「その顔どうしたの?」

集合場所で与一と待っていれば、頬を張らせた優が来た。

「電柱にぶつかった」
「電柱!?」
「そう、電柱。すっげー目つきの悪い電柱」
「あはは、なにそれ」
「またやったの?いい加減すぐカッとなるのやめれば?」
「ほっとけ」
「遅かったですね」

声がした方を見ればシノアがいて、早速シノアにも顔の事を突っ込まれる優。そのあと月鬼ノ組の研修の為に教室まで向かった。

「失礼しまーす。三人を連れてきましたよ、グレン中佐」

シノアが部屋の扉を開けると中には数人の生徒、一番前には教卓に脚を乗せたグレン中佐がいた。

「ん?ああ、よーしお前ら聞け。今日珍しく担任である俺が此処に出向いてやったのは転入生がいるからだ」
「ちなみに言っておきますが、担任は普通毎日来るものですよ」
「お前は黙ってろ。まぁ何だ、取り敢えずこいつら、百夜優一郎と早乙女与一と百夜名前、一言で言うとアホと弱虫とツンデレだな」
「誰がアホだよ」
「何ですかツンデレって」

グレン中佐の言っている事が理解出来ない。なに、ツンデレって。常識人とかそういうの、無いの?

「事実だろ?いいから自己紹介しろ」
「いらねーよ」
「あ?」
「友達を作りに来たんじゃねぇんだ。ここにいる奴等にも言っておくが、俺はお前らと馴れ合うつもりはねーから!」
「優、何言ってんの?」
「ちょっと優くん!」
「宣言しておく!お前らクズ共が今まで何を勉強してたかは知らねーが、そいつは全部無駄だ!一番いい武器は俺が貰う事になった!以上!」
「以上じゃねぇ!!お前は普通科で一体何を学んできたんだ!?このアホが!あーもういい座れバカが。席あそこな」

グレン中佐に指示され、静かになるだろうと思っていた矢先に今度は生徒と喧嘩し出す優。

「あいつら何なの?確か君月も先月まで普通科で友達作りさせてた筈だよな?お前の監視下で」
「そうですねぇ」
「効果は?」
「ご覧の通りです」
「お前ちゃんと仕事しろよ」
「監視はしてましたよ?今朝も君月士方くんは、百夜優一郎くんの実力を図るために襲ってました」
「で?お前が仲裁した?」
「こっそり楽しんで見ておきました」

シノアはSなのか、ただの悪戯っ子なのか。いや、後者に等しいだろうけど。結局、二人はグレン中佐のひと蹴りで喧嘩を辞めた。・・・というより、戦闘不能になった。

「はいはーい、今日からは一週間後の鬼呪装備適性試験に向けて、能力をジャッジしていきます!ここで結果を出せないと、一週間後の試験すら受けられないから頑張るように!」

「大丈夫かな」
「一番強い武器は俺が貰う」
「あはは、また言ってる」

翌日、勿論担任である筈のグレン中佐は居なくて、代わりに先生を務めるのは女性の先生だった。

「今日は仲間と息を合わせる訓練を評価します。では、二人一組になってください」
「へ?組?ああ、与一!」
「与一さん与一さん!私と組みましょう」
「あ、はい」
「おい!?名前・・・」
「あ、ねぇ。一緒に組んでくれない?」
「え?うん!」
「ちょ、お前ら!?」

シノアと与一、私と知らない女子で組んで、結局残ったのは優と君月の二人。犬猿の仲の二人が組む事になった。まぁ、これはシノアの作戦だったのだけど。

「はいはーい、それでは始めますね!点数とか付けるので、張り切っていきましょう!」

ギィ

扉が開くと軍の式神人形が出てきて周りの生徒達が困惑する。私も手錠で繋がれている女の子と一緒に式神人形から距離を置いた。動きは鈍いので避けるには問題は無いだろう。しかし、避ける前に、式神の動きが止まった。

『君月くん、至急病棟へ!妹の未来ちゃんの容態が急変したそうです!!』
「・・・すみません、気にせず訓練を続けてください!」
「おい待てよ?!そんな場合じゃねぇだろ?お前の妹が危ねぇんじゃねぇのか!?」
「黙れって言ってんだよ。俺はここで成績を出さなきゃいけないんだ!やっとここまで来たんだ」
「妹を見捨ててもか?」
「・・・っうるせぇ、人の事情に首突っ込んでんじゃねぇ。俺は月鬼ノ組に入る。続きをお願いします!」
「バカかお前は!?てめぇの家族が危ねぇんだぞ?家族は死んだらもう、死んだらもう二度と会えないんだぞ!?」

その優の言葉で、君月は妹のいる病棟へ向かった。


「見てたよ優。もっとバカになっちゃったんじゃないかって心配したけど大丈夫?」
「うるせ、見てたんなら助けろよ」
「嫌だよ、怖いもん」

10日後、久しぶりに見つけたグレン中佐にいきなり蹴りかかった優はいとも簡単に避けられた後、頭にかかと落としをくらった。

「頭どうしたんです?授業サボってまた喧嘩でもしてたんですか?」
「ちげーよ」
「グレン中佐は加減を知りませんからねぇ」
「なんだよ、知ってんなら聞くなよ」

食堂の前を通ると、昼食を終えたシノアがさっそく優にちょっかいを出す。

「あははっ、良かったですね。鬼との契約、お許しを貰えたんでしょう?」
「まだ分かんねーぞ。あのバカは気まぐれだからな」
「またまたー、本当は嬉しいくせに!」
「うるせぇな!」
「でも大丈夫ですよ。グレン中佐は口は悪いしすぐに暴力を振るいますが、約束は守る人ですから」
「・・・ああ」

