防大は土日にしっかりと休日がある。
しかし制服着用がルールであり、1年生は私服禁止。私服解禁は2年生からとなる。

麻琴も最初の週は外に出たくて出たくて仕方がなかったが、あの服装チェックがとんでもなく面倒だと思い、必要なものが揃えられるPXもある・・・元々インドアな麻琴にとっては別に外出が必要だとは思わなかった。 それに土日はほぼ全員外に出るため学生舎は静かになる。

もちろん麻琴の部屋長の先輩達は外に出ており、知念も実家の沖縄へ土産を送ると服装を念入りにチェックをし、買い物へ行ってしまった。


そんな麻琴は1人の部屋でベッドで大の字になり


「インドア最高〜!!」


と叫んだのだった。

防大はタブレットの持ち込みは禁止だったため大きな画面で見れないのは悔やまれるがスマホの動画配信アプリでドラマの続きを見よう、と早い所制服や作業着をプレスしやる事を終え、軽い足取りでPXへと向かった。

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PXに到着して麻琴はお菓子を見ていると


「・・・おい」
「ふぁい!!」


低い声が聞こえて反射で背筋を伸ばしてしまう。ギギギ・・・と軋む音を立てながら首を回すとそこには

「さ、かきさん・・・!」

飴と鞭が激しすぎる坂木。いや、割合的には鞭が激しい。あの日から坂木はやたらと麻琴に目をつけては反省文を要求し男子部屋の常連学生となっている。 お陰で坂木の雷が麻琴へと向けられているため「避雷針」という通り名を付けられてしまった。
休日にまで鬼に見つかるなんて・・・この鬼とのエンカウント率高すぎやしないか、と麻琴はガタガタしながら坂木を見上げると

「坂木さんも!! 引きこもりですか!!?」
「あぁ? ちげぇよ、校友会だ」
「こうゆうかい?」

何だそれは・・・と麻琴は首を傾げると

「まあ部活みたいなもんだ。お前らもそのうち決めるだろ。必ず入らなきゃいけないからな。」
「へえ・・・坂木さんは因みに」
「オレは剣道だ。お前は決めたか?」
「・・・・・・・・・まだ何も決めて無いです」

坂木はその間に疑問を覚え何かを察すると

「真壁、カゴ降ろせ」
「?はい・・・ちょっ!」

左手で持っていたカゴを降ろせば、坂木は麻琴の手を掴むと手のひらを見た。

手のひらと指にマメの跡・・・坂木は目を細めると

「ほー・・・お前、もしかして剣道やってたのか。」
「あは、あはは、中学の頃に・・・高校は帰宅部で・・・」
「いいや、嘘だな。このマメの感じからするとまだ最近だ。 お前高校も剣道やってたろ?」
「ぐ・・・」

男が女の手を握る・・・普通なら青春の1ページに見えるが麻琴にとっては地獄に引きずり込もうとしている鬼にしか見えない。

PXのおばちゃんはそうは見えないらしく「青春ねぇ」と微笑ましく見ているがこの顔を見て欲しいと麻琴は白目を剥きかけた。

「・・・そういやお前、外でなかったのか」
「えと・・・部屋でゴロゴロ・・・海外ドラマ見ようかなって。ははっ!」

部屋でゴロゴロ・・・そのワードを聞いて坂木は青筋を立てると

「馬鹿か!そんな腑抜けた休日を送ってんじゃねぇ! テメェは今から武道場へ連行だ!!反省文1000枚と武道場連行、好きな方を選べ!」
「はい!!喜んで武道場へ!!」


その後麻琴は無理やり道着を着せられ坂木の稽古に付き合わされたのだった。










稽古後、真っ白に燃え尽きた麻琴を他の先輩が飲み物やお菓子を与えてくれる。

剣道部に1年・・・しかも数が少ない貴重な女子が来てくれた件については他の部員も喜んでいるらしく入部してくれ・・・と念を込めながら麻琴を手厚く歓迎した。

貰ったチョコやりんごジュースを飲んでいると

「ん」

目の前に見覚えのあるパッケージが差し出された。いつしか麻琴が美味いと絶賛していたたべっこすいぞくかんだ。

それを差し出したのは坂木で目を逸らしながら

「筋は悪くねぇな。」
「ありがとうございます・・・これでも全国出てるんで」
「道理で」

隣に胡座をかいて、坂木はあー・・・と何か言いたげに天井を眺める。 その隣で麻琴は頂きます!とたべっこいぞくかんを開くと

「坂木さんもどうぞ」
「ああ、悪い。・・・・・・なあ、真壁。」
「ふぁい」
「口に入れながら喋るんじゃねぇ。 ・・・校友会、お前剣道部にしろよ」

思い切った坂木の誘いに麻琴は驚き周りの部員も「坂木さんよくやった!」と拳に力を込めるが麻琴はもぐもぐとたべっこすいぞくかんを食べながら


「え、嫌です。汗臭いし。それに道着は実家です。」


と、一刀両断した。

その瞬間坂木は片手で麻琴の頬を力いっぱい挟んでグググ・・・と力を込めると

「てめぇ・・・さっきまで食ってたたべっこすいぞくかん返してもらおうか・・・」
「ふぃ、ふぃややれすりょ〜!(い、いやですよ〜!)」



後に麻琴は避雷針の他に死に急ぎ女というレッテルを貼られるようになったとか。


避雷針と校友会



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