「へぇ・・・壁ドンっていうのが流行ってるんだ」

休み時間。SNSサイトのT◯itterをいじっていると、私のタイムライン上に【イケメンの壁ドン集。こんな事されたい!】とかいてあるツイートと画像がリツイートされていた。そのすぐ上に、リツイートした友達のツイートで【壁ドンされてぇー】なんていう内容がかかれている。

「それ今更?結構前から雑誌やテレビで特集されてたでしょ」
「そうなの?私全然テレビ観ないから分からないや」
「かなりキュンキュンするみたいよ。東堂くんにやってもらえば?」

・・・それはいいかもしれない。実際、少女マンガで良く見るイケメンの壁ドン。二次元の中ではかっこいいけどいざ自分がやられて見て本当にキュンキュンするのだろうか。しかも、顔が良くても性格に難ありの尽八にされてキュンキュンするのか。

「・・・てことで、壁ドンして」

早速昼休みに昼食を済ました私は、尽八と、周りに友達がいるのも構わずに発言した。

「壁ドン・・・?いま流行りのあれか?」
「尽八知ってるんだ?じゃあ話は早いね!壁ドンして!」
「うむ、いいぞ!」

私達がオープンなのは日常茶飯事なので、周りも呆れた声を漏らす。私はすぐに壁に寄りかかって準備完了。そして、尽八は自信満々のドヤ顔で私を壁ドンした。あー、これキュンキュン・・・

「ワッハッハ!この美形に壁ドンされたら、ひとたまりもな・・・」
「え、待って、ウザい」
「えっ」

・・・しねぇよ。ウザい顔でウザい台詞吐かれてキュンキュンするわけが無かった。

「あ、予鈴鳴った。また後でね」

私が尽八の壁ドンをするりと抜けて尽八のクラスから出ると、後ろからどっと笑い声が聞こえた。大方あれだけ自信満々だったところをウザいと言われた挙句に抜け出されたダサい東堂尽八を見て笑っているのだろう。私が客観的に見ていたなら、大爆笑できる。

それにしても、少女マンガを見るよりキュンキュンしなかった。理由はきっと尽八のあのウザい顔の所為。これはもう、あの方法であの顔をしてもらって壁ドンをしてもらうしかないな。


「荒北、壁ドンして」

5限が終わってすぐに荒北のいる教室へ行って頼むと、物凄く嫌な顔をされた。

「(教師に)怒られても知らねーヨ?」
「(尽八に)怒られてもいいよ別・・・に、」

ドゴォッ

「・・・いやいやいやいや」

私の顔の真横に、荒北の拳がめり込んだ。・・・ってお前それモノホンの壁ドンじゃねーか。

「それキュンキュンする方の壁ドンじゃないからァァァ!!確かにドキドキするけど!?でも違う意味でドキドキしちゃうやつだから!!私が求めてたんと違うからマジで辞めて心臓止まるかと思った」
「オメーがやれっつったんだろ!?」
「私が言ったけどさ!?でもお前そこは分かるでしょ!?元ヤンでしかも時代遅れか!!!」
「あァ!?」

元ヤン必殺のガン飛ばしを食らって少し怯んだが、そこでおめおめ辞める私ではない。

「まぁまぁ靖友、苗字がしてほしかったのはさ・・・これだぜ」

そう言って新開は腕を引っ張って壁ドンしてみせた。


荒北を。


「なんでオレなんだよバカかテメェは!?」
「いやぁ、尽八が見てるからさ」

その言葉を聞いて恐る恐る教室の入り口を見てみると、尽八がいた。私の予想通りに怒っている様子。

「・・・名前、放課後空けておけ」

いつもの何倍も低い声でそう言って自分の教室に戻っていった。

放課後、尽八の部活が始まる前に教室を覗くと尽八とすぐに目が合い腕を掴まれてあまり人の通らない場所へと連れて行かれた。

「あれは何だ?」
「あれって何?」
「あの後荒北に何があったのか聞いてみたら、壁ドンをしろと言ったらしいな?」

相当怒っている様で、終始真顔の尽八。顔が整っている人の真顔というのは実に怖い。

が、私はこの顔が好き。

正直言うと、この顔が見たくて尽八を怒らせた。

「でも結局壁ドンしてないじゃん、だから尽八が怒る要素無くな・・・」
「オレ以外の男に要求していた事に怒ってんだよ」

全くそのつもりは無かったのだろうけど、私が寄りかかっていた壁の真横に壁ドンする尽八。いつもの口調ではなくて、高校生らしい雑な口調になっている。怒っていたり巻ちゃんと話している時はこんなかんじなんだよなぁ

「オレだけじゃ不満か?そんなに名前を満足させ・・・っ!」
「・・・満足してるよ」

尽八の言葉を遮って、首に抱きつき尽八にキスをした。途端に、尽八は顔を紅くして周りをキョロキョロと見渡す。

「尽八で満足してる。正直言っていい?」
「な、何だ」
「私ね、尽八の真面目な顔で壁ドンしてほしかっただけなんだ」
「・・・は?」
「あの自信たっぷりな顔じゃなくて、怖い顔で壁ドンしてほしかったの。だから別に荒北の壁ドンには興味ない」

それを聞いた尽八は、額に青筋を浮かべる。え、怒ってるの?

「あのなぁ、あんな事されてオレがどれだけあの後の2時間考え込んだと・・・」
「ごめんね?」

ちょっと可愛く言えば、尽八はすぐに許してくれた。本当にこの人は私に弱い。



「どうだったのー?東堂くんの壁ドンは?」
「んー?めっちゃキュンキュンした」



end

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