鬼との契約が成立すれば、憎い吸血鬼を殺すことが出来る。きっと優も、そう思っているだろう。家族の復習と、今も人間を襲う憎い吸血鬼をやっと殺せる、と。

「はい、皆さん!今日は先日の筆記試験の答案を返して解散にしまーす。この結果は、これから与えられる鬼呪装備のランク決めにも影響するので、結果を受け止めて次回に活かす様にしてくださいね!」

配られた答案を見ると90点。まぁまぁかな。問題なのは優。あいつは見ての通りバカだから、勉強なんて全く出来な・・・

「うわぁー凄い!これあれじゃないですかー!超人にしかとれないと噂の点数じゃないですかー!あははは!!」
「うわーマジかよこいつ!?マジで0点だぞ!」
「本当だ!すげぇ!!」
「ああああああああ!!!」

他の生徒から取り上げたテストをぐしゃぐしゃに丸めてポケットに包む優。やっぱり優は0点だった。

「てめぇ、いじめっ子過ぎるだろ!」
「いじめっ子とは何ですかぁ?クラスに溶け込めないあなたを人気者にしてあげてるだけじゃないですか〜」
「余計なお世話だっつーの!だいたい、仲間やら友達やらは吸血鬼殺すのにいらねーんだよ!」
「まーたそんな事を。チームプレイ出来ない人は、軍じゃ活躍出来ませんよ」
「出来るね!俺はスーパー活躍するね!」
「子供ですかあなたは?」
「誰が子供だって!?」
「まあまあ二人とも」

言い合いをする優とシノアの仲裁をする与一。

「でも、優くんはあれだよね?子供の頃、吸血鬼の都市に監禁されてたから読み書きは日本語より英語やラテン語の方が得意なんだよね?今回は仕方ないよ!」
「あ、ああ、いや、なんつーか」
「与一、それを言ったら私が出来るのはおかしくなるよね。私、90点だし。優はただのバカなんだよ」
「でもお前計算とかできねーだろ!それに俺はバカじゃ」
「頭にクソでも詰まってんのか?」
「ああ!?」

ポケットに入っていた優のテストはいつのまにか君月の手元にあって、バカにした様な顔をしてテストを見る君月。

「なんだよ、じゃあ偉そうにしてるてめーは何点だったんだよ!?さぞや良い点なんだろうな!?」
「右から、ラテン語呪術英語呪術日本語呪術」

君月が顎で指したところを見れば、3枚共100点とかいてあった。君月は余裕そうな顔してるからいい点数はとれているのだろうと思っていたけど、予想以上だった。

「いやぁ、俺は日本語以外苦手だから帰国子女気取りの優さんにはとても敵いませんよ」
「てめぇは吸血鬼の前にぶっ殺す!」
「上等だ!来いやコラァ!!」
「ちょ、やめなよ!」
「はーい、みなさーん。まだ授業中ですよー」

ガチャッ

「何だぁ?相変わらずクソうるせーなここは」
「グレン様!お帰りになったのですね!」

珍しく教室に来たグレン中佐に一部の生徒は静かになるが、優と君月は気付かずに喧嘩を続ける。

「おい君月待て。グレンのバカがいるぞ。おいグレン!鬼呪装備くれるんじゃなかったのかよ!?いつまでこんな事・・・」
「騒ぐなバカ、俺が喋る。一ノ瀬中佐、説明してもらいましょう。何故クラスを放置して10日以上も失踪したのでしょうか。我々にはもう、鬼呪装備契約の為の実力はあると思いますが」
「・・・へぇ、お前らクズ共に鬼と契約出来る実力があるって?」
「あるに決まってんだろ!君月のクソには無いとしても、俺にはある!」
「てめぇは黙れよ!」
「てめぇこそ黙れ!」

そしてまた、喧嘩を始める二人。私は止めるのも面倒くさくて、仲裁は与一に任せてシノアの隣で二人の喧嘩を見ていた。

「ちょっ、グレン様!?」

先生の焦った声が聞こえて、前に視線を戻せばグレン中佐が鬼呪装備に手をかけていた。

「死んだ奴は、修練足りてなかった自分を恨め!」

グレン中佐が刀を抜いて床に刺した瞬間、一気に息苦しくなった。周りの生徒はバタバタと倒れているが、与一は何が何だか分からない様子で周りを見ている。私は、立っているのがやっとだった。

「はい終了ー」

刀を鞘に収めると、息苦しさは無くなった。

「よーし、じゃあ、今意識がある奴。お前らは見込みアリだ。このまま訓練続けてきゃ鬼呪装備契約の儀に移れる可能性がある。あと立ってられた奴、お前らは優秀だ。すぐに俺の刀と同ランク、黒鬼のシリーズに挑戦させてやる。で、立ってるのは・・・優、君月、与一、名前・・・お前は気絶しろよ」
「あははっ」

シノアは余裕そうな顔をして立っていて、流石だと思った。鬼呪装備、持ってるからね。

「呪符無しで余裕な顔しやがって。流石日本帝鬼軍の当主筋、柊家様ってわけか?可愛気ねぇぞ」
「えーうそー!?こんなに可愛いじゃないですかぁー」
「死ね」
「あはは」
「さっさと行くぞ」

私達は教室を出て、契約の儀式を行う場所へと向かった。



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