「一年生、どんな子達が入ってくるんでしょうね」
「これからもっと大変になるから、気合い入れてね」
「はい!」
高校二年生の春、今日から入ってくる新一年生の中でどんな子達がこの男子バレー部に入部するのか、私は朝からずっと楽しみで仕方なかった。
「潔子先輩に迷惑かけないように頑張りますね」
男子バレー部の三年マネージャー、清水潔子先輩はとても美人でたまに冷たかったりするところがまた素敵。堪らない。ていうかやばい。憧れている。愛して・・・ゲフンゲフン、このくらいにしておこう。
「あれ・・・一年生・・・ですよね?」
「あの・・・」
「「!」」
「そこ、通してくれる?」
体育館の入り口で揉めてる一年生・・・らしき二人。その二人の間を通って、潔子さんは体育館の扉を開けた。
ガラガラッ
「っ!!潔子さん!!お疲れ様です!お持ちします!」
「いい、自分で持っていくから」
「潔子さん!今日も美しいッス!」
「・・・」
「ガン無視興奮するッス!!!」
「はーい、田中は私の荷物持ってってねー」
ドスッ
「ぶへッ」
ガシャンッ
空いていた体育館の扉を菅原先輩が閉めた。
「どうしたんですか?あの二人、新入部員ですよね?」
「あー・・・ちょっと色々あってね」
「ふーん・・・」
「勝負して勝ったら入れてください!!とか言ってきそうじゃないスか?あいつら」
部活が終わって、みんなで一休みをしている最中に田中が言い出した。
「ありえる。頭冷やして、ちょこっと反省の色だけでも見せればいいんだけどな」
「「キャプテン!!」」
私達が噂をしていれば、扉の外から声がした。多分、あの二人だと思うけど。
「勝負させてください!!」
「マジでか!?」
田中は爆笑してるし、菅原先輩は呆れている。私も、理由は知らないけどちょっぴり笑ってしまった。
「「せーの、ちゃんと協力して戦えるって証明します!!」」
「せーのって聞こえたんだけど・・・」
「でも俺、こういう奴ら嫌いじゃないッスよ」
「負けたら?」
「どんなペナルティでも受けます!」
「ふーん・・・ちょうどいいや、お前らの他に二人一年が入る予定なんだ。そいつらと三対三で試合やってもらおうか。毎年新入部員が入ってすぐ、雰囲気見る為にやってるゲームだ」
「でも、三対三・・・ですか?俺たち側のもう一人は・・・」
「田中、お前当日日向たちの方に入ってくれ」
「えっ、俺ッスか?」
「嫌いじゃないって言ったろ」
「関わるのは面倒くさいです」
「そっかぁ・・・問題児を牛耳れるのは田中くらいだと思ったんだけどなァ」
澤村先輩の言葉に、田中の耳がピクピクと反応して・・・
「しょうがねーなァ!!やってやるよ!!」
俄然やる気を出した。さすがバカ、単純過ぎて笑える。
「で、お前らが負けた時だけど、少なくとも俺たち三年がいる間、影山にセッターはやらせない」
「!?」
「それだけですか?」
「個人技で勝負挑んで負ける自己中な奴がセッターじゃあ、チームが勝てないからな」
「ッ・・・」
「どうした?別に入部を認めないわけじゃない。お前なら、どこのポジションだって余裕だろ」
「俺はセッターです!!」
「勝てばいいだろ?自分一人の力で勝てると思ったから来たんだろ?」
「俺は!?俺もいます!!」
「ゲームは土曜の午前!」
「俺も!!俺もいますよ!?」
「お前ら!!この田中さんがビシッと、ぐぇっ」
「いいな?」
ガシャンッ
田中が一年生に何か言いかけたが、菅原先輩が首根っこを掴んで体育館にいれると、扉を閉めた。
「なんかさぁ・・・あいつらにキツイんじゃね?」
「確かに、いつもより厳しいッスね。大地さん」
「なにか特別な理由でもあるの?」
「・・・」
「・・・お前らも、去年のあいつらの試合見ただろ。影山は、中学生としてはズバ抜けた実力を持っていたはずなのに、イマイチ結果は残せていない。そんで、あの個人主義じゃあ中学のリピートだ。チームの足を引っ張りかねない。でも中学と違うのは、いま影山と同じチームに日向がいる」
「日向?まぁ確かに運動神経の塊ってかんじですけど・・・」
「うん。実力はまだまだだけど、類いまれなスピードと反射神経を持ってて加えてあのバネだ。でも中学ではセッターに恵まれなかった。そして影山は自分のトスを打てる早いスパイカーを求めてる。あいつら単独じゃあ不完全だけど、才能を合わせたら・・・コンビネーションを使えたら・・・烏野は爆発的に進化する。そう思わないか?」
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