家族【リヴァイ誕生日番外その2】

リヴァイ兵長誕生日2020 番外編

本編終了後のふたりです。




パラディ島・・・リヴァイと結婚してから2年が経とうとしている。

教育隊の仕事も順調で、リヴァイとも仲睦まじく穏やかな生活だ。




リヴァイは横で眠る麻琴のさらけ出された肌を撫でて頬にキスをする。

すると麻琴は目をうっすらと開くとリヴァイを捉えてヘラっと笑うと

「おはよう、リヴァイさん」
「おはよう麻琴。」
「・・・寒い」

季節は12月、いよいよ本格的に冷えてきた。
麻琴すぐにリヴァイの胸に潜り込むと

「麻琴、もう起きる時間だ」

擦り寄ってくる愛らしい仕草に内心嬉しかったが、そう言うと麻琴はチラッと時計を見て

「んん〜〜〜仕方ないなぁ・・・」
「何が仕方ないだよ」

ふっとリヴァイは笑うと麻琴の額に唇を落とす。正直、自分も仕事をサボって1日中ずっと麻琴とゴロゴロしていたい・・・。

それは麻琴も同じだったようで身体を密着させると

「リヴァイさんともうちょっと居たい・・・」
「俺もだ・・・」
「でも仕事も行かなきゃ・・・」
「そうだな・・・」

麻琴は顔を上げるとニッと笑い


「じゃあ、せーので起きよう」
「ふっ、了解した」
「「せーの」」


・・・飽きもせずこのような朝を迎えている。


− 家族 −



「いった・・・」


麻琴はここ最近腰痛、頭痛に悩まされている。腰痛などとは無縁だったのだが仕事をする際、腰が痛んだりして指導する時に支障が出る。

頭痛も偏頭痛のような痛みで、しかも最近は肌の治安も悪い。


「年齢・・・?」


麻琴ももう30代に突入しており年齢と共に肌質も変わるのだろう・・・と自己完結すると洗面台で顔を洗った。



***



・・・どうもおかしい。

麻琴は朝は得意だったのだがここ最近すごく眠く、体のだるさや眠気が凄い。
しっかりと食事をとり、次の日に疲れを持ち込まないように睡眠にも気をつけている。なのにこのザマだ。


「季節の変わり目かな・・・」


鼻水が出たりと風邪のような症状も見受けられる。
エレンの父でもある軍医のグリシャ先生に聞いた方がいいだろうか・・・と麻琴は医務室を訪れた。



.
.
.



「おや、珍しい子が来たね。」
「すみませんグリシャ先生・・・ちょっと問診してほしくて」


ここ最近の体調の変化を話すと、グリシャは顎に手を当てて眉を寄せると


「麻琴くん、いきなりだけど最後に生理が来たのは?」
「へ?えっと・・・・・・・・・え?」


麻琴は口を半開きにしたまま固まった。

生理が来ないということは・・・麻琴の頭の中に妊娠≠ニいうワードが浮かんだ。


「そのまさかだよ。 念の為に検査薬使ってみるといい」
「は・・・はい・・・」

突然のことに麻琴は動揺していると

「リヴァイ少佐に体調の事は?」
「話してあります。まさか妊娠だなんて・・・びっくりしました。」

もちろん、リヴァイは子供が欲しいとずっと言っていた。だが焦ること無く自然に出来たらいいね・・・という感じだったのだ。

リヴァイは喜んでくれるだろうか・・・と麻琴は俯くとグリシャは微笑んで

「リヴァイ少佐なら喜ぶと思うよ。」
「はい・・・ありがとうございます。とにかく、まずは薬局行ってきます!」
「うん。 結果によっては僕の知り合いにいる産婦人科を紹介するから」
「ありがとうございます!」

