3年前




イェレナは3人を真っ直ぐ見つめると


「ジーク・イェーガーの目的は・・・エルディア人の解放です」


その言葉に3人は目を見開く。


彼の寿命は僅か・・・その残された時間内に彼をパラディ島に受け入れ、「始祖の巨人」を有する腹違いの弟であるエレン・イェーガーと引き合せること。

その条件としてパラディ島の安全を保証し武器を始めとする最新技術の提供。また、友好国との橋渡し・・・そしてマーレに対する情報工作等々の支援。



正直、ここまでの武器の技術進歩やマーレ勢力を考えると明らかにパラディ島は不利だ。

ハンジは顎に手を置いて思案し、マコトはイェレナ達を見ると

「・・・ちなみに、街はどれくらい進歩しているんですか?」
「主に蒸気機関車というもので物資などは運搬されています。線路と石炭があればどこまでも行けますよ」

それを聞いてマコトはあんぐりと口を開けた。線路?石炭?ハンジとリヴァイは首を傾げ、口を開けたまま固まった様子のおかしいマコトを見つめる。

「・・・ねぇ、ハンジさん」
「ん?何だい?」
「この壁の中・・・相当時代が遅れてます・・・」

マコトは小声で2人の肩に腕を回して屈むと

「技術力は、私の居た時代に近づいているほどです。これさえあれば、シガンシナの復興も早くなりますよ」
「しかし、議会の奴らがはいお願いします、って頭を下げるか?」
「・・・この件は、一度持ち帰る必要があるね」


3人はコクリと頷くと、ハンジはヘラヘラと笑い


「前向きに考えさせてもらうよ。・・・私達だけでは判断出来ないからね。ヒストリア女王と議会にも通さなきゃ」
「はい。 いいお返事、お待ちしております。」

一旦お開きとなり、イェレナ達は監視はあるが船の中で待機してもらう事になった。




***




議会にて、イェレナ達との話を発表すると

「アイツは調査兵団を壊滅寸前に追い詰めたやつだぞ!よくもぬけぬけと・・・!」
「(やっぱりか)」

・・・それを議会で発表すると周りは大反対だった。

ラガコ村の村民を巨人に変え、マリア奪還時には調査兵団を壊滅寸前まで追い込んだ獣の巨人。そんな奴の条件など・・・と、周りの兵団は激怒している。


四方から野次が飛び総統のダリスが落ち着け、と手を上げ全員が黙り込むと

「やつの目的は、終始一貫として「始祖の巨人」の奪還・・・力尽くがダメなら口八丁手八丁尽くせと言わんばかりだな」
「それは敵さんも承知のはず・・・まずは、団長殿の話を聞こうではないか。」
「・・・続けます。」

ジーク曰く、エルディア人の問題を一気に解決する秘策がある・・・その秘策の条件は始祖の巨人と、王家の血を引く巨人の存在。その二つが揃えば世界は救われる。


「その「秘策」とは?」
「それを明かすのは、条件が揃ってからだと・・・」
「・・・聞くに耐えんな」
「我々は随分と低く見積もられたものだな」
「そもそも、本当の話しかかどうかも・・・」

するとエレンが椅子を引いて立ち上がった。

「それは、本当です。思い出したんです。オレが一度だけ「始祖の巨人」の力を発動させる事が出来たのは「王家の人間の血を引く巨人」と接触した瞬間でした」

エレンとマコトがライナーに連れて行かれ調査兵団達が助けに来てくれたあの日、突然エレンが拳を振るった瞬間巨人が一斉にダイナ・フリッツと呼ばれる巨人に食らいついたりライナー達を襲い始めたのだ。


「そのダイナ・フリッツの息子であるジークは解明したのだと思います。「不戦の契り」を出し抜く術、我々エルディア人に残された唯一の希望を。」

「地鳴らし」。この壁に潜んでいる巨人を起こし、巨人で世界を踏み潰す・・・それが秘策だ。
マコトとリヴァイはくるりと振り向いてエレンを睨みあげると

「お前・・・どうして今までそんな事を黙っていやがった?」
「ヒストリアの身を案じたからです。オレの不確かな情報で巨人にさせる訳にはいかないと思ってました・・・軽率な判断であったことを認めます。」
「・・・話は後でゆっくり聞くよ、エレン」
「はい」

座りなさい、とマコトはジェスチャーするとエレンは静かに椅子に座った。


「しかしエレンの話が本当ならジークの秘策にも筋が通る。」
「正気か!?連中を信用する気か!?」

再び野次が飛び、全員を縛り首にしろ!と声も上がるがハンジは首を振った。

「そうも行きません。 マーレの調査船からこの島を守るには、義勇兵の力が必要なのです。」

マーレの技術は、無線を用いれるほどまでに進歩していた。 巨人の力を取り戻しに、マーレがこの島に上陸してくる確率は格段に上がり、常にパラディ島は警戒しなければならない。

