一生の思い出




イェレナ達をパラディ島へ迎えいれて3ヶ月は経過した。


マコト達は今、ヴァロア領に居る。


「くぅうぅ〜〜〜!!マコト可愛いよ!すっごく綺麗!」


ハンジの格好は普段の兵団服ではなく、かっちりとしたスーツを着ている。

そしてマコトが着ているのは白いウエディングドレスだ。

「ハンジさんも似合ってます! スタイル良いんだからドレスだったらいいのに」
「いやいや、私はパンツスタイルしか受け付けないよ!」


以前、リヴァイが式を挙げたいと言ってから2人で合間を縫っては準備はしていた。

そして、式にヴァロア伯爵を招待しようとしたらむしろヴァロア領でやらないかと逆に場所を提供してもらってしまったのだ。

コンコン、とノックをされて2人はドアを見ると



「マコト、入るぞ」
「どうぞ!」


その返事を聞いて入ってきたリヴァイもタキシードを着ており、髪型もオールバックに変えられていた。

普段とは違うリヴァイの姿を見てマコトはパッと顔を明るくさせると

「リヴァイさん、似合う似合う!」
「・・・・・・・・・」

リヴァイはマコトを上から下まで見て固まっているのでどうしたのだろうかと首を傾げた。

「マコトさんが綺麗だから、固まってるんだと思いますよ」

ひょこっとリヴァイの後ろから現れたのはオニャンコポン。

ふふふ、とニヤニヤしながらリヴァイを見つめて髪の毛をセットし直しながら

「リヴァイさんもこうすれば男前度が上がります!」
「・・・悪いな」

どうやらリヴァイの格好や髪型はオニャンコポンプロデュースらしくマコトは笑うと

「オニャンコポン、ありがとう。リヴァイさんすっごくかっこいいね」
「・・・・・・・・・・・・」

マコトからも褒められてリヴァイはまた固まるとオニャンコポンはやれやれと苦笑いしてハンジを見ると

「ハンジさん!俺たちは準備の手伝いに行きましょう!」
「うん。じゃあ2人とも後で迎えに来るからそれまでごゆっくり!」

そう言って2人は出ていくと、マコトはドレスの裾を摘んで首を傾げると

「・・・どうかな?変じゃない?」
「変じゃない。綺麗だ。」

思わず即答した。どうやら2人の前では照れくさくて言えなかったようだ。

リヴァイはマコトに近づいて頬に手を添える。

「お前は何しても可愛いし美人だ」
「ど、どうしたの急に」
「あ?本心を話してるだけだ」
「リヴァイさんも何してもかっこいいよ!ずるいくらい!」
「何でずるいんだよ」
「し、心臓もたない! ・・・あ。そうだ、これ」

マコトがテーブルから取り出したのは1枚の写真。マコトと両親が写った写真を渡すと

「リヴァイさんのポケットに入れておいて貰っていいかな・・・?この姿親には見せれないから」
「ああ。もちろんだ」

ありがとう、とマコトは写真をリヴァイのタキシードの胸ポケットに入れるとその手を重ねてきた。


「これから俺もお前も、どうなるか分からねぇ。これからも・・・俺の傍を離れるな。 お前の両親に誓って、お前は俺が守る」

そう言うと腰を引き寄せてマコトを抱きしめた。

「うん。リヴァイさんも離れないでね。私もリヴァイさんを守るから」
「了解した」

お互い笑いあって近づく顔・・・息が当たり、もう少しで触れる所で


バァン!


「お待たせしましたー!新郎新婦・・・ちょっと!アンタ達!まだ早いってば!!」


乱入してきたハンジによって妨害された。




***




「・・・オイオイオイ、これが派手じゃないって言うのか」
「・・・・・・えっと」


身支度をする場所として借りていたヴァロア伯爵の屋敷を出ると、ヴァロア領が全力でお祝いモードになっていた。

ヴァロア伯爵の一人娘であるエマ嬢を助けた命の恩人、あわや跡取りが居なくなる所だったので領民も祝わない訳には行かないとお祭りモードになっているのだ。

「マコトさーん!」
「エマ!」

ドレスを着たエマはマコトと抱き合うと

「マコトさん綺麗です!」
「ありがとう。 ヴァロア伯爵も、今日はありがとうございます」
「良いんだよ。一生に一度きりなんだから、控えめじゃなくて派手にやらないと!」

