メトロノームの呪いに掛かり、麻琴の頭の中では常にリズムが刻まれるようになってしまった。気を抜けば足でリズムを取るほどになってしまい喫食中に頭を抱える麻琴と松原を見た坂木は

「大久保」
「そろそろ呪いを解き放つ時が来ましたね・・・面白くなってきましたよ」

・・・模擬レースの日、麻琴はプラスチックのメガホンを持ち麻琴と松原の掛け声で進んでいく。

「おうおうダッシュ!おうおうダッシュ、10枚ダッシュ!」
「おーう、いっち、おーう、にっ!」

あれから全員、大久保のメトロノームの呪いに掛かり嫌という程聴かされたおかげか一定のリズムで漕ぐことが出来ている。

「いい調子ですね」
「スピードも上がっているな!」

模擬レースの結果は1位・・・初期のタイムよりアップもしているので全員はやったー!と両手を上げた。



***



着実に結果が出始めて11クルーの士気は上々だ。麻琴は朝の喫食が終わり食堂を出ようとすると

「おお、真壁じゃないか」

名前を呼ばれて振り向くと、そこにはしれっと原作通り4大隊に戻っている岡田が立っていた。麻琴は慌てて立ち止まり、ピッと敬礼をすると

「〜、〜〜!!(岡田さん!おはようございます!)」

麻琴の声は、カッターの掛け声により喉がガサガサで何を喋っているかわからない状態だった。

しかし岡田はいつもの涼しい顔で敬礼を返すと、

「〜〜、〜(岡田さんが4大隊に行っちゃって寂しいです)」
「ん?ああ・・・大人の事情ってやつだな」
「〜〜?(大人の事情ですか?)」
「真壁、お前は何も知らなくていいんだ。 それより、11クルーは順調らしいな」
「〜〜〜!〜〜〜!(はい、このまま優勝狙います!)」
「そうか、でも俺たち4大隊も負けないからな。しかし図書館仲間としてお前も応援しているぞ」
「〜!(ありがとうございます!)」
「・・・それよりお前、喉すごいな」

今更だな!と麻琴はずっこけそうになるが困ったように相変わらずガサガサ声を出していると

「やかましいアヒルがいると思ったらお前か、真壁」

喫食を終えた坂木もやって来ると麻琴は敬礼をし、岡田は

「坂木、あまり喉は酷使させない方がいいぞ。喉を休ませる時間が必要だ」
「そうだな。真壁、あんま大声出さないようにしろよ」
「〜(わかりました)」

麻琴はこくこくと頷くと

「真壁、特別に喉のケアを教えよう」
「いいのか?」

岡田は4大隊・・・敵同士のはずだが岡田は僅かに笑みを浮かべると

「これくらいどうってことない。真壁、喉を使う前にストレッチをしろ。今から俺がやるのを真似しろよ」

岡田は首をゆっくり回し、顔を上げて首の筋肉を伸ばしたり首の筋肉や顎下の筋肉をマッサージする。

「あとは寝る時にマスクをしたり、極力咳は控えろよ。声帯に負担が掛かるからな。」

言われた事を麻琴はすぐにメモ帳に取りこくこくと頷くと

「あとは飴だな。 この浅○飴が喉にいい。まだ新品だ。俺はストックが沢山あるからこれをお前にやろう」
「〜〜〜!(いいんですか!)」
「気にするな。」

坂木からしたらなにを喋っているのか分からないのだが、岡田には分かるらしい。

「岡田、お前分かるんだな。オレにはサッパリだ」
「応援團に入るものは最初の段階で喉を潰すからな。慣れているんだ。」
「・・・あぁ、そう言えばお前が1年の時もガッサガサだったもんな」
「あの時は誰にも伝わらなくて困ったよ」

ハハハ!と爆音で大笑いする岡田。
岡田も笑うのか・・・と麻琴は驚いていたが時計を見ると

「あまり長話は出来んな。 それじゃあ2人とも」
「おう」
「〜!(ありがとうございます!)」
「ああ。 喉お大事にな」

そう言うと岡田は手を振りダッシュで4大隊へ戻り、坂木と麻琴も1大隊へと走っていったのだった。


カッター競技大会まで残り1週間である。

避雷針の図書館仲間



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