「その無線とは何だ」

その質問にハンジはマコトを見ると頷いて立ち上がった。

「説明は私が。 我々は普段狼煙、手紙などを使って伝令をしていますが、それがお互いの肉声でやり取りができます。」
「喋るだけでいいのか・・・?」
「はい。・・・それほど、この壁の中は時代が遅れているのです。」




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数日前・・・


「リヴァイさん、使い方分かる?いや、撃たなくて良いからね。持ってるだけで」
「マコト、俺は機械音痴じゃねぇ。こうだろ?」
「・・・や、それでまた安全装置が付いちゃったんで弾は出ないよ。」
「なんだと?・・・チッ、めんどくせえな」
「リヴァイさん、こういうの弱いんだね・・・」
「・・・・・・マコト、さっきも言ったが後で覚えとけよ」

無線までもが使える事にマコトは驚いた。イェレナはそれを使って第二次調査船をおびき寄せます、と通信を開始した。

それをマコトとリヴァイは見ていると小声で

「無線ってのは・・・お前が見せてくれたスマホってのと同じ仕組みか?」
「うん。この技術さえあれば・・・わざわざ人を使わなくて済むね」
「・・・そりゃ結構な事だ」


今度はアルミンの超大型巨人を使用し、船から飛び込んで陸に上がった二次調査船のマーレ兵をリヴァイとマコトが出迎えた。


リヴァイは銃口を突きつけると、


「穢れた悪魔の汚らわしい島へようこそ。 もてなしてやるよ、豚のションベンでよろしければな。」
「(リヴァイさん、根に持ってんなぁ・・・)」
「断ってもいいが上陸許可は下りない。悪いが泳いで帰ってくれ」


.
.
.


この島に必要なもの・・・それは港だ。
オニャンコポンが広げた設計図を見下ろしながらジャン達は

「あぁ・・・「みなと」ね。子供達が喜ぶな」
「ばーか、遊具じゃねぇよ。混浴風呂もちゃんと作るんだろうな?」
「温泉じゃありませんよこのエロガッパ。これは美味しそうなものですよね?」
「・・・これは食べ物ではなく」
「分かった!船を安全に停泊させる場所だね。鹵獲した船を使って、海の外と交易が出来るって訳か!」

ハンジそう言うとオニャンコポンはパッと顔を明るくさせてその通りです!と喜んだ。

「凄いよオニャンコポン!」
「子供達はどこで遊ぶんだ?」
「・・・温泉も大事だろ」
「ところで、オニャンコポンはどうして肌が黒いのですか?」


・・・あれからマーレの技術を取り入れよう、と承諾したがイェレナやオニャンコポン以外のマーレ兵は快く思っていなかった。

こちらから歩み寄らなければ・・・とマコト達調査兵団はあの手この手で親交を深め、マーレ兵達も満更ではないという感じで技術提供をしてくれた。

ニコロはマーレ料理が得意らしく、海鮮料理がテーブルに並ぶ。エビや貝を使った料理など、壁内に無かったため全員は驚いていたが

「ぐあおおおぉ!うまいいぃ!!」

最初に飛びついたのはサシャだった。
次にエビに手を出したのはマコトで、隣にいたリヴァイが慌ててマコトの手を取ると

「おいマコト、得体のしれねぇもんだぞ・・・」
「大丈夫大丈夫」

にこっと笑い、サシャのようにエビに齧り付くと

「ん!美味い!」

笑顔になったマコトを見てリヴァイは嘘だろ・・・と信じられない顔になる。

サシャは猛スピードでエビに貪り、全員から残しとけよ!と言いながらジャンとコニーも恐る恐る口に含めると


「何だこれ!うめぇ!」
「コイツらこうやって食うのか!」
「ちゃんと火を通せば大抵のものは食える。おい、行儀が悪いぞ!」


ニコロはサシャに指を指すと、サシャはバッと顔を上げて

「ニコロさん!貴方は天才です!!」

その笑顔を見た瞬間ニコロは頬を赤く染めて

「き、汚ぇ食い方しやがって・・・まだあるからゆっくり食え!!」

マコトも美味しそうに食べるサシャ達を見て笑いエビを手に取ると中の身を出してフォークでリヴァイのお皿に盛り付けた。

「はいリヴァイさん。」
「・・・変なのは入ってないだろうな」
「だとしたらもう私もサシャ達も倒れてると思うけど・・・」

確かに、とリヴァイは頷いて食べると

「・・・悪くねぇ」
「ね。美味しいね! ニコロさんレストラン経営したらいいと思う」
「あ、アンタまで・・・」

照れくさそうにしているニコロを見てマコトは笑うと、あ。とマコトは何かを思いつきリヴァイに耳打ちをする。

それを聞いたリヴァイは目を細めると

「お前がそこまで気に入ったんなら、良いんじゃないか」
「ほんと?じゃあ、話してみようかな」
「俺も着いてこう。」

2人は席を立つと、ニコロの所へ向かった。




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