マーレ大陸:後編



ふと目が覚める。
マコトとリヴァイはあれから素肌のままで眠ってしまい、日が落ちた部屋はヒヤリとした空気で少し肌寒い。

隣で寝ていたはずのリヴァイが居らずマコトは

「リヴァイさん?」
「ここだ」

起き上がるとズボンだけはいたリヴァイが暖炉の火をおこしている所だった。

「寒いだろ」
「うん、少し・・・」

リヴァイは立ち上がるとベッドに腰掛けてマコトの乱れた髪を直してやりながら

「疲れてるのに悪かった、無理させすぎたな」
「ううん。大丈夫・・・」

そう笑うとリヴァイは軽くマコトのこめかみにキスをすると

「その格好もいいが、とりあえず何か着ろ。風邪ひくぞ」

そう言うとスーツケースからマコトの下着類や服を取り出す。

「リヴァイさんって、お世話好きだよね」

確かこっちの世界に飛ばされて掃除をし始めた時も甲斐甲斐しく世話をしてくれたのを思い出して笑みがこぼれてしまう。マコトのシャツを持ちながらリヴァイは「あ?」と眉を寄せると

「・・・お前にしかこんな事しねぇよ」

そう照れくさそうに言うとマコトの顔にポイッとシャツを投げつけたのだった。



***



「そのような事がありましたか・・・」

夕食を終えてからキヨミに今日あった出来事を話す。
近頃では血液検査の技術が向上し、世界中で収容から逃れたエルディア人の存在が判明してしまい問題となっているそうだ。

スリをした少年を見た時のマーレ人の反応・・・あれが、今のエルディア人の現状であり、パラディ島から友好を図る計画も極めて困難な状況と言えるだろう。


「・・・かと言って、和平の道を諦めたらジークの謀略に加担するしか無くなります。彼に我々の運命を委ねて、ヒストリアと産まれてくる子供達を犠牲にするしかなくなる・・・」
「ああ、もちろん。そんな未来を迎えない為に私達はここまで来たんだ。明日行われる国際討論会で初めて登壇する「ユミルの民保護団体」・・・それを求めるしかない。」
「しかし依然として、その団体の理念は明らかではありません」
「はい。まずは、慎重に見極めなくては。その上でその団体と我々が相まみえる事が叶うのなら・・・」

パラディ島が和平を望むことを表明する。

もちろん、アズマビト家は今後も和平の協力は惜しまないと言ってくれた。 しかし、あの現状を見てしまっては困難でありここに居ること自体が危険だ。それは薄々調査兵団も分かっていることではあった。

希望があるのなら・・・ハンジは膝の上に置いたいた拳を握るとキヨミを見つめる。

「だからと言って、最善を尽くさない事は出来ないのです」
「・・・左様でございましょう」


沈黙が流れる中、ミカサはあれ・・・と部屋を見渡すと


「エレンはどこ?」





***





「チッ、遅せぇ・・・!」


エレンが突然居なくなってから3時間は経過した。
ミカサ達が探しに行くと言いマコト達は待機しているのだが・・・あまりにも帰りが遅すぎる。
あの少年のように、エレン達も取り囲まれていたら・・・マコトもそわそわと窓の外を眺め始めた。

痺れを切らしたリヴァイが再び大きく舌打ちをすると


「仕方ない、私達も探しに行こうか」


ハンジの言葉に3人は頷くとランプを持ってエレン達を探しに行った。


エレン達が居たのは、戦争で居場所を無くした人達か集まる集落だった。その中にはスリをした少年も居り・・・何故か宴会を開いていたらしくマコト達が到着した頃にはエレン達は酔っ払って眠りサシャは吐いているという光景だった。

「これはこれは・・・どういう事・・・?」
「とにかく、この馬鹿共を起こすぞ。 おい、起きろ」

リヴァイは仰向けになったジャンの腹にドスッと座ると胸ぐらを掴んでビンタをかます。
マコトもアルミンの傍らに座ると鼻をつまんで息を止めたりなどをして全員を起こしに掛かったのだった。



***


次の日ー

「我々は各国に散ったユミルの民の難民へ援助を求めます!彼ら難民は、エルディア人であったことも無く、エルディア帝国の危険思想とは無縁なのです!」

ユミルの民保護団体の演説を聴きに国際討論会へ足を運んだ一向は「ユミルの民保護団体」の話を聞いていた。

「彼らはただエルディア帝国に支配を強いられた哀れな被害者なのです!依然、憎むべきは島の悪魔共に他なりません!」

・・・その内容はハンジ達の期待を裏切る結果となってしまった。

保護団体はパラディ島の住民ではなく島の外のユミルの民を保護する団体だった・・・その演説にハンジ達は空いた口が塞がらず、キヨミは額を抑える。


マコトの隣にいたエレンもそれをじっと聞いていた。

こちらに戻ってきてから、エレンはあまり多くを語らなくなった。心配になったマコトは小声でエレンをツンツンと小突くと


「・・・エレン、大丈夫?」
「・・・はい」


しかしエレンの目は虚ろだ。


「マコトさん・・・」
「どうしたの?」
「俺・・・またマコトさんに会えて良かったです」
「ん?う、うん・・・」

一体どうしたんだろう。マコトは心配になりエレンの手を取る、とグッと握られると

「俺は兵長と一緒にいる時のマコトさんが好きですし、マコトさんと一緒にに居る時の兵長が好きです。オレは、昔から2人には幸せになって欲しいって、ずっと思ってた」
「ありがとう・・・あはは、照れるな。何か欲しいものでもあるの?」

茶化すように小声で言うとエレンは「いえ、何も・・・」と首を振るだけであった。


「エレン」
「はい」
「何か…ううん、エレン。あなたの事を大切に思っている人は沢山いるよ。ミカサ、アルミン、私もリヴァイさんも調査兵団の皆があなたの事を大切に思ってる。考え込みすぎないで?きっといい方法が見つかるよ。」

エレンを落ち着かせるように、ポンポン優しく叩いてやると

「はい…ありがとうございます」

宛を無くした調査兵団は無言で席を立つと討論会会場を後にした。



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