※ 前の恋人の事を引きずる荒北に片思いする話
※ ハッピーエンドではありません。


「・・・まだそれ、持ってたんだ」

私の問いかけに、荒北は咄嗟にそれを握って隠した。

「・・・ッセ」

荒北が持って見つめていたのは、別れた彼女とのペアリング。隠したリングを制服の胸ポケットにしまって、彼は逃げるようにして教室から出て行った。前から聞いていた、荒北が別れた彼女の事を引きずっていると。それでも私は、彼を好きになってしまった。

「何で諦めてくれないんだろ」

諦めてくれないなんて言っているが、一番諦めなければいけないのは私だ。好きな相手がいる人を、好きになるなんて。叶いもしないのに、一途に想い続けるなんて。

荒北と彼女が別れたのは一年前。原因は彼女の二度目の浮気で、彼女はそのまま荒北と別れて浮気相手の男と付き合ったらしい。荒北は何度も何度もその浮気相手と別れさせようと必死になった。しかしそれでも、彼女は荒北を選ばなかった。

それなのに・・・


「アイツ、考えてくれるってヨ」
「・・・良かったな」

偶然、聞こえてしまった新開と荒北の会話。新開は私をチラリと見て、少しだけ悲しそうに笑った。新開は、私が荒北の事を好きだって知っている。

「あの野郎と別れたって」
「おめさん、いいのか?また浮気されちまうかもしれないぜ?」
「あの時はオレに魅力が無かったンだろ。あの時と同じ事はもう、二度とさせねぇ」

泣きそうになった、けど必死に耐えた。何故そこまでして元彼女に必死になるのか、そこまでの恋愛をした事がない私には理解できなかった。荒北と目が合って、言いたくもない言葉を口にした。

「良かったね」
「あァ」

それから、荒北が寄りを戻したという噂を耳にするのは直ぐだった。聞きたくもない噂を何度も耳にして、気が狂いそうになった。そりゃそうだ、昔はお似合いだって言われていたカップルが一年ぶりに寄りを戻したとなれば誰もが噂する。そんな話し声から逃げたくて、裏庭へ行ったのに一番に目にしたのは荒北と、噂の彼女だった。目が合ってしまって、何も言わないわけにはいかなくなった私は、またしても言いたくもない言葉を口にする。

「・・・寄り戻したんだってね、おめでとう」
「・・・アンガト。オメーにも散々情けねぇとこ見せちまったな」
「別に気にしてないよ」

靖友、と言って荒北の腕を引っ張る彼女に反応して、荒北は彼女とその場を去った。二人が居なくなった瞬間、膝から崩れ落ちて、情けない自分を鼻で笑って、私は一人になった裏庭で、声を殺して泣いた。



end

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