そう言うと遠くから花火が上がりマコトは声を上げた。ヴァロア伯爵は花火を見上げると

「ははは!マーレの人に教えて貰ってね、花火を作ってみたんだよ!」
「マーレの方たちは面白いものを沢山知っているので、興味深いものばかりですわ!」

マーレの技術提供・・・それは資金が必要になるためヴァロア伯爵がパトロンとなり支援してくれている。




最近では線路を作ろうという話にもなり、ヴァロア領が先陣を切り領地を使って試験的に線路が作られるそうだ。

上手くいけば、他の場所でも汽車が走るようになる・・・そんな日も遠くはないだろう。



「マコトさん」
「ヒストリア!」

着飾ったヒストリアとジャン達が駆け寄ってきてマコトとリヴァイを見ると

「マコトさんすごく綺麗です!」
「ありがとう!」
「空に爆弾とか飛ばしてるが、まあ気にしないでくれ」

先程からバンバンと空を花火が飛び、リヴァイが空を見ながらそうぼやくとヒストリアも苦笑いする。

「すみません、ヴァロア伯爵と話し合って私も少し支援を・・・」
「ヒストリアまで・・・ありがとう。ここまでしてくれて」
「私達、マコトさんとリヴァイ兵長にはお世話になってるので」

遠くでは、サシャがニコロの料理を食べようとしておりコニーが必死に止めている。
それを見つけたジャンは「ちょっと止めてきます」と手を上げるとコニーに加勢をしてサシャを落としにかかった。






・・・あの日、マコトがニコロに頼んだのは自分たちの結婚式で料理を作ってくれないか?という頼みだった。

ニコロは戸惑いながらマコトとリヴァイを見ると

『えっ!?・・・そんな貴重な日に、俺の料理でいいのか?』
『もちろん! マーレと私達の交流の意味も込めて。 私達もっとニコロさん達と仲良くなりたいの。・・・駄目かな?』
『・・・ぜ、全力で作るからな!覚悟しておけ!!』
『ありがとう!もちろん私も手伝うから!』


案の定出来上がったマーレ料理は豪華で鯛まである。

この日のためにニコロ、マコトやリヴァイ、ジャン、サシャ、コニー達が釣り上げたのだ。


綺麗に盛り付けられた料理を見てマコトは「わあ!」と声を上げると

「これ私が釣ったやつ!」
「ああ。パラディ島周辺はいい魚が沢山釣れたからな。あと、パラディ島の料理も勉強して少しアレンジを加えたんだ」
「ニコロさん天才・・・本当にありがとう。いい式になりそうだよ。ね、リヴァイさん」
「ああ。 ありがとな」

頭を下げるとニコロはへへ・・・と頬をかいて

「2人はもう随分と前から夫婦だったんだろ?」
「うん。・・・色々あって、式は先延ばしにしてたの。最近落ち着いてきたからそろそろ挙げようかって話になって」
「そっか・・・改めて、おめでとう。俺もいい経験になったよ」

