Have a great day. 【リヴァイ誕生日番外】


2020年
リヴァイ兵長生誕祭記念番外編

麻琴さんが飛ばされた年の出来事です。


兵長おめでとう!




847年・・・季節は秋で、夏の暑さが抜けて夜は涼しく過ごせる気候になった頃だ。

憲兵団の間で黒い人間という存在が話題となり、その討伐に我々調査兵団の精鋭の中の精鋭が向かったのだが・・・見つけた人間は1人の若い女で、やたらと戦闘能力が高かった。

麻琴・真壁
年齢は25歳(847年の地点で)

彼女は野営の知識もありここ数日、ヘビを捕まえたりなどして空腹を紛らわていたそうだ。

麻琴と呼ばれるこの女性を調査兵団が保護し・・・その後分かったことは麻琴は軍人で、訓練の事故で我々よりはるか先の未来からこの時代に飛ばされた人間だった。

つまりそれは、我々人類が巨人に打ち勝ち壁の外へ出られた・・・そう考えてもいいのかもしれない。それだけで、私たちは少しだけ希望が見えたのだから。
だが麻琴の存在を公にしてしまえば王都や中央憲兵が動くかもしれず何をされるか分からない。

彼女の身を守るため、我々調査兵団は事故で記憶を無くし喋れないという体で行くことになった。


麻琴は言葉は通じないため私、ハンジ・ゾエが彼女の言語教育担当となった。


・・・前置きが長くなってしまったがこれは、麻琴・真壁の成長日記のある一部分を抜粋したものである。



出来事は数ヶ月後の12月25日ー
麻琴がきて初めての冬。




彼、リヴァイの誕生日に起きたお話だ。






− Have a great day. −







12月・・・雪が降りしきる中、麻琴はいつものようにハンジと読み書きの勉強をしていた。

読めるには読めるのだが、書くのはまだ至難の業らしく麻琴は唸るとハンジはあはは、と頭を撫でると

「麻琴、慌てなくていいんだよ?」

そうゆっくりと語りかけると麻琴はうん・・・と頷く。ハンジは、麻琴が何故こんなにも焦っているのか分からなかった。

ふと麻琴の一番下の引き出し・・・そこから赤色の紙が出ていたのを見つけると指をさして

「麻琴、この引き出しの中身は何?」
「っあ! こ、これ・・・」

顔面蒼白になった麻琴はあたふたとしてその赤色の紙を手で隠す。その後真っ赤になって俯く姿を見るとハンジはニヤ・・・と笑うと

「あれー麻琴ってば、私に隠し事があるな?水臭いなぁ

オーバーに、わざと悲しそうにそう言えば麻琴はぐぬぬ・・・と胸を抑えて顔を赤くすると

「はんぞさん、ないしょ、できる?」
「ぷはっ、ハンジね。 うん、内緒にするよ」

子供に語りかけるようにハンジは微笑むと麻琴は恥ずかしそうに引き出しを開けると、そこには色とりどりの飾り付けが入っていた。

一体何に使うのか・・・ハンジは首を傾げていると

「りばいたん、今月たんじょーびって」

たん・・・危うく吹きかけたが麻琴が怒るといけないので笑いを堪えると

「ああ、12月25日だったね!彼は!・・・そうか、これは誕生日の飾り付けってわけだね!」

思わず早口で言ってしまったが断片的に麻琴は理解したのかうん!と頷くとこれまでの経緯をカタコトで説明し始めた。


- 数日前 -

ある日、麻琴の部屋にリヴァイ班のメンバーが来たらしくリヴァイの誕生日が近づいている。誕生日プレゼントに喜びそうなものは何だろうと相談された。しかし麻琴もまだリヴァイと数ヶ月の付き合い・・・彼の行動を思い出してみる。

「・・・そうじどうぐ?」
「うーんリヴァイ兵長はこだわりがあるからなぁ。我々が買ったもので満足されるかどうか・・・」
「・・・こうちゃ?」
「実はそれ、去年あげちゃったの」
「んん・・・服?」
「言い難いが・・・リヴァイ兵長はオーダーメイドの服らしい」
「おい、それは調査兵団七不思議の・・・」
「噂だろ?それ」
「・・・ああ」

