義勇兵



パラディ島へ上陸したマーレ軍先遣隊のニコロ。船をゆっくりと着岸させ、数人の兵士はパラディ島へと上陸した。

辺りは静かで波の音だけ・・・
警戒はするな、と顔を見合わせて頷くとサクサクと砂の音を立てながら周囲を見ながら歩く。

すると突然複数の光を当てられた。
眩しさに目を細めていると、複数・・・いやそれ以上の人がいつの間にかニコロ達を包囲していた。

「なっ・・・」

そのうちの1人がブレードを構えながら近づき、その隣に立っている女性も銃を持っていた。

女性はにっこりと笑いながら

「マーレ軍の皆さん、こんばんは。」
「とりあえず、大人しくしてもらおうか」


この先遣隊の人数では勝てない・・・そう判断したニコロは銃を砂浜に落とした。



警戒心MAXのマーレ軍・・・とりあえず銃を回収するようにと女性は指示すると拘束されたニコロの前に座った。

女性はヒィズルのような顔立ちで黒い短い髪を耳に掛けるとにこっと笑い

「すみませんね。手荒なことしちゃって。 お名前言えますか?」
「・・・・・・・・・」

ニコロは女性を睨みつけると、女性は困ったように眉を下げてから

「自己紹介がまだでしたね。私はマコト・アッカーマンと言います。調査兵団特別作戦班の副官をしています。」
「・・・・・・・・・」

それでも口を開かないニコロにマコトは仕方がないとニコロの襟を掴んだ。


華奢な身体なのに片手でニコロを持ち上げると

「言葉、通じてますよね? マーレの方は挨拶が出来ない方ばかりなんでしょうか? 失礼な方ですね」
「っ・・・」

マコトは腰から銃を取り出すと、拘束された1人の脚元ギリギリに


ダァン!


1発弾をぶち込むと

「質問に答えない度にお仲間を1人ずつ葬り去りますが。どうします?」
「・・・ニコロだ」

そう答えるとマコトは満足そうに地面に下ろしてやり、乱れた隊服を直してやった。

「ありがとうございます。 言うこと聞いてくれるなら、こちらも手荒なことしませんので。」
「(・・・悪魔め)」



.
.
.



それから2時間後・・・今度は大型船が近づいてきた。海の中で巨人化したエレンが船を持ち上げれば中から悲鳴が聞こえる。

ハンジはスっと息を吸い込むと

「マーレの皆さんこんにちは!!パラディ島へようこそ!!私はハンジ!遥々海を渡っていらしたお客様をお迎えする者です!長旅でお疲れでしょう!どうぞこちらでお茶でも楽しんでいって下さい!」

その後ろには先程の先遣隊のニコロとマコトとリヴァイが控えている。

ハンジはニコロの肩に腕を回すとグイッと引き寄せて

「ちなみに、一足お先にお越しのお客様とは!既に仲良しで〜〜〜す!だよねーニコロくん!」

リヴァイとマコトがニコロにプレッシャーを与えるが、ニコロは

「隊長!私に構わず、この悪魔を撃ってください!!」
「んな!?何を言い出すんだニコロ君!?」
「・・・お前の三文芝居に付き合う気はねぇってよ」


マーレの隊長は銃を構えると

「よく聞け悪魔共!マーレは「穢れた血」に貸す耳など、持ち合わせていない!穢れた連中と豚の小便をすするようなマネもしない!!」
「うわぁ・・・リヴァイさんより口悪い」
「・・・マコト、後で覚えとけよ」

小声でマコトとリヴァイがそんな会話をしているとハンジは若干怒りに顔を引き攣らせながら

「あ〜あ!そんな悪口言っても良いのかなぁ〜?皆さん、後ろの巨人が見えないのかな〜?どうやってここから逃げるつもりなのかな〜〜〜!?」

そんな脅しにも効かず、隊長は銃を構えると

「悪魔の力などに屈するものか!!これがマーレの挨拶だ!!」
「っ!」

パァン!


