運命共同体
番外編
本編終了後のハンジとモブリットの話。
作品を読んでからを推奨します・・・!( ˇωˇ )
!ATTENTION!
こちらは本誌ネタバレが盛大に含まれておりますので読む際はご注意ください!
「ああ、やっぱり・・・巨人は素晴らしいな。」
立体機動装置を使って高く上がったハンジは地鳴らしをする巨人を見つめてそう呟いた。
自分が足止めをして、飛行艇を飛ばす。それがどういう意味か自分でも理解出来たしあのリヴァイが最後ハンジの胸を叩き「心臓を捧げよ」と呟いた。
心臓を捧げよ
彼の口から聞いた最初で最後の言葉だった。
− 運命共同体 −
巨人の熱によりマントに火が乗り移り、気づけばハンジは地面に叩きつけられそのまま巨人に踏み潰された。
目を開けば一面に青空でハンジは呆気に取られる。
「飛行艇は!?」
慌てて起き上がると
「ハンジ」
懐かしい声が聞こえる。
「飛び立ったよ」
エルヴィン、モブリット、ミケ、ナナバ・・・心臓を捧げた仲間達が自分を見下ろして笑顔で出迎えてくれた。
「ハンジ、お前は役目を果たした。」
「エルヴィン・・・みんな・・・」
それはつまり・・・ハンジは察して苦笑いすると
「ハンジさん」
そう手を差し出してくれたのはモブリット。
「モブリット・・・やっと会えたね」
あの時モブリットが伝えたかった事は何だったのか、ようやく本人の口から聞く事が出来る。
少し照れくさいな、とモブリットの大きな手を掴むとグイッと引き上げられそのまま抱きしめられた。
「わっ!モブ・・・」
「分隊長、相変わらず・・・生き急ぎ過ぎです」
苦しいほど抱きしめられ、ハンジはははっ!と笑うと
「まあ結果死んじゃったんだけどね!まったく、団長になんか指名されたせいで大変だったよ・・・エレンのバカがさぁ・・・はぁ」
そう文句を垂れると、見守っていたエルヴィンが
「あぁ・・・大変だったな。ゆっくり聞くよ。」
「俺たちは先に行ってるぞ。・・・ごゆっくり」
エルヴィンとミケそう微笑むと察してくれたのか全員、その先にある船に乗って川へ渡ろうとする。
麻琴が言っていた船とは、あの事だろうか・・・
「分隊長、いえ・・・ハンジさん」
「ん?」
「・・・すみません。伝えたい事があると言ったのに先に逝ってしまって」
「全くだよ、私は気になって気になって仕方がなかったんだ!この馬鹿!」
ハンジは抱きしめられたままモブリットの背中をドスッと殴れば、すみませんと笑い声が聞こえた。
「その、ハンジさんの言葉・・・聞こえてました」
「・・・へ?」
「その、自分も・・・ハンジさんと、同じ・・・気持ちです。」
身体を離してモブリットを見れば茹でたタコのように顔が真っ赤だ。
つられてハンジも顔を赤くすると
「はっ・・・はぁ!?なんだそれ!ずるいぞ!私だけに言わせて!ハッキリ言えよ!男だろ!」
ハンジはそう言ってモブリットの胸ぐらを掴んで怒り出した。
「わっ、わかりましたから、離してくださいっ!言います!」
「・・・よし!」
モブリットは解放されて乱れた襟を直すとハンジの目を真っ直ぐ見つめると口をパクパクさせ、スッ息を吸い込むと
「・・・あ、あなたがっ・・・す、すす・・・好きです!ハンジさん!!」
「私もだモブリットォ!君が好きだ!」
「ぐはぁっ!」
叫んだ瞬間ハンジが飛びつき、そのまま一緒に地面に倒れる。
ハンジが上にのしかかり、モブリットはため息を着くと
「ハンジさん、ワイルド過ぎです・・・」
「はは、ごめんごめん。・・・ほら、もう行こう!あとは、皆が何とかしてくれるさ。」
ハンジは立ち上がりモブリットも立ち上がる。
2人で遥か遠くまで・・・小さくなった飛行船を眺めているとモブリットがハンジの手に触れて手を取ると優しく握る。
「・・・行きましょうか。」
「ああ」
2人で手をつなぎながら船に乗り、川を渡る。
「・・・ところで、麻琴は帰れましたか?」
「うん。無事にね。 リヴァイったらピーピー泣いちゃってさ!皆に見せたかったよ」
「ははっ、それは是非見たかったですねぇ」
オールを漕ぎながらモブリットは笑う。
あのマリア奪還から麻琴が帰った話、エレン達の身長が180cにまで伸びた事。ジャンなんて、190cmまで大きくなったのだ。
線路が作られて汽車という乗り物が走るようになったこと。
話したい事が沢山あるハンジと、自分も傍でそれを見たかった・・・と微笑むモブリット。
「あとは、んー・・・」
「ハンジさん慌てなくていいですよ。時間は沢山あります」
「・・・はは、そうだね。なんか、テンション上がっちゃった」
ハンジはモブリットを見つめると
「・・・これからは、ずっと一緒だ。モブリット」
「はい。ハンジさん」
そう言うとお互い微笑み合った。
船はゆっくりと、向こう側への岸へと向かっていく。
20XX年
大学を出たハンジはそのまま博物館の巨人研究員になった。
夢の中で出ていた巨人、きっと自分はこのパラディ島の調査兵団の人間だった・・・迷わずスクール時代の課題で出された「将来の夢」は「巨人博士」だった。
巨人の凄さを同級生に話しても「また始まったよ」と苦笑いされまともに取り合ってくれる人間が居ない学生時代を送ったが、大学を出て巨人専門の研究員にになった2年後・・・新人が入ると言われて自己紹介が始まった。
「モブリット・バーナーです。よろしくお願いします!」
真面目そうな男性で、主任はモブリットの肩を叩くと
「じゃあ、ハンジとペアを組んでくれ。 ハンジ、頼むよ」
「はーい」
緊張した面持ちのモブリットに笑いかけると
「よろしく、私はハンジ・ゾエ。」
「モブリットです。よろしくお願いします!」
そう言って握手をした瞬間
ハンジ分隊長!生き急ぎすぎです!
