ってるけど大丈夫なのかなあれ。小野田くんも、山が好きなのか嬉しそうにみえる。


「せんせー、もうつかれた」

「あとちょっとだろォ?頑張れヨ」

「あるけないもん」

「ったく・・・ほら」

「やだやだ!!じんぱちせんせ、おんぶして」

「東堂かヨ!?・・・おい、東堂」


一人の女の子、美桜ちゃんがその場に座り込んでグズりはじめて、その様子に後ろにいた荒北が気づき近寄るもおんぶを断られ東堂がイイとワガママを言い始めた。女の子園児はだいたい東堂だもんなぁ、仕方ない。


「ドンマイ、荒北」

「ッセ!!」


美桜ちゃんは東堂におんぶされて凄く嬉しそうだけどね。


「そろそろつくよー」


先頭にいる名前@がそう言うと、見えてきた遊具や芝生。ここの山のてっぺん付近には子供の遊ぶところがある。


「シート敷いてお昼ご飯にするよー!お弁当食べ終わった子から遊んでいいからね!でも先生が見える場所でしか遊んじゃだめだよ?遠くに行かないでね」


園児達は急いでシートを敷いてお弁当を食べて遊びに行ってしまった。私達もお弁当を食べながらきちんと園児達を見る。


「アイツもう元気に遊んでンじゃなァイ」

「あいつって・・・美桜ちゃん?」

「あー・・・東堂に甘えたかっただけなんじゃない?ほら、美桜ちゃんってお母さんも東堂のファンだし」

「さすが俺だな。親御さんまでも魅了してしまうとは!」

「「「はいはい」」」

「おい!?」


いつものペースの東堂の言葉を聞き流して、食事を済ませた私と荒北はその場を去った。


「名前Aせんせ!ありゃきたせんせ!みてて!」


小野田くんが真波くん一緒に滑り台の上から荒北と私を呼んで見ている様にと言ったので、私と荒北はその場に止まれば二人はきゃーと叫びながら一緒に滑り台を滑った。


「はやいでしょ!?」

「すごい早かったよ」

「やったー!」

「怪我しない様に滑れヨ」

「「はーい」」


二人はまた滑り台に登っていってしまったので、その場は荒北に任せて私は他の園児をみる。泉田くんは山に来てまで筋トレしているし、相変わらず鳴子君と今泉くんは何か争っているし。女の子の園児はお昼を食べ終わった東堂のところ、福富くんは花をみている。福富くん可愛いなぁ。巻島くんは名前@に連れられてブランコ。新開くんは今だに大量のお昼ご飯を食べている。


「・・・いい天気」


特に悪さをしそうな子も、遠くに行きそうな子もいないし平和だなぁ。眠たくなってきた。


「苗字A」

「なに?」


ぼーっと園児達をみていると、いつのまにか滑り台に飽きたであろう二人を連れて荒北が目の前まで来ていた。


「苗字Aセンセーが良いってヨ」

「ありがとう二人とも。なにして遊ぶ?」


荒北から二人を預かって、二人が歩いていく方についていく。


「せんせ、ぼく、名前Aせんせーにおはなのかんむりつくりたいです!」

「先生にくれるの?ありがとう」

「じゃあおれ、名前@せんせーにあげよー」


二人に冠の作り方を教えながら私も冠を作る。これ、誰にあげよう。園児一人にあげても取り合いになっちゃうし・・・荒北にでもあげよう。


「みんなー!そろそろ帰るよー!先生の所に集まってー!」


名前@の声で他の園児達は急いで名前@のところへ向かって行った。私も冠を完成させた二人を連れて集合場所に向かう。


「名前Aせんせ、どうぞ!」

「わぁ、ありがとう小野田くん。上手に出来たね」

「おうじさまにつけてもらってください!」


王子様・・・つまり恋人?残念ながら私に恋人はいない。ていうか5年くらい好きな人すらできない。周りは結婚していってるし、そろそろ欲しいとは思うけど。


「名前@せんせー!」

「ん?どうしたの真波くん」

「はい、あげる!」


名前@の元に走って行った真波くんは、作った冠を名前@にあげる。


「え、すごい!真波くんが作ったの?」

「凄いな真波!俺でも作れんよ」

「可愛いー!ありがとう真波くん」


名前@は真波くんに貰った冠を頭につけて喜んでいた。周りの女の子は羨ましそう。真波くんモテるし。私も自分で作ったの、荒北にあげよ。


「荒北」

「あ?」

「あげる」

「・・・はァ?」


冠を渡せば、意味が分からないという様な顔をされる。まぁ、それはそうだ。男に冠なんて普通渡さない。


「小野田くんと真波くんに教えながら作ってたんだけど、他の子にあげたら羨ましがるでしょ?だから、はい」

「俺より東堂の方が似合うンじゃなァイ?」

「あいつにあげたら鏡の前から離れなそうだから。ほら、あげる」

「ったく・・・アリガトネェ」


渋々冠を受け取った荒北は、照れ臭そうにお礼を言った。・・・ツンデレ?


「それ何?」

「小野田くんから貰った」

「ふーん・・・貸して」

「え?・・・はい」


小野田くんから貰った冠を荒北に渡すと、そのままそれを両手で持って・・・私の頭の上に乗せた。


「・・・え」

「乗せたの見せてやれヨ、小野田チャンに」


少しだけ笑ってそういう荒北に、胸がドキッとしてしまった。こんな感覚、久しぶりすぎて暫く動けずにいると荒北が気になったのか私の顔を覗き込んできたので何でもないと言ってその場を離れた。


「あ!名前Aせんせーにあってますよ!」

「え?あ、ありがとう!」


小野田くんに、王子様につけてもらったんですか?って言われたときはどうしていいか分からなかったけど、たぶん、ずっと私の顔は真っ赤だったと思う。



to be continude


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