銃声が聞こえたと同時にハンジは目を開くと、隊長が頭を撃ち抜かれていた。
一体何が・・・マコト達は呆気にとられ、ニコロも呆然としていると

「・・・なんの真似だ、イェレナ!」
「武器を捨てるんだ」

マーレ側の長身の兵士が銃を味方に向けている。

「武器を捨てて、頭を後ろに」

もう1人の黒人の兵士も銃を構えている。
そんな異様な光景に

「・・・え、なになに?」
「寝返りって奴でしょうか・・・」
「そ、そんな・・・イェレナ・・・」

そんな会話をしていると、イェレナと呼ばれた兵士はヘルメットを外すと切りそろえられた白金の髪がサラリと揺れた。

「ハンジさん、お招きいただき光栄です。 お茶しましょう。私はイェレナと申します。」

こちらを見上げながらイェレナはにっこりと微笑んだ。





***




拘束されたマーレの兵士を調査兵団で監視をする中、寝返ったと思われるイェレナ達をテントの中へと案内した。

イェレナと、もう1人の黒人はオニャンコポン。
自己紹介が終えた後マコトがいれた紅茶を置くとありがとうございます。と警戒もせずにグイッと飲んだ。

「とても美味しいです。・・・えっと」
「マコトです」
「マコトさん。ありがとうございます」

隣のオニャンコポンも紅茶を口に含めて美味い、と頷く。 割と交友的な2人に戸惑いながらマコトもリヴァイの隣に座ると

「・・・あの、何故イェレナさん達は寝返りなどを」
「私達は、ジーク・イェーガーの命を受け上官を撃った、反マーレ派義勇兵です」
「反・・・マーレ・・・」

まずは、マーレ側の技術だ。
マコトとは形が違うが自動小銃を採用しており、技術は壁の外の方が進歩している。

マーレ兵の勢力は1師団あたり約2万・・・総員50師団で約100万人の兵力。その陸軍に加え、21隻の戦艦からなる3つの艦隊を有しその他新兵器の進歩もあり近頃では航空戦力にも力を注ぎ始めたそうだ。

あまりの規模にハンジは冷や汗を流しながら

「こ、こう・・・くう・・・?(なにそれ?)」

あからさまにキョドるハンジにリヴァイは睨みつけると小声で

「チッ、ビビってんじゃねぇよ。ナメられるだろうが」
「分かってるって!ねぇマコト、どういう事?」
「・・・航空戦力っていうのは海や壁を越えて空から爆弾を落としたり、兵士を落として攻め入ったりする事が出来る移動兵器なようなものです」

マコトがこっちに戻ってきた時も上から攻め入るという部隊の訓練中だった。

それを聞いたハンジは

「え!?空から来るの!?(あれ、マコトも空から来たような・・・)」

ガタンッ!と机を叩いて立ち上がったハンジに言ったそばから・・・とリヴァイは呆れて「オイ」と脚を蹴って窘めた。

マコトは首を傾げると

「でも、何故そんな兵力があるのに・・・」
「そうそう。そんだけの力を持ったマーレ様がまともに攻めてこなかった理由は、何?」
「主に理由は2つあります。 パラディ島に放った無垢の巨人が最新鋭の兵器を持ってしても未だ上陸困難な障害であることと、マーレがエルディア人を壁の中に幽閉するための政策でしたが、逆にマーレの進軍からエルディアを守る存在となっていました」
「・・・らしいな。そいつは、笑える」

その巨人を倒すために、我々は何十年も沢山の犠牲を払ってきたのだ。

イェレナは懐中時計を見ると

「そろそろ夜が明けて、巨人が活動する時間ですよね?今我々は呑気にお茶を飲んでますが・・・つまり、島の巨人は全て殺してしまったということでしょうか?」
「・・・だったらどうする?何とかしてマーレに伝えるか?」
「いや・・・素晴らしい・・・期待以上だ。」

黒目がちだだたイェレナの目に少しだけ光る目を見る。そんなイェレナに戸惑いながらもハンジはもうひとつの理由を聞いた。

どうやら、マーレは連合国複数の国との戦争に突入した。パラディ島所ではない・・・と言いたいところらしいがどうやら開戦の火蓋を切ったのはエルディア人が理由らしい。


鎧の巨人


獣の巨人


マーレが誇る戦士隊を蹴散らし、「超大型巨人」と「女型の巨人」というマーレの主力兵器を奪ったことにより戦力が弱まった、マーレを潰すなら今だと他国が団結をしてマーレを攻めている最中だ。

「・・・マーレには敵が多いようですね」

マコトがそう呟くとイェレナとオニャンコポンはコクリと頷いた。





「すると、あなた方はマーレに恨みを持つ亡国の民であり・・・マーレ軍に潜入する諜報員。のようなもの・・・なのかな?」

ハンジはそう言うとイェレナとオニャンコポンは黙り込んだので

「お・・・当たり? やっぱり、マーレに背くからにはそれなりの動機と後ろ盾が無いとね」
「諜報などと・・・呼べるような代物ではありませんよ」

マーレに故郷を奪われ、兵士として徴用されたイェレナ達や同胞たち。とてもじゃないがマーレに抗う気概を失っていた所現れたのはマーレや世界の人々が悪魔と罵り恐れている獣の巨人。

イェレナには悪魔には見えずそれが無力な自分達に希望を見せてくれた神に見えたそうだ。

「ジーク・イェーガーの目的は・・・エルディア人の解放です」




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