帰還






 

ドォン!という音にクレオはビクッと肩を揺らした。

音は2階から・・・クレオは呆れたように


「またパーンか」
「俺はここにいるぞ」
「あ、そうだったな」



休憩に、と2人でお茶を飲んでいたのだ。



あれからティルが居なくなって大騒ぎしたが、ルックが「ほっといてやりなよ」と言い、そしてグレミオが居ない事にも気づいて大騒ぎしたがまあグレミオが一緒なら大丈夫か、と一同納得したのだ。

それに彼は重い荷を背負いすぎた。
これからは彼の人生を自由に歩んでいくべきだ。

そしていつか、この地に戻ってきてくれるに違いない。


あれから半年、トラン共和国は平和そのものだった。

少しずつだが、小さな村は飢えることなく、幸せな日々を送っている。


これはティルが目指した、オデッサが願った幸せな未来だ。



そんなことより、とクレオは立ち上がり


「泥棒かもしれないよ。このマクドール家に入るなんて挑戦者。引っ捕まえて牢屋にぶち込まないとね!」
「そうだな!久しぶりに暴れるか」


関節をボキボキと鳴らしながらパーンは立ち上がる。 クレオは家具は壊すんじゃないよと釘を刺すと武器を持って音がしたであろう部屋へ上がった。



グレミオの部屋も、リビングも、テオの部屋も何も居なかった。

残るはこの家の主、ティルの部屋のみだ。


2人は顔を見合わせると頷きドアをバン!と開けた。



「泥棒め、覚悟し・・・・・・え?」
「あ、あれは・・・」



見覚えのある少女がそこに倒れていた。
手には、あのティルのバンダナを握って。









楓は目が覚めると、



「知らない天井だ・・・」



と某アニメのセリフが自然と口から漏れた。

ではなくて、と楓は起き上がる。
ふかふかのベッドに、高そうな家具が並ぶ部屋。
壁にはシャンデリアとまではいかないが綺麗な装飾のランプが付けられている。

ランプの他に壁には剣が掛けられていたり、棍がかけられたりとしている。

棍、と聞いてまっさきにあの少年が思い浮かんだ。


するとガチャ、と扉が開き楓はビクッとなった。
しかし開けた相手を見て


「く、くくくクレオさん!!!!」
「楓!久しぶりだね!元気にしてたかい!」

突然ギュッと抱きしめられて楓も抱き返す。


ということは、成功したというわけだ。


クレオはお茶を飲んでゆっくり話そうと言うと楓をリビングへと案内した。




豪華なリビングに楓は辺りを見渡すと

「ここって、クレオさんのお家ですか?」

それを聞いてクレオはあはは、と笑うと


「違うよ、ここはティル様の家だ。」
「へぇ・・・え?ええっ!? こんなデカかったの!?」
「まあ、将軍の屋敷だからな」


パーンが笑いながら紅茶を飲む。


「それで、楓が寝てたのはティル様の部屋」
「あ、あぁどうりで」


棍があるはずだ。


「でも、肝心の本人は・・・」
「ああ、あれからティル様は姿を消してね。どこにいるのか私たちにも検討がつかないんだ」

それを聞いた楓は俯くと

「そう、ですか・・・」
「まあグレミオも居るし大丈夫かとは思うけどな」


彼がいれば体調面も大丈夫だろう。
楓はなら安心だ。と微笑む。


「楓は、どうするんだい?」
「私、ですか・・・」


ティルに会うためにここに来たのだけどこれでは意味がない。

かといって探し出すと言ってもモンスターと戦った経験もないし、行き倒れになるだろう。


楓はクレオを見ると


「あの、クレオさん。私をここに住まわせてもらえませんか?もちろん、働きます!」

クレオは驚いたがやがて微笑むと

「もちろん。もしかしたらティル様もひょっこり帰ってくるかもしれないからね」
「はい!ありがとうございます」




楓はこうしてマクドール家のメイドになったのだった。




prev
next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -