IH 二日目
「ご苦労だったな、一日目。特に泉田、東堂、荒北の仕事は十分な活躍だったと、俺も、そして周りも評価している」
お風呂を済ませたあと、インハイメンバーとマネの私でミーティングが行われた。
「みんなかっこ良かったよ。お疲れ様」
「ハッ、俺は納得いってねーけどなァ」
「いや、十分だ。一位はとれた」
「ブッチギリでとりたかったんだよ俺は!」
「それは三日目にやればいい。荒北と、泉田、東堂は明日の前半は脚を休めろ。厳しい戦いになるが、大丈夫だ。フレッシュな男を一人残しているからな。・・・やれるな?新開」
「寿一。一日目、俺は何もしてねーんだ。やれるさ。俺の脚は満タンだぜ」
「ウサ吉の為に頑張ってね、新開」
「燐、俺にはないのか!?」
インターハイ二日目。
『選手達が位置につきました!間も無くインターハイロードレース男子二日目、スタートします!』
パァンッ
合図が鳴って、昨日一位を獲得した福富と金城と御堂筋は飛び出した。そのあとに続いてみんな飛び出す。
今日のファーストリザルトは、新開がとってくれるはず。
しかしー・・・
1位 御堂筋翔
2位 新開隼人
・
・
「嘘・・・」
まさかのファーストリザルトは、御堂筋だった。
そして、箱学がバラけたという知らせが入り
山岳リザルトは、御堂筋がとった。
「みんなどうしたんだろ・・・」
私には信じることしかできない。
ゴールまで残り300メートル。先頭は御堂筋。その後ろに福富と金城が張り付いている。
「福富ー!!!!!!!」
「福富主将!!!!!」
250メートル
200メートル
150メートル
100メートル
50メートル
誰も足を緩めたりしない。誰よりも早くゴールを通過するために本気で走っている。
「福富いけぇえええ!!!」
「福富主将ー!!!」
ゴールまで残り数メートル。福富と金城がまたもペースを上げて御堂筋を追い越した
そしてーーー・・・
『フィニッシュは一位二位!インターハイ二日目を制したのは、王者箱根学園エース、ゼッケンナンバー1、福富寿一選手です!』
「おめでとう福富っ」
「よっしゃぁああああああ!!!」
「主将お疲れ様でしたァ!!!」
「お疲れ福富!本当に凄かった!!」
「もう感動ッスよ!!」
福富にボトルとタオルを渡して他の箱学メンバーの元へと向かい、タオルを渡した。
明日は、最終日。
一番疲れ切っていて、出る事自体が厳しい。誰もが一番にゴールを通過したい日。
何があるか分からない。
「みんな、明日も頑張ってね」
「福富さん、二日目一位おめでとうございます!」
「うむ」
「さすがフクチャンだぜ」
「いやー俺のファン、フクに持って行かれてしまうなぁ」
「どこにお前のファンがいたんだよ!?」
「いいんじゃない?私がいるんだし」
「燐!それもそ」
「なんて言うわけねーだろ!!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
調子乗ってる東堂のカチューシャから飛び出している前髪を引っ張ってあげれば満足そうな顔をする荒北と新開。
「聞きましたよ!ゴールした後福富さん、泣いていたって。でも、笑ってもいたそうですね」
「どっちだよ!?分かンねーなァ不思議チャンは」
「ありがとうよ、寿一。お疲れ」
そう言って福富の元まで来た新開は福富とハイタッチをした。
「俺もだ!」
「ったく」
「私も!」
それに続いて私達も福富とハイタッチをする。
「おっしゃァ!!!明日もフクチャンをトップでブチ込んでやるぜ!!」
「ああ。東堂、明日の山は頼むぞ」
「ワッハッハッハ!山は山の神に任せておけ!」
「もう優勝は目前ですね!」
「だが、何が起こるか分からないのがロードレースだ」
「心配し過ぎだぜフクチャン」
「だといいがな。いずれにせよ明日三日目も俺達がとる!!俺達は強い!!!」
「東堂」
「ん?どうした燐?わざわざ俺の部屋に来るなんて・・・ま、まさか」
「変な妄想しないで。部屋、入っていい?」
「あ、ああ」
夜。ミーティングも終えてお風呂も終えてやっとひと息つけるというところで、私は東堂の部屋に訪問した。
「ど、どうかしたのか?」
「・・・明日頑張ってね。福富が言っていたように、何があるか分からない。ほら、あの、京伏の御堂筋くんみたいな子が他にもいるかもしれないし・・・それに、皆疲れ切ってる。私は応援する事しか出来ないから沢山おうえするね」
「ああ・・・ありがとう。それと、俺には燐の応援が一番力になる。沢山応援していてくれ」
「うん、分かった。じゃあ、また明日ね。早く寝・・・どうしたの?」
部屋を出て行こうとしたところで、東堂は私の腕を掴んでそれを止めた。
「あ、ーーいや、何でもない気にするな」
「・・・インターハイ終わったら、まだ夏休みだし二人で遠出しない?」
「!・・・実は、俺もそれが言いたくてだな、その、インターハイで二人の時間というものがとれなかったからな」
「楽しみだね!その為に明日は頑張って」
「ああ!」
「それと・・・」
「ん?」
私は背伸びして、東堂の肩に手をのせ少しだけ上半身を下げさせると、軽く東堂にキスをした。
「ー!!!」
「ずっと、してなかったでしょ?」
東堂は真っ赤な顔のまま口をぱくぱくさせていた。私も人の事言えない位紅いだろうけど。
「おやすみ!」
それだけ言って、私は自室に戻った。
明日は最終日。
三年は最後だ。目に焼き付けておかないと。
to be continude