うーーーん、とリヴァイ班と麻琴は腕を組んで唸る。

趣味は掃除、好きな物は紅茶・・・部屋を見ても何も無いのだ。

麻琴はぼそっと

「さぐり、してみる?」
「探り・・・」
「それしかないか。」
「えぇ・・・?誰がやるんだよ」

全員麻琴を見ると

「えっわたし?」
「頼む!麻琴!!」
「この通り!」
「私達には打つ手がないわ!!」
「麻琴にだったら兵長は警戒が緩いはず!」

頭を下げられてしまっては断れない・・・押され気味な麻琴は落ち着いてと手を振ると


「わかった、さりげなくきいてみるね!」


と宣言しリヴァイの執務室へ向かったのだった。




カリカリ

カリカリカリカリ

カリカリカリカリカリカリ

カリカリカリ

カリカ・・・


「・・・おい、麻琴よ。そんなに見られたら穴が空いちまうだろうが。」


執務室、ペトラがいれた紅茶を代わりに持っていき作戦開始するや否やじーーーっとリヴァイ見つめる麻琴。 さすがのリヴァイも視線が痛くなり眉を下げて困ったように麻琴を見つめた。

「あ、ごめん」
「・・・いや、問題は無いが。どうしたんだ。」
「りばいたん、字がうまい、いいな」

たん・・・?リヴァイは一瞬目を見開いたがまだ言語能力が無い麻琴、もちろん悪気はないはず。


冷静になれ・・・といつもの真顔になると


「字が上手くなりたいのか」
「うん」
「・・・そうか」

すると書類を片付けてスペースを作ると椅子を持ってきた。

「ほら、座れ」

リヴァイの隣に設置された椅子に座るとペンを差し出され

「書いてみろ」
「えっ、うん・・・」

麻琴はんー・・・とペンをいじいじとしながらあ、と思いついたものは


いま ほしいものは?


「欲しいもの?」


リヴァイはやや眉を寄せて考えると


「・・・無いな」
「無いの?」


それでは困る。


麻琴はずいっとリヴァイの顔に近づくと


「・・・無いの?」
「・・・無い(顔が近ぇ)」


威圧的に言われ麻琴はんーと腕を組む。 一体この蛇女はどうしたのだろうか・・・リヴァイは小さく首を傾げると

「欲しいものは無いが、肩がこるな」
「・・・こる?」

麻琴は言葉を反復させ「あぁ!」と手をポン、と叩くと

「肩揉む!」

麻琴は立ち上がるとリヴァイの肩を掴んでマッサージをし始めた。

冬に入り壁外調査は休み・・・溜まった書類やら春の壁外調査などの予定を組むため幹部勢は相変わらず忙しい。同じ体勢ばかりでさすがのリヴァイも肩がこっていたのでちょうど良かった。

強すぎず弱すぎない指圧でリヴァイの肩が解され、思わず目を閉じた。

「机でお仕事、疲れるもんね」
「ああ・・・助かる」
「首はどう?」

そう言うと麻琴はリヴァイの首の付け根に力を加え始めリヴァイは「ふぅ」と声が漏れてしまう。

「りばいたん、気持ちいい?」
「ああ、悪くねぇ・・・」
「じゃあここは?痛くない?」
「ああ・・・気持ちいい」

しばらく麻琴はリヴァイの身体を癒したのだった。




***



モブリットは失踪したハンジを探すため兵舎を走り回っていた。サボり癖のある上司だ・・・と、ため息をつきながら通りがかったのはリヴァイの執務室だ。

「まさか分隊長、リヴァイ兵長の所に・・・」

ノックをしようと拳をあげた瞬間、中から聞こえてきたのは


「りばいたん、気持ちいい?」
「ああ、悪くねぇ・・・」
「じゃあここは?痛くない?」
「ああ・・・気持ちいいな。最高だ。」

そんな会話が聞こえてきてモブリットは寸での所で拳を止めることに成功した。

「な・・・な・・・リヴァイ兵長と麻琴・・・?」

気持ちいい?痛くない?

一体中でナニが起きてるのか、ノックをしようとした手は手汗でベタベタとなり、おかげさまでモブリットは固まって動けなくなってしまった。

・・・しばらくすると中から


「はぁ、上手いじゃねえか、麻琴」
「えへへ、ありがとう」
「・・・じゃあ、俺からもお礼しねぇとな。 ・・・ほら力抜け」
「え、ええ?わたしは大丈夫、あうっ・・・あっ」
「オイオイ、力入れたら駄目だろ?・・・ここはどうだ」
「う、うん。そこ・・・ん、気持ちいい・・・やっ、あうっ」
「ほら暴れんな。ここ解さないと、お前がしんどいんだぞ?」
「んん・・・はいっ・・・あっ」


そんな会話が聞こえてきて


「え、えええ・・・」


モブリットは震えながら口を抑え後ずさりした。


まさか、あの麻琴とリヴァイが・・・そんな関係だったなんて。早すぎやしないか。


「(待て、これは同意の上か? 個別レッスンとか言ってだんだんそう言う方向に行って無知な麻琴にリヴァイ兵長があんな事やこんな事・・・いやいやいや、リヴァイ兵長に限ってそんな下衆な事は・・・いや、ていうか個別レッスンって何だ)」


