君の誕生日
麻琴さんのお誕生日のお話。
(投稿サイト10000PV御礼番外)
1月23日。
それは麻琴の誕生日だ。この時期は雪が積もるため壁外調査は休止に入る。
この時代に来て、2年目・・・リヴァイと交際するという事になってから1年が経とうとしていた。
「ねえリヴァイ、23日は何か考えてるの?」
書類を届けに来たついでにハンジは麻琴の誕生日について聞いてみた。
恋人の誕生日、リヴァイは額に手をやると
「・・・正直、あいつに何をしたら喜ぶのか全くわからん」
今頃麻琴は元気よく訓練兵と殴り合い・・・ではなく格闘技の訓練をしている頃だ。怪我をしなければいいが、なんて事を考えながら窓の外を見れば鳥が呑気に飛んでいる。
「麻琴って、あっちの時代でもあまり着飾ったりはしなかったって言ってたかなぁ。」
リヴァイと恋仲になってからやっとスカートを履くようなったくらいだ。 普段はパンツスタイルにパーカーなどラフな格好ばかりだ。
それも似合っているからリヴァイは好きなのだが・・・誕生日はどうしたものかと頬杖をついた。
「ナックルダスターしか思い浮かばんな・・・」
「それ打撃用武器じゃん! じゃあ思い切って、指輪とかあげちゃえば?」
ニヤニヤとハンジはそう言うとリヴァイは唸りながら腕を組んで天井を見つめる。
「いきなり薬指は重すぎないか?」
「えぇー?別に薬指に指輪じゃなくても他の指に付ければいいんだよ。なんか色々と意味があるみたいだよ?」
「ほう・・・」
「えーっと確かねぇ・・・」
指揮力を高める、邪気から身を守る、集中力を高めるなど指を曲げながら説明してくれる。
そしてハンジは小指を出してリヴァイの目の前に突きつけ、ニコッと笑うと
「麻琴的には右手の小指がいいんじゃない?」
「小指・・・?」
「お守りとしての効果があるみたいだよ」
なるほど、とリヴァイは頷くと
「分かった、参考にしよう。・・・あ」
「何?」
それと同時にリヴァイは何かを思いついたらしくリヴァイはハンジを見ると
「ハンジ、頼みがある」
− 君の誕生日 −
1月23日
訓練後、麻琴はエレン、ミカサと格闘技が苦手なアルミンのために型を見ているとコニーが慌てて走ってきた
「教官〜!サシャのやつが腹壊したみたい〜!」
「えぇ?変なの食べたのかなぁ」
「食堂にいます!」
麻琴は頷くと3人も着いていくと言いコニーの案内で食堂へ向かった所
「サシャ、お腹大丈・・・」
「麻琴教官ー!お誕生日おめでとうございます!」
「・・・はい?」
サシャは元気ですよー!と腕を振り回し、ジャンやマルコ、コニー、エレン、ミカサ、アルミン、クリスタ、ユミル、ライナー、ベルトルト達・・・訓練兵の面子が揃って拍手をしてくれた。
「みんな、覚えてたの?!」
「当たり前じゃないですか! はい、私達からのプレゼントです!」
クリスタから芍薬の花束を受け取ると麻琴は頬を赤くして喜び、全員にお礼を言うと
「教官、あとこれもですよ!」
そう言ってエレンが青いラッピングされた箱を渡すと麻琴は焦りながら
「こ、こんなにもらっていいの?」
「俺たち日頃教官にはお世話になってるんで、皆で相談して買いました!」
ジャンの言葉に麻琴は感動しながら丁寧にラッピングを外すと
「こ、これは・・・!」
「教官の拳を守るために買いました!」
「ナックルダスターです!!」
漆黒の金属で作られたナックルダスター、麻琴は目をキラキラさせてはめる。
それはさながら、指輪を貰った女子のリアクションだ。
「うわぁ〜!これ買おうか悩んでたんだよー!え、いいの?ほんとに?!みんなありがとうー!」
麻琴のリアクションに全員は喜んでくれて良かったと安心すると少しの時間だが麻琴の誕生日会をしたのだった。
***
その日の夜、リヴァイと麻琴は外食をした帰り・・・
時期は冬、兵舎に戻り1枚の大判のブランケットで2人で寄り添い合い手を繋ぎながらまったりしていると、
「麻琴、少し待ってろ」
「ん?」
そう言ってリヴァイは机の引き出しから箱を取り出すと目の前で開いた。
それは細身のピンクゴールドのピンキーリングだった。
「こ、これ・・・」
「右手の小指はお守りとしても効果があるらしい。俺が見えない所で何かあるといけないからな。」
そう言って指輪を手に取り、麻琴の小指に通すとピッタリだった。
麻琴の白い肌にシンプルなピンキーリングが映えてリヴァイは満足そうに頷いた。
「かわいい・・・でも、なんでサイズを?」
「お前がぐーすか寝てる間に紐で測った」
「ふふっ、ありがとう・・・すっごく嬉しい」
そう言って頬を染めて恥ずかしそうに微笑む麻琴にリヴァイは後頭部に手を回すとゆっくりと唇を合わせる。
しばらくして唇を離すとすこし緊張した面持ちのリヴァイが麻琴を見つめて
『麻琴、たんじょうび おめでとう』
カタコトでリヴァイが日本語でお祝いの言葉を言うと、麻琴は驚きと嬉しさでポロリと涙を流した。
「違ったか? ハンジから教わったんだが・・・」
「大丈夫、通じたよ。リヴァイさん・・・最高の贈り物だよ」
思いっきりリヴァイに抱きつけば、リヴァイは受け止めてぎゅっと抱きしめてくれる。
「幸せすぎて怖いなぁ」
「はっ、俺も幸せだ」
「ありがとう。リヴァイさん」
そう言うと麻琴はリヴァイの頬にキスをした。
おまけ
「あ、そういえばね。訓練兵の子達にもプレゼント貰ったの」
「ほぉ」
芍薬花束を持って帰ってきたのは見かけたがリヴァイは首を傾げると麻琴はじゃーん!と手のひらに載せたもの・・・
「ナックルダスターか・・・危なかった。俺も最初それにしようか悩んでた」
安心したようなリヴァイの顔を見ると思わず麻琴は吹き出して大笑いした。
「あはははっ!リヴァイさん、私の好みほんと分かってるね!大好き!」
1月23日・・・
麻琴人生で最高の誕生日だった。
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