「明後日の遠足の説明するからなァ」
園児達を教室に集めて明後日行われる遠足についての説明をする荒北と名前A。遠足といっても、近くの山で遊ぶだけだけど。
「お母さん達にも言っておくけど、皆お弁当と水筒はいつも持ってきてるから大丈夫だと思うけど、忘れないようにね。シートも持ってきてね」
「せんせー」
「どうしたの?」
いままで黙っていた新開くんが手を上げて質問する。
「おやつもっていっていいー?」
「あー・・・少しだけならいいヨ」
「それはこまるぜ、せんせー!」
「困るのおめーだけだヨ」
残念そうな顔をする新開くん。きっと歩きながらでも食べたいのだろう。
「おやつはなんえんまで?」
「100円」
「そりゃないぜ!!!」
残念そうな顔をする新開くんは500円じゃだめ?とか荒北に聞いている。どんだけ食べるんだよ五歳児。
「名前@せんせー」
「ん?どうしたの真波くん」
後ろで園児達と座っていた私に話しかけてくる真波くん。
「おやまのぼるの?」
「おやま?登るよ」
「さか、ある?」
「??あるよ?」
「おれ、さかすきなの!たのしみだなぁ」
なんだこいつ、可愛過ぎか。真波くんは嬉しそうに笑っている。癒される。でも、坂を好きな三歳児っているか普通。
「楽しみだな巻ちゃん!」
「・・・ショ」
相変わらず巻ちゃんは無口だなぁ
「名前A、相変わらず絵が下手だね」
「殴られたいの?」
園児と画用紙に絵を描く時間、名前Aの絵を見て思わず笑ってしまった。名前Aは頭いいのに・・・不器用だ。昔よりはマシになったけど、やっぱり下手くそ。高校生までは園児と同じレベルの絵だった。
「これ、なに書いてるの?」
「小野田くん。書いてほしいって言うから」
「それ小野田くん見たら泣いちゃうんじゃない?っいだだだごめんなさい」
私達が騒いでいるのを聞いて、絵を回って見ていた荒北と東堂まで名前Aの絵を覗き込む。
「ップ・・・こ、これは可哀想だろォ、小野田チャン」
「え、絵心込めて描いたら良くなるぞ?」
二人とも笑ながら言っているので、私同様足の指を踏まれていた。結局、名前Aの絵は私が手直ししてあげた。
「せんせー、かけました!」
「ありがとう、上手だね小野田くん」
「えへへ・・・」
うわあ、名前Aの絵より坂道くんの絵の方が上手なんて言えない。
「おかしのいえ」
「すごいです!しんかいさん!」
新開くんはお菓子の家を描いたらしい。それを泉田くんがべた褒めしている。
「みてや先生!ロケットやで!」
「イイんじゃなァイ?」
「俺のも」
「仲いいのォ?悪いのォ?」
「・・・」
「フクチャン凄いネ!」
相変わらず争っている鳴子くんと今泉くん。ロケットの絵はよくできている。そして相変わらずの福富くんべた褒めの荒北。福富くんの絵は猫。
「とうどうせんせーショ」
「あ、う、まくかけているな巻ちゃん!」
「う、っわー!そっくりだね!」
巻ちゃんの描いた東堂は酷くブスだった。東堂の顔が引きつっているけど大好きな巻ちゃんの為に突っ込まないでいたので、私が口を出して上げたらキッと睨まれた。こわい。
「名前@せんせーかいたよ」
「えー嬉しい!ど、れ・・・」
「これ」
真波くんの絵は山と・・・棒人間。どうやら棒人間は私らしい。
「よくかけているな真波!」
「とうどうせんせーもおやますきだよね?」
「俺も山が大好きだな」
東堂は私が棒人間なことなんて気にせずに山を褒めだした。なにかと好みが合うなぁ、このふたりは。
「む?どうしたのだ?」
「なんでもなーい」
俺の美形に見惚れていたのか!ワッハッハッ!とか言っているのをスルーして、他の園児たちの絵を見て回った。
to be continude
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