ハンジが普段から変な事を口走るせいか、モブリットにも変な知識が付いてしまった・・・


だがしかし、ふと冷静になりリヴァイと麻琴の並びを想像する。一見同じ東洋人で兄妹に見られるかもしれないが、麻琴と居る時のリヴァイは割と穏やかな顔をしている。

右も左も分からない不安だらけな麻琴の環境に、手を差し伸べたリヴァイ。・・・そんな2人が恋仲になってもおかしい話ではない。


モブリットは勝手な解釈をするとうんうんと頷き

「俺は陰ながら見守ろう」

モブリットの見守り隊が発足され、モブリットは笑みを浮かべながら失踪した上司探しを再開させた。



***



「ふぅ・・・」
「どうだ、楽になったか」

麻琴も勉強の毎日だったので無意識に肩が凝ってしまっていたようだ。


肩をグルグルさせると随分と軽くなったようで麻琴は嬉しそうに笑うと

「ありがとう、りばいた・・・ああっ!」
「なんだ?」
「・・・で、ほしいものは?!」

そう言えばそんな話題だったか・・・リヴァイは腕を組むと

「今貰った」
「へ?」
「お前のマッサージだ。 また頼むかもな」


ちがうちがう、そうじゃ、そうじゃない


某歌のフレーズが麻琴の頭の中で流れ麻琴は作戦失敗・・・と心の中で肩を落とすがふとある物に目をやるとパッと顔を明るくさせ

「よし、分かった!また呼んで!お仕事のじゃましてすまぬ!」
「(すまぬ?) ああ、構わないが・・・転ぶなよ」
「はい!」


ハンジ、ちゃんと言語教育出来ているのか・・・?

心配になったリヴァイであった。




***



・・・そして12月25日


リヴァイはいつものように書類にペンを走らせているとドタバタと足音が聞こえてきた。

「チッ、走ったら廊下にホコリが舞うだろ・・・」

一体誰だ、と眉を寄せるとコンコン!とノックをされた。

「俺か・・・入れ」
「し、失礼します!」
「エルド?」

息を切らしたエルドが敬礼をすると

「リヴァイ兵長っ・・・あの、麻琴がっ・・・!」
「麻琴がどうかしたか?」
「置き手紙置いて、どこかへ・・・」

その瞬間、リヴァイは椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がると部屋を飛び出して麻琴の部屋へと向かいながら

「隠れんぼしてるんじゃないのか?」
「い、いえっ!ただ書置きに「探さないでください」と・・・」
「そんな素振り無かっただろ!警備どうなってんだ!お前らの仕事だろうが!」
「もっ、申し訳ありません!少し目を離した隙に・・・」

リヴァイは舌打ちをして、麻琴の部屋にノックをせずに乱暴にドアをこじ開けた瞬間



パーン!



「「「「リヴァイ兵長、お誕生日おめでとうございまーーーす!」」」」
「「「リヴァイ(たん)、おめでとう!」」」



クラッカーの音の後にふわりと香る火薬の匂い・・・突然の事にリヴァイは驚いているとそこにはハンジ、モブリット、エルヴィン、リヴァイ班メンバーと麻琴がにこにこしながら立っていた。

麻琴の部屋は可愛らしく飾り付けされており部屋を見渡すと・・・


「・・・ああ、今日だったか」


リヴァイは、自分の誕生日だと思い出した。
だから麻琴はあんなに自分に欲しいものは何かと聞いてきたのか。
麻琴は家出などしておらず、エルヴィンの隣でにこにことしている。その姿を見ると心の中でほっと一安心した。

リヴァイ班のメンバーは頭を下げながら

「すみません兵長!」
「あぁ、いや。怒ってない。 ・・・今年は派手にやってくれたな」

部屋を見渡すとペトラはパッと顔を明るくさせ、

「麻琴の提案で部屋の飾り付けをしたんです!」
「ほう・・・悪くない」
「リヴァイ、おめでとう。これは私達からだ」
「いつも悪いな。 ありがとう。」

エルヴィンとハンジ、モブリットからのプレゼントはお酒。そして、リヴァイ班はラッピングされた小さな長細い箱だった。

箱を開くと黒と金でデザインされた万年筆だった。明らかに高価なものにリヴァイは驚くと

「・・・お前ら、高かっただろ?」
「いえ!日頃俺たちはリヴァイ兵長にお世話になっていますので!」
「こういう日でしか、兵長には気持ちは伝えられないですし・・・」
「麻琴が最近兵長は書類仕事で肩こりが酷いらしい、書きやすいペンはどうだろうかとアドバイスしてくれたんです」
「それ軽くて使いやすいんです!」

