「なあルック、楓って可愛いだろ?」
「はぁ?」
楓というのは異世界から来た子だ。
しかしここに拾われたのは運がいいだろう、しかしこの変態軍主に気に入られたのは運が悪いとしか言い様がない。
毎日のように抱きつく、セクハラの繰り返しでいつも気の毒に、と思っている。
まああの子が来るまで僕はコイツに散々からかわれてていつも切り裂きを出してたけど、標的が彼女に行ったのでそれも最近少なくなってきた。
変態軍主から逃げるために僕を避難所にするのも、そろそろやめて欲しいけど。
そしてその変態軍主こと、ティルと僕は今本拠地にある酒場で酒を飲んでいる。
僕は酒が嫌いだから・・・・・・りんごジュースだ。
いやこれは別にティルが勝手に頼んだだけであって別に僕が飲みたかったわけじゃない。
・・・というのはどうでもよくて、ティルはコップの氷をガラガラと振りながら
「楓はさ、可愛いんだよ。そう思わない?」
「はぁ」
「なんだよ、いつも楓と一緒にいるくせに」
「あの子から来てんでしょ」
「ふん、僕はあの子から来てもらったことがないよ!」
なんか様子おかしいな、と顔を見てみれば顔が真っ赤で耳まで真っ赤だ。
ああ、酔ってるなこいつ・・・。
「だいたい君はね、ストレートすぎるんだよ。突然抱きつかれれば警戒もされるって」
「僕なりの愛情表現なのに・・・」
「ええぇ・・・(あれが?)」
***
僕はコップの氷を眺めながら楓に会った数ヶ月前を思い出していた。
まだ本拠地であるこの城が手に入った時何故かこの城で倒れていた彼女。
見慣れない格好をしていて、泣きそうな顔でこちらを見てきた。
僕は怖がらせないように彼女に手を差し出すと
「僕はティル・マクドール。君は?」
それが彼女との出会い。
彼女は別の世界から来た子で、レックナート様にも何故ここに来てしまったのか分からないと言っていた。
ただわかるのはこの子が敵ではないって事だ。
楓の居た世界と僕の世界は正反対であちらは技術が発展しているらしい。
そんな慣れない生活に疲れがあったのか、楓は熱で倒れたことがあった。
僕は心配になって仕事の合間に楓を看病した。僕がこの子をここに住まわせると言ったのだ、僕が面倒を見たい。
やがて熱はなんとか下がって、楓が目を覚ました。
水分をとらせよう、と手渡したコップをいじりながら
「ごめんなさい、足ひっぱちゃって」
「いいんだよ、ねえ楓。あまり気負いすぎないで、何かあったら僕に話して。ね?」
そう言って楓の手を握れば楓は驚いて、それから大泣きした。ずっと我慢していたのかで・・・小さな子供みたいに大泣きする彼女にああ、元の世界に帰す方法もみつけてあげなきゃ。と思った。
しばらくして泣き止んで、楓は顔を真っ赤にさせて謝ってきた。それが可愛くて、思わず頭を撫でてしまった。
すると楓は驚いたけど、照れくさそうに、でも嬉しそうに笑った。
初めて見た楓の笑顔だった。
その笑顔に僕は君に惚れたんだ。
***
「ほんっと可愛いんだよ、笑うと。」
「あー・・・はいはい」
ティルはぐいっと酒を飲み切る。
惚れるとどうやらあのようにアタックするらしい。
「あんた、今まで惚れた女の子にもそうやってきたの?」
「え?今まで惚れたのなんて楓が初めてだけど?」
貴族の女共なんて着飾ってばかりで興味なかったしね、と笑う。
ああ、こいつは初恋なのか。
ただアプローチの仕方を知らないだけなんだ。
「でさ、ルック。楓の笑ったかおも可愛いんだけど、泣き顔も可愛いんだよ・・・へへへ」
そんなこと言ってティルは完全に酔っ払っていて僕の肩に手を回してきた。
ああ、こいつは、アレだな。
僕はペシンとその手を払い落としてゴミを見るような目で一言、こう言い放った。
くっつかないでください移ります変態が
「ひどい!ルックん!」
「(うざい・・・)」