差し出されたニコロの手・・・リヴァイとマコトは頷くとその手を握った。




結婚式と言うよりかは宴会のような空気で行われ、各自料理や談笑しながら緩やかな時間が過ぎていく。

数時間経ち、ニコロの料理も平らげてしまった。もうそろそろお開きか・・・とオニャンポコンは何かゴソゴソと荷物を漁ると

「皆さんで写真撮りましょうか!」

記念写真を撮ろうとオニャンコポンはカメラを取り出した。





「ここ光るから、目を閉じないでくださいね〜!」
「「「はーーーい!」」」

並べられたのは兵団関係者や特別作戦班、ヴァロア伯爵とエマ、イェレナやニコロなどマーレ側の人間だ。

「10秒後に光るからな!・・・はい!」

オニャンコポンは走って定位置に着くと10秒後にフラッシュが焚かれて撮影が終わった。撮影が終わってもサシャはまだ食べているのかエビをむしゃむしゃしながら

「むぐっ、凄い技術ですよね〜絵を描かないなんて・・・はむっ」
「・・・お前いつまで食ってんだよ」


写真という技術は、シガンシナを奪還したときにグリシャの手記に同封されていたが、撮られるのはほぼ全員初めてだ。


撮影後は自由時間となりオニャンコポンはマコトとリヴァイを止めると

「2人共、ほら寄って」
「ありがとう。ほらリヴァイさん」
「・・・まだ慣れねぇな」

マーレにも前撮りがあるそうでマコトとリヴァイも式前に撮ってもらったがリヴァイはまだカメラに慣れないらしい。

「レンズつったか・・・あれ見るとどうも睨んじまって」
「別に取って食う訳じゃないんですからリラックスして」

オニャンコポンがそう窘めると、マコトはいいことを思いついた、とリヴァイに思い切っり抱きついてみた。

「・・・おい、マコト」
「堅苦しいのは前撮ったし、ほらほら」

リヴァイと頬をくっつけ合って笑うと、リヴァイの顔が少し緩んだ隙にオニャンコポンがシャッター切ると

「ははは!いいのが撮れましたよ!」
「ほんと?出来上がるのが楽しみ!」
「ありがとな」
「あーっ!私も入る!」

すると途中でハンジが乱入しリヴァイとマコトの間に入ると肩を抱く。
オニャンポコンが撮影の準備をしている間、突然ハンジはふふ、と笑い

「2人がまた会えて良かったよ。 最近は暗い話ばかりだったからね・・・マコトもマーレとの交流を測ってこのタイミングで挙げてくれたんだろ?」
「ハンジさん・・・バレてましたか。」
「それに、可愛いマコトのウエディングドレスの姿が見れて私はとっっっても幸せだ。あと、リヴァイのそんな姿が見れるだなんて、死んで行った仲間達が見たら驚くだろうなぁ・・・悔しいけど似合ってるよ」
「クソメガネ・・・」
「いや、そこはハンジ・・・って言って欲しいんだけど」

マコトとハンジは吹き出して笑い、リヴァイも口元に僅かだが笑みを浮かべる。


「改めてリヴァイ、マコト。おめでとう。大好きな2人の晴れ舞台・・・私の一生の思い出だよ!」


オニャンコポンそんなやり取りを見て釣られて笑うと、その3人の姿を写真に写した。





***




後片付けを終えて夕方にはトロスト区に帰ってきた。リヴァイとマコトは肩を並べて兵舎への道のりを歩きながら

「リヴァイさん」
「何だ?」

マコトは頬を赤くして俯くと

「あの・・・今日はありがとう。楽しかった」

あの時の状況や今の状況で挙げられるとは思っていなかった。リヴァイもマコトを見つめると、橙色になりかけた空を見上げながら

「・・・女は、憧れるものだろう。 それに俺はお前にドレスを着せてられないのが心残りだったからな・・・夢が叶った」

そう言うとマコトの手を握ると

「少し寄り道するか」




足は兵舎ではなく別の方角へと向かっていた。




.
.
.




「ここ、私が初めて来た時に登った壁だね」
「そうだ」

マコトが初めて壁の世界や巨人を見た日・・・あの日のようにマコトとリヴァイはリフトに乗り込み壁上に立っていた。

以前までは駐屯兵が固定砲の手入れや、壁に張り付いている巨人に向かって大砲を撃っていたがそんな姿はここ1年以上は見かけられていない。

静かになった壁の上・・・マコトとリヴァイは腰を下ろす。

マコトはリヴァイにくっつくと

「もしかして、思い出ツアー?」
「はっ、なんだそれ」

リヴァイは笑うとマコトを肩を抱き寄せて頭を撫でた。

しばらく2人は無言で居ると

「・・・マジックアワーだったか? またお前と見たくなったんだ」

マリア奪還後・・・別れ間際に見たマジックアワー。リヴァイはマコトを真っ直ぐ見つめると


「また、時間が許す限り俺と一緒に居て欲しい。」


その言葉にマコトは思わず涙が溢れて拭いながら

「もちろん。離れずにそばに居るから。 ・・・へへ、また今日からよろしくね」
「ああ。よろしくな。」

お互い微笑み合うとどちらともなく顔を近き、唇が重なった。



prev | next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -