IH 初日
そろそろトップスプリンターが勝負を始めた頃だろう。私と部員は車で給水ポイントへ向かった。
「泉田、頑張ってね」
ファーストリザルトの獲得は、泉田がしてくれる。・・・そう思っていた。
1位 田所迅
2位 鳴子章吉
3位 泉田塔一郎
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「うそ・・・総北、手強いね」
東堂が言っていただけある。そして次はいよいよクライマーの見せ場。東堂と巻ちゃんの念願の勝負だ。
「総北が最初に来たぞー!!」
「福富さん、こっちです!」
「東堂!!」
私は東堂にボトルを渡した。
「一位とってよ、東堂!!」
東堂は頷いてボトルを受け取り、前に進んだ。
「頑張れ・・・」
東堂と巻ちゃんの最後の山岳リザルト。結果は・・・ーー
1位 東堂尽八
2位 巻島祐介
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東堂が一位を獲得した。
「っ良かったね、東堂!」
いますぐ会って褒めて、お疲れ様と言いたいところだがそうはいかない。これからエースが走り出して、結果が決まるのだから。ここで一位をとっても、エースが一位をとらなくては意味がない。残りは福富と荒北。きっと、あの二人なら大丈夫だろう。
『インターハイ一日目!最初にこのゴールを通過するのはどのチームでしょうか!』
アナウンスが聞こえて、私も箱学を一層応援する。見えて来たのは、福富と金城。そして・・・
「あの子、確か京伏の一年・・・」
総北の今泉くんと何か言い合っていた京都伏見の一年、御堂筋だった。
「箱学ー!!!!」
「総北ー!!!!」
「そのままぶっち切って下さい福富さーん!!!!」
『残り50メートルです!』
40
30
20
10
『ゴーーール!!!!!』
一番最初にゴールに入ったのは
箱学と総北と京伏だった。
つまり、三人同着一位。
「お疲れ、福富」
「福富主将!お疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした!!!」」
「はい、タオル。大丈夫?」
「ああ・・・東堂の所へ行ってやれ」
「え、あ、ありがとう」
この後すぐに来るであろう箱学メンバーに渡す為のタオルを持って、私は急いでゴール付近に行った。
「みんな!!お疲れ!!!」
すぐにゴールをくぐった箱学メンバー達に、タオルを渡す。
「東堂!!!」
「燐!?」
私はゆっくり歩いてくる東堂に思い切り抱きついた。普段私がこんなことをしたことなんてないから、東堂含め周りの面々は驚いている。
「は、ははははは離れろ!汗臭いだろ!燐に匂いが移ってしまうではないか!」
「臭くなんかない!・・・やっと、できたんだね!念願の巻ちゃんとの勝負」
「・・・燐・・・ああ」
恥ずかしそうにしながらも、東堂は私の背中に腕を回した。周りから東堂様ーとか山神がーとか何か聞こえるけどそんな事は気にしない。
「お疲れ様。あと、おめでとう」
「ありがとう」
『一日目、一位の表彰です』
ステージには福富と金城と御堂筋が上がっている。
『史上初です!なんと、3校同着ゴールです!箱根学園、京都伏見高校、総北高校です!三人には花束とイエローゼッケンが渡され、明日はこのゼッケンを付けて走ります!』
このあとは、ファーストリザルトをとった面々が表彰される。東堂、変なこと言うなよ。お願いだから。巻ちゃんとか叫ぶなよ巻ちゃん可哀想だから。
『続いて山岳彰 赤ゼッケン、箱根学園三年生、東堂尽八選手です!』
なんなんだあのポーズは。なんなんだあの片脚は。
『巻ちゃん!!出て来てくれ巻ちゃん!!この山岳彰はお前との戦いで、言わば二人でとったものだ!!共にステージへ!巻島祐介!!我が生涯のライバルよ!!』
「巻ちゃん可哀想」
やはり、東堂は巻ちゃんのことを言った。しかもフルネームで呼んだ。
「燐!巻ちゃんの所へ行くぞ!」
「え、なんで私まで」
「真波、行くぞ」
「え、俺もですか?」
表彰式が終わったあと、巻ちゃんのところへ行くといって聞かない東堂を連れて・・・いや連れてかれて、真波と総北のテントへ向かった。
「坂道くん」
「真波くん!」
「東堂さんが君に会いたいって言うんでさ」
「えっ」
「やはりテントにいたか巻ちゃん!なぜステージへ来てくれなかった?」
「行くわけないショ」
「ごめんね巻ちゃん。ていうか久しぶり」
「ああ、そうだな」
にっと笑えば、ニヤッとした顔で返された。相変わらず不気味な笑顔。
「自転車乗ってないと、特に話すことないね」
「あはははは」
真波と坂道くんとやら、周りに花が飛んでる。癒される。可愛い。
「俺にはあるぞ、眼鏡くん!」
「えっ」
坂道くんを指差してキメ顔している東堂。眼鏡くんてなんだよ。
「やっと会えたな、眼鏡くん!」
「あ、は、はいっ!」
「感謝しているよ、眼鏡くん。巻ちゃんから話は聞いた。君は優れたクライマーだ」
東堂は坂道くんの手をとる。
「生き残れ。君はまだ伸びる。三下と言ったのは取り消そう。良い目だ」
「ええ!?うわああああ!いやいやいやいや、そんなこと!!」
「照れんなや!」
坂道くん可愛い。マスコットにしたい、なんて考えて視線を外せば、私の視界に天使が現れた。
「かかかかかか、可愛いね!名前なんて言うの!?」
「えっ?」
「総北のマネージャーさん?」
「あ、ええと、寒咲幹です!」
「そっかそっか幹ちゃんね!よろしくね!私は渡部燐。じゃあまたねー幹ちゃん!」
「は、はい!」
「明日以降も良い走りを期待しているよ」
「はいっ!」
「・・・明日からは死闘になるだろう」
「!」
「一日目、箱学、総北、京都伏見が同着一位をとった。この意味が分かってるな?つまり・・・あれだけの戦いをして、優劣がつかなかったということだ。だから俺は明日、たとえこの赤ゼッケンを捨ててでも、チームの為に走るつもりだ」
・・・東堂のこういうところ、好きだ。いつもおちゃらけてるのに、真面目。
「眼鏡くん、もし体調が優れないのなら、すぐにでも眠って回復させておくことだ。明日は今日より、更に過酷なレースになる」
そう言って私達は総北のテントを後にした。
「幹ちゃん可愛い。おっぱいでかいし」
「そんなはしたない事を言うな!」
「可愛いとおっぱいは神だよ。ね、真波?」
「無いよりはある方がいいと思いますね」
「真波ィ!?!?」
to be continude