「せんせい」
「ん?どうしたの巻ちゃ・・・え、なにそれ」
「クモっショ」
みんなが外で遊んでいるのをみていると、後ろからちょんちょんとエプロンを引っ張られた。なんだろう、と見てみればそこにいたのは巻ちゃん。手にはなにか持っている。気になって尋ねてみればその中には蜘蛛がいるらしい。
「巻ちゃんって虫触れるの?」
「クモはすきだから」
とうどうせんせいにもみせてくるっショと言って巻ちゃんは東堂のところへ向かって行ってしまった。・・・東堂って虫とか平気なのかな?飛び退いてビビりそう。面白そうだからついていこう。
「とうどうせんせい」
「む?なんだね巻ちゃん」
「クモっショ」
そう言って巻ちゃんは東堂の顔の目の前で手を広げる。巻ちゃん、そんなことしたら東堂叫んで逃げちゃ
「凄いな巻ちゃん!ていうか虫触れたのか?」
・・・う・・・え?
「くもだけさわれるっショ。名前@せんせいにもいわれたっショ」
「そうかそうか!巻ちゃんは蜘蛛が好きだからな」
虫平気なの?意外だなぁ
「でもな巻ちゃん、そろそろ離してやらんと蜘蛛が弱ってしまうぞ?」
「あ・・・わかったっショ!」
東堂が言うとおり、蜘蛛は少しだけ元気がないように見えた。それを知った巻ちゃんは急いで木がある場所へ走って行った。
「東堂って虫平気なの?」
「好きではないな。けど巻ちゃんが見せたがっているのに怖がったりしたら失礼だ」
「・・・ふーん」
なんだかんだ言って東堂も先生なんだもんな、そうは見えないけど。ちゃんと園児たちのことを考えている。少しだけ見直した。少しだけ。
「クモおいてきたっショ」
木に蜘蛛を置いてきた巻ちゃんはまた私達のところに戻ってきた。偉いねと褒めれば、少しだけ頬を染めて下手に笑った。
「相変わらず巻ちゃんは笑顔が下手だな」
「しょーがないっショ」
昔からなんだ、この笑顔。
「クモっショ」
ガタ ガタンッ
「え、ちょ、巻ちゃん・・・」
説明しよう。いまは皆で粘土で色々なものを作っているんだけど、その最中教室の端に蜘蛛がいたらしく巻ちゃんがそれを捕まえて私と、よりによって名前Aのいる場所まで持ってきた。察していただいたでしょう、そう、名前Aは虫が苦手である。つまり、いまの物音は名前Aが飛び退いて座っていた椅子が倒れた音。
「名前Aせんせい、クモきらい?」
「え、あ、い、いや、べっ」
「喋らなくていいよ名前A」
隣で荒北が爆笑している。そりゃあいつものクールな名前Aがこんなになったら誰でも笑ってしまう。正直私も笑いたい。
「名前A先生はちょっとだけ虫さんが怖いんだ、巻ちゃん」
「こんなにカッコいいのに」
「うん、かっこいいね。巻ちゃんは優しいから外に離してあげられるかな?」
「わかったっショ!」
そう言って巻ちゃんは外に蜘蛛を離してあげた。
「お、おめー、なンだヨあのビビリ方・・・っ」
「確かにあの驚き方・・・ぶふっ」
「う、うるさい」
顔を紅くしながら、それだけ言って名前Aは園児たちのところへ言ってしまった。
「可愛い所あンじゃねーのォ」
「ちょっとキュンとしちゃった?」
「あ゛あ!?」
元ヤンで噂の男はやはり怖かった。
to be continude
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