そんな声が聞こえて2人は顔を見合わせると
「・・・調査兵団、第4分隊・・・あれ?」
突然ハンジがそんな事を口走り始め
「分隊長、生き急ぎすぎです・・・あれ?」
モブリットもはるか昔によく言っていた言葉を口走りはじめると
「ぶっはははは!私とお前、どんだけ縁があるんだよ!」
「いや、それはこっちのセリフですって!」
爆笑し始めた2人に他の職員は「知り合いなの?」と聞くと
「ああ、古い知人だよ」
「まさか、また会えるだなんて」
「私たちは運命共同体かな?」
ハンジがからかうようにそう言うとモブリットはハンジの手を握り、ハンジも握り返した。
***
「よいしょー!」
晴天の中、ウエディングドレスを着た麻琴が背中を向けて投げた芍薬のブーケ、それは放物線を描き女性陣を通り抜けて・・・何故かモブリットがキャッチしてしまった。
誰が受け取ったのだろうとワクワクしながら振り向いた麻琴は口を抑え、リヴァイはため息を着く。
「えっ!?」
「おいモブリット!お前は男だろ!!」
「・・・おいおい麻琴、力が強すぎだ」
「ご、ごめんなさい!」
顔を真っ赤にして頭を下げる麻琴。
そんな麻琴をリヴァイは怒ってなどおらずむしろ優しい眼差しで見つめていたが、それは麻琴本人は気づいていない。
結局そのままモブリットが貰うことになってしまいリヴァイが代わりに女性陣へ投げたのは男性用に用意したブロッコリーという異例の対応をした。
しかしそのブロッコリーも背の高かったハンジがキャッチし、笑いが溢れる中無事にリヴァイと麻琴の結婚式は終わった。
*
「ははは、相変わらず麻琴は力が強いね〜まさかモブリットの所に飛ぶだなんて・・・ぶふっ」
パンツスタイルのハンジはヒールを鳴らしながらモブリットと手を繋いで歩く。ハンジの片手にはブロッコリー、モブリットの片手には芍薬の花束。
「ホントですよ。 それにしても2人ともまた会えて良かったです」
「リヴァイの執念深さは凄いからね・・・ま、私達も人の事言えないけど」
確かに、とモブリットはくすくすと笑うと突然ハンジがモブリットに膝を着くとブロッコリーを差し出して
「・・・よしモブリット、私達も結婚しよう!!」
「は・・・えええっ!」
突然の逆プロポーズにモブリットは顔を真っ赤にして、道行く人はそれを見つめながら歩く。
普通逆じゃないのか?いや、奇行種と呼ばれていたハンジに普通は通用しない。それは現代でも同じ。
モブリットもハンジとゆくゆくは結婚はしたいとは思っていたし、色々とプロポーズの計画も立てていたのに・・・ハンジのこの奇行な行動で全てがパァとなってしまった。
「ハンジさん・・・ほんとに貴方は奇行種です」
「はいはい。それよりちょっと・・・早く返事頂戴よ。」
顔を赤くしたハンジはモブリットを睨むように見上げると、モブリットは苦笑いして同じように膝を着くと目の前に芍薬の花束を突き出す。
「はい、喜んで。ハンジさん・・・結婚、しましょうか」
モブリットはブロッコリーを受け取り、ハンジは芍薬の花束を受け取る。
すると見ていた人達がパチパチパチと拍手し始めてハンジとモブリットありがとうございます〜と頭を下げながらニッと笑い立ち上がるとまた2人で手を繋いで歩き始めた。
「よしモブリット、帰ったらご飯にする?お風呂にする?・・・それとも私か!?」
「もう!ハンジさん、刺激的すぎます!」
途端にモブリットは顔を赤くして、ハンジは声を出して「ははは!」笑い、少し背の高いモブリットを見上げると目を細めた。
END.
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