麻琴は頭を下げると仕事終わりに薬局へと向かった。










・・・そして麻琴は今グリシャの紹介した産婦人科医院に居る。

初めて来る場所なので緊張したが、医師は画面を見ると

「麻琴さん、これ胎嚢ね」
「え、どれですか?」
「ほらこれ」

そう指さしたのは黒い豆粒のような物体。

麻琴はじっとそれを見つめた。
医師はんん?と眼鏡をクイッとあげると


「ねぇ、君の所・・・親族に双子いる?」
「えっと・・・母が双子です」
「ここ黒いのふたつあるでしょ?」
「ふたつってことは・・・」
「お母さんの遺伝だね。 双子かも」
「え゛っ!?」

麻琴は首だけを持ち上げて医師を見た。

「双子の出産はハイリスクだからね・・・もちろんウチは受け入れ可能だから、このまま通院してもらって大丈夫だよ。 エコーの写真プリントしておくから旦那さんに見せてあげてね」
「ありがとうございます」



麻琴は未だ実感がわかず、ふわふわとしたまま病院を出た。


嬉しさと不安がぐるぐると回る。
愛する人との子供・・・昔壁の中に居た頃もリヴァイは麻琴との子供ならいくらでも欲しいと言ってくれた。 しかしいざ子供が出来た瞬間、自分はしっかりこの子達を立派に育て上げられるだろうか・・・と不安になり麻琴は思わず腹を撫でた。


.
.
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・・・以前リヴァイと買い物へ行った時、店内を走っていた2歳ほどの男の子がリヴァイと麻琴の前で転んだ。

すると麻琴より先にリヴァイが慌てて駆け寄り

「おい、大丈夫か」
「うっ・・・・・・うあああん!」

転んだ身体を抱き上げて立ち上がらせるとたちまち泣き始めリヴァイは付いた砂を払って、頭を撫でてやる。

すると、後から追いかけてきた夫婦が息を切らしながら

「すみません!ありがとうございます!」
「いえ・・・」
「ほら、お兄ちゃんにありがとうは?」

男の子は母親に抱かれながらぐずると

「あぃがと・・・」
「これからは、ちゃんと前を見て走るんだぞ。」
「あい!」


その男の子を見送るリヴァイの顔はとても穏やかだったのを麻琴は思い出した。

きっとリヴァイはいい父親になってくれるはずだ。それに比べ、自分は大丈夫だろうか・・・いい母親になれるだろうか。



「(・・・とにかく、まずはこの身体に宿った命を素直に喜ぼう。)」


麻琴はエコーの写真を胸に抱くと携帯のカレンダーを見る。リヴァイの誕生日は明後日・・・



麻琴はよし、と拳を握ると少し寄り道をした。




***





12月25日はクリスマスでもありリヴァイの誕生日だ。
どうせ人は多い・・・と、アッカーマン家は家でゆっくりと過ごす。

2人分の小さいケーキ、麻琴が腕を奮って作った手料理を食べ終え2人で後片付けをして・・・リヴァイはソファーで食後の紅茶を飲んでいると、麻琴は作戦開始のコングを脳内で鳴らした。


「リヴァイさん、目を閉じてください!」
「・・・今年もやるのか」
「もちろん!」


去年も目を閉じさせてプレゼントをする形式をとっていた。

それに習いリヴァイは目を閉じると麻琴は物置に隠しておいたプレゼントをテーブルの前に置いた。

「はい、どうぞ」
「ん・・・開けていいか?」
「もちろん!」

ラッピングをリヴァイは丁寧に剥がすと目を見開く。

「麻琴、お前・・・これ・・・・・・ジェイソンじゃねぇか・・・!」

リヴァイが欲しがっていたロボット掃除機ジェイソンというメーカーの物だ。

値が張るのでリヴァイは購入を渋っていたが、麻琴は思い切って奮発し買ってみたのだ。

「ふふ、リヴァイさんずっと悩んでたから」
「しかもお前これ最新モデル・・・高かっただろ」
「リヴァイさんには普段から家のサポートまでしてくれてるから、そのお礼です!」


普通の人間からしたらリヴァイの表情は分からないがずっと一緒にいる麻琴なら分かる。


めちゃくちゃ嬉しそうだ。


こういう時のリヴァイの目は若干キラキラする。
子供のように喜ぶ(麻琴目線)リヴァイを眺めていると

「・・・あとね、リヴァイさん。もう1つプレゼントがあって」
「は? 俺はもうジェイソンで十分だが・・・」
「まあまあ。これは誕生日って事で」

麻琴は寝室のクローゼットから平たい大きめの箱を取り出してまたテーブルの前に置いた。なんだこれは?と首を傾げるとリヴァイはリボンに手をかけた。

「オイオイ、今年はやけに豪華だな。 俺の立場がねえ」

そう言いながら箱の蓋を開けると、最初に1枚の写真が出てきた。




「・・・・・・・・・は?」


蓋を持ち上げたままのモーションで固まるリヴァイ。
その写真はモノクロで、リヴァイは手に取ると

「おい、麻琴。こりゃ一体・・・どういう事だ」
「えっと・・・赤ちゃん・・・出来たみたいです・・・」
「赤ちゃん・・・?」

珍しく動揺したリヴァイはその言葉を理解するように復唱した。

エコーの写真を麻琴は隣で指でさすと

「これが胎嚢って言って・・・まだ油断は出来ないんだけどね。 これが2つあるの」
「ふたつ・・・?」
「双子かもって」
「は・・・?」


箱に入っていたのは、これから産まれてくるだろう子供の服だ。性別が分からないため無難に白を頼んでしまった。

リヴァイはその小さな服を手に取り広げる。それをじっと見つめてから、リヴァイは麻琴を見ると

「麻琴」
「はい」
「・・・体調は?大丈夫なのか?」

そう言うと麻琴の腹を撫でた。
見た目ではまだ全然分からないが命が宿っている。

リヴァイは愛おしそうに撫で、麻琴はその手の上に自分の手を重ねると

「今の所は大丈夫」
「・・・言われて見りゃお前、身体がだるいとか眠気が酷くなってたな」
「うん、前兆だったみたい。ごめんねリヴァイさんにもっと相談しなくて・・・30代に入ったから身体の変化かと思ってたの」
「まぁ、普通そう思うだろ・・・いや、俺も無知すぎた。知識があったらすぐにお前を病院に連れて行った・・・」


悔しそうにリヴァイは眉を寄せるが、麻琴を見つめると思いっきり抱きしめてきた。



「ジェイソンで十分は前言撤回だ。麻琴よ、マタニティフォトを撮るぞ」
「はい?」
「それと、産まれたら手と足の型をとりたい」
「り、リヴァイさん?」
「あとは・・・一眼レフとビデオカメラも買う」
「う、うん・・・?」

うわ言のように子供が産まれたらやりたいことリストを突然口走り始めた。

泣いてるのだろうか?鼻をすする音が聞こえると抱きしめながら麻琴の頭を撫でると

「ありがとう麻琴。 ・・・楽しみだ」
「うん。楽しみ。・・・私、いいお母さんになれるかな?」
「馬鹿言うな。 お前なら、いい母親になる。」

リヴァイのそのシンプルな一言、それだけで先日考えていた悩みが吹き飛んだ。

「リヴァイさんだって、いいパパになるよ。」
「俺は父親が居ねぇからな・・・どう振る舞えばいいか分からんが・・・俺なりに育てたいと思う。 お前と一緒に。」

一緒に、それだけでうじうじと悩んでいた自分が馬鹿らしくなってしまった。

改めてそう思うと鼻がツンとなり涙が溢れ、麻琴は思わずリヴァイの肩口に顔を埋めると。

「・・・ありがとう、一緒に頑張ろうね」
「ああ。」
「リヴァイさん、お誕生日おめでとう。来年は皆で祝おうね」
「もちろんだ。本格的に車を買い替えねぇとな・・・」

こつん、とリヴァイは麻琴と額を当てると頬を撫でて唇を重ねた。





・・・後日、隠し撮りしていたリヴァイのリアクション動画を見て、ハンジは涙が出るほど爆笑し双子だと分かると巷の妊婦の間で「胎児ネーム」と言うのが流行っていると話題に出した。


「胎児ネームは、ソニーとビーンだね!」
「・・・その眼鏡ぶち壊すぞ、クソメガネ」



Happy Birthday Levi!

2020.12.25




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