試し書き沢山したよねと全員が笑いながら顔を見合せた。
リヴァイは顔には出さなかったが自分の事を考えてくれた部下の健気さに胸がいっぱいになり

「・・・お前ら、ありがとうな。大切に使わせてもらうぞ」

僅かに口元に笑みを浮かべると、リヴァイ班の4人も嬉しそうに顔を見合わせてガッツポーズをした。


そして最後になった麻琴は後ろ手に隠していたプレゼントをリヴァイに手渡した。

麻琴は顔を赤くさせながら目を逸らすと、

「・・・みんなみたいな、いいのじゃない」
「何言ってんだ。・・・お前も用意してくれたんだな。ありがとう」

そう言うとわしわしと頭を撫でてラッピングを開けるとハンジはわあ!と笑顔になる。

「麻琴、間に合ったんだね!」
「う、うん・・・なんとか」
「ほぉ手編みか。暖かそうだな。」
「麻琴は器用だな」

麻琴がリヴァイにプレゼントしたのは黒い太めの毛糸で作られたマフラーだった。ふかふかしているそれはこの寒い時期に助かるアイテムだ。

リヴァイはその柔らかなマフラーを撫でると、

「手編みなのか?すげぇな」
「ちょっとペトラに手伝ってもらった・・・」
「何言ってるのよ麻琴、私はちょっとアドバイスしただけだよ!」
「外に出る時に使わせてもらおう。 ・・・あとは手紙か?」

そう言って開こうとすると麻琴は慌ててリヴァイの手を掴むと顔を赤くして

「今は、ならぬ!」
「あぁ? おいハンジ、こいつ時々口調おかしいがちゃんと教育してんのか?」
「あはは!歴史物読ませたりしてるからね!」
「ひとりで、よむ。よいか?」
「あ、ああ・・・(俺が教育担当になった方が良かったんじゃねぇか?)」

そう言われちゃ仕方がない・・・とリヴァイは頷くと手紙を内ポケットへと忍ばせたのだった。




***




リヴァイのお誕生日会が終わった日の夜・・・

貰ったプレゼントをテーブルの上にそっと置いて、麻琴から貰った手紙を内ポケットから取り出すとソファに座り封を切った。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

リヴァイさんへ
お誕生日おめでとう!
見ず知らずの私を保護してくれて面倒まで見てくれて、とても感謝しています。
泣いていたあの日の夜、リヴァイさんが慰めてくれて私はとても心が救われました。

まだまだ言葉は不自由だけど、ちゃんと喋れるようになったらリヴァイさんといっぱいお喋りしたいし、ありがとうを沢山伝えたいです。

リヴァイさんにとって素敵な1年になりますように!

麻琴より


−−−−−−−−−−−−−−−−−

文字はいびつで危うく間違えそうな字も所々あったが、十分読める範囲だ。むしろ、喋るより文章の方がちゃんと書けている。・・・そんな事を言ったら恐らく彼女はプンプンと怒るだろうが。

手紙を丁寧に戻すと、リヴァイは麻琴から貰ったマフラーを巻いてみた。

ちょうどいい長さに調整されており、すぐに身体がぽかぽかと暖まる。 麻琴から貰った手紙をまた読み返して口元を僅かに微笑ませると


「・・・はっ、上手く書けてるじゃねぇか」


人の成長を垣間見たリヴァイは、心もぽかぽかしたような気がした。




***



「そんな年もあったなぁ・・・」

麻琴の成長記録を記したノートを読みながら、ハンジはやや冷めた紅茶を口に含めた。

懐かしい・・・まだ上手く喋れない麻琴はそれはそれで可愛らしかった。


ふと、外から笑い声が聞こえてきてハンジは窓の外を見ると噂の2人が雪道を手を繋いで歩いていた。

雪がふわふわと舞う中、麻琴は大喜びしてリヴァイと両手を取り合ってはしゃいでいる。そんな麻琴をやれやれと言った感じでリヴァイは引っ張り回されたりグルグル回る、とにかくされるがままだ。


そのリヴァイの首には、あの時麻琴が編んだマフラーが巻かれており、リヴァイは麻琴を引き寄せると思い切り抱きしめ、麻琴も嬉しそうに笑うとリヴァイの身体に腕を回した。



「かぁっ!まったく!冬なのにお熱い事で。・・・さ、今度はどれ読もうかな。」


ハンジは目を細めて笑うと窓から離れ、再び麻琴の成長記録を読み返すのだった。


o,+:。☆.*・+。 Happy Birthday Levi! o,+:。☆.*・+。

2020.12.25



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