4.食べちゃうぞが冗談に聞こえません




 
とにかく、ここでお世話になるからにはお手伝いをしないといけない。働かざる者食うべからずという言葉があるように。


というわけで私は雑用からお城の家事全般などをやるメイドさんへジョブチェンジした。


それを聞くとティルさんが笑顔で


「じゃあ僕専属のメイドさんになってよ」


・・・この軍主は何を言ってるんだ?


しかしこの城の主はこの目の前にいるティルさんだ。

この間ティルさんが「この城では俺がルールだ」とか意味不明な事を言っていたとグレミオさんから聞いた。(寝言らしいが)



するとアイリーンさんが「それはいい考えですわ」と言ってポンポンと話は進んでこの馬鹿軍主(口では言えない)の専属メイドとやらになった。


おいルックくん、そんな哀れむ目をするならテレポートであなたの師匠の専属メイドにさせてください。

・・・目を逸らされてしまった。



「はい、これ制服ね」
「ありがとうござ・・・・・・」


受け取って戦慄が走った。
そうだ、ここのメイドさんはメイド服というものを着てるんだ。

プルプルとした手で私はそれを受け取った。




メイド服といってもあのア×バ系のように短いスカートにニーソとかではなく黒いロングスカートに白いエプロン、カチューシャ、黒いストッキングという組み合わせだ。

靴もローファーからパンプスになった。

アイリーンさんとクレオさんは着替えた私を見て

「まあ可愛い!」
「似合うなぁ楓は」
「あ、あはは・・・ありがとうございます・・・」


とりあえず、世話をする軍主であるティルさんに挨拶しにいかないといけない。

確か、5階だったよな・・・

エレベーターで5階へ向かっていると2階でチン、と音が止まって扉が開いた。誰だろう、とドアに視線を送っておもわず閉めるボタンを押した。そりゃもう全力で。


ガン、と音が鳴って恐る恐る視線を戻すとドアをギギギ抑えながらも屈託のない笑顔を浮かべる軍主様が居た。


「ひどいなぁ楓、僕乗るのに」
「か、階段を使ってはいかがです?いいトレーニングになりますよ」
「ちょっと急ぎの用事があってね、またの機会にするよ」

そう言ってどこからそんな力があるのか、ドアをこじ開けてするりとエレベーター内に入るティルさん。

そして5階を押そうとするともう既に押されてるのでティルさんが右に首をかしげる。


「あれ、楓が押してくれたの?気が利くね」
「・・・いえ、5階に用があるので」

え?とティルさんが今度は左に首を傾げる。


「なんで?」
「・・・いや、ティルさんが言ったじゃないですか。僕の専属メイドにって」
「え?あぁあれか。 あっはっは!冗談だったのに!」
「ええぇ!?」

思わずそんな声が出た。

どうやら冗談だったらしい。ということは私は専属メイドにならなくて済むということだ。

そう思うと心が軽くなり

「じゃあ、アイリーンさんにはそう伝えておきます。用事も無くなったのでこれで失礼しまっ・・・」


そのまま出ていこうとしたら腕をグイッと引かれた。ティルさんは素早い動作で閉めるボタンを押し締まる頃には私は壁に押し付けられていた。


「あのー?」
「冗談で言ったけど、悪くない話だなと思って」
「はぁ・・・」

そしてティルさんはにっこり笑うと

「それに楓、似合うよ。可愛い」
「は、はあ・・・」

だんだん顔が熱くなるのが分かった。
思わず顔をそらすとティルさんの顔が近づいてきて耳元で囁かれる


「ほんと、食べちゃいたいくらいだよ」
「ひっ!あのっ、ティルさん・・・」


食べちゃうぞが冗談に聞こえません


「今回は冗談じゃないよ」
「え?!」



ティルさんは突然私をギュッと抱きしめて頭を撫でながら


「はぁ、かわいい」
「うう・・・」



早く5階